(朝日新聞 2019/02/18)
海外で多量の金塊を買い付けて日本に密輸し、消費税を不正に逃れて利益を上げる――。そんな犯罪が相次いで摘発された。密輸は最終的に大手商社を経由する形になり、年間600億円超の税金が取り逃がされていた。財務省が不正を見抜いたきっかけは、ある統計の不審な動きだった。
◇「倉庫から金塊わんさか」
「大手商社の倉庫から、ケツから出てきたような粒状の金塊がわんさか出てきた。見たらすぐに密輸品だってわかるようなやつがね」
記者が財務省関係者から、そんな話を聞かされたのは昨年11月のことだった。

▲肛門(こうもん)の中に隠された金塊のX線写真(門司税関提供)
財務省が金の密輸の対策に本腰を入れたのは2016年。その年、金の輸出量は前年比で44%も増えていた。当時の担当者は「国内で金の産出が増えたわけでもない。急増の説明がつかなかった」と振り返る。
金の流通状況を詳しく調べると、買い取り業者から大手商社へ流れている量が極端に多かった。17年11月には密輸の緊急対策をまとめ、財務省の担当者は商社へ聞き取りに向かった。そこで目にしたのが「粒状の金塊」だった。
金の密輸の際は、粒状にしたり、薄くしたりといった加工をするのが常套(じょうとう)手段だ。そして密輸された後、様々な形に加工され流通すると思われていた。ところがまるで密輸品そのもののような金が、商社の倉庫からどっさり出てきたのだ。
財務省の担当者は「金の取引はバー(延べ棒)にしたものなどでされているものとばかり思っていた。調査に行った職員の写真を見てとにかく驚いた。金は量で取引できるので形状はそれほど問題にならない。それがようやくわかった」。

▲密輸するために、隠し場所に合うように加工された金=財務省ホームページから

▲密輸のために、ブラジャーのカップの形に加工された金=財務省のホームページから

▲密輸するために加工された金の延べ板。1キロの延べ板を三つに切断し、太陽光発電式照明装置のバッテリー部分に隠されていた=東京税関
◇金密輸のからくりは
なぜ不審な金が商社の倉庫から出てきたのか。その理由には金密輸の構図が深く関わっている。
金を海外から輸入する場合は税関に申告し、消費税を納める必要がある。だが密輸業者は消費税がない香港などで金を買い、税関に申告せずに輸入し、日本の買い取り業者に消費税を上乗せして売る。高額な金密輸では消費税分がかなりの利益になる。
香港から韓国やタイを経由し、現地でアルバイトで雇われた「運び屋」が、格安航空会社(LCC)で持ち込むケースも多いという。
密輸業者から買い取り業者に買われた金は、財務省の調べでは大手商社数社に転売されていた。マネーロンダリング(犯罪資金の洗浄)のように通常の取引に紛れ込み、国内で流通していた。
そして大手商社に買い取られた金は海外に再輸出されていた。金の輸出には税関長の許可が必要で、国際取引でも信用が欠かせない。そのため金輸出の8割近くは大手商社数社が担っている。
ここでのポイントは、輸出時の消費税の「還付」だ。大手商社は海外の業者に金を輸出する際、消費税抜きで売る。海外では金に消費税がかからないからだ。大手商社は消費税込みで仕入れたのに損をしてしまうが、金の輸出額に応じて税還付を受け、損をしない仕組みになっている。
金の輸入の際に税関で消費税分を徴収していれば、輸出の際に消費税分を還付しても国に損はない。しかし密輸で消費税を取り損ねて、一方で還付ばかりしていれば、穴の空いたバケツのように国のお金が出ていってしまう。
問題は金の流通に関わる関係者が、密輸について認識していたかだ。密輸者は当然として、密輸された金を買い取る業者、その転売先となった大手商社は気付いていたのか。気付かなかったなら、「ケツから出てきたような金」がなぜ、倉庫に大量にあったのか――。
◇お粗末な商社の実態
財務省がさらに調べると、大手商社のお粗末な取引の実態があらわになってきた。
「現物の確認をしないまま、電話1本で業者から買い取り依頼を受け、警備会社に取りに行かせて、倉庫に入れている商社や、量をたくさん買い集めて、そのまま『横流し』しているような商社もあった」(幹部)。少なくとも輸出量の多い大手商社2社は、取引先の金の入手ルートや形状などの確認を十分にしていなかったという。
金の買い取り業者には、短期間に何度も金を売る疑わしい客から買い取っていた「限りなくグレーな業者」(別の幹部)もいた。財務省の調査では、こうした「グレーな業者」と取引する商社もあった。「ある大手商社の幹部が『うちの取引先は大丈夫です』というので取引先を確認させてもらったら、グレーな業者が複数あった」
関税法では、密輸された金と知って買い取れば罰せられるが、知らなければ罪に問われない。商社側は「密輸された金とは知らなかった」としており、現状では罪に問うのは難しい。
実は金密輸は消費税が5%から8%に増税された14年以降に急増している。18年6月までの1年間の金密輸事件は前年比1・5倍の720件、脱税額は1・7倍の約15億円で、ともに過去最高を更新した。
これはあくまで発覚分で、実際はどれだけの脱税があったのだろうか。17年に正規に輸入された金は5トンで、輸出された金は215トン。日本国内での金の産出量や消費量から、財務省は輸出量のうち160トン程度が密輸入されたもので、脱税額は年640億円にのぼるとはじく。
◇密輸根絶に動く財務省
19年10月に消費税は8%から10%に増税される。このままではさらに脱税が増えかねない。危機感を抱いた財務省は一気に動いた。
18年4月、金を密輸したり密輸された金を買い取ったりした際の罰金を大幅に引き上げる改正関税法を施行。
8月には商社に対し、入手ルートが不明な金を買わないよう要請した。財務省幹部は時に商社側にこうささやいたという。「本当に(密輸品を扱わない)自信があるなら、どうぞビジネスを続けてください。でももし(自信が)ないなら、買わない方がいいですよ。商社が密輸に加担していると言われたら会社が社会的に持ちますか?」
8月には商社に対し、入手ルートが不明な金を買わないよう要請した。財務省幹部は時に商社側にこうささやいたという。「本当に(密輸品を扱わない)自信があるなら、どうぞビジネスを続けてください。でももし(自信が)ないなら、買わない方がいいですよ。商社が密輸に加担していると言われたら会社が社会的に持ちますか?」
効果はてきめんだった。
輸出量の多かった商社2社のうち1社は18年11月、朝日新聞の取材に対し、「金の密輸撲滅に向けた取り組みとして、本年5月以降は買い取り業者からの金の購入を全面的に停止しております」と回答。もう1社についても、財務省は「正当な理由がつかないものは取引していないのでは」という。
18年の金輸出は156トンと、前年より60トン近くも減った。大手商社が買い取りを見直した影響が大きいとみられる。
今年10月から金の買い取り業者は、どの業者と取引したか確認できる書類の保存が事実上、義務づけられる。財務省は、密輸業者からの買い取りを防ぎ、流通ルートの特定にもつなげたい考えだ。
今年10月から金の買い取り業者は、どの業者と取引したか確認できる書類の保存が事実上、義務づけられる。財務省は、密輸業者からの買い取りを防ぎ、流通ルートの特定にもつなげたい考えだ。
◇新たな密輸の手口も
金密輸による脱税は締め上げられつつあるが、不正の芽はまだある。金のように国際的に流通する高額品で、消費税還付を悪用した不正の新たな手口も出ている。今年1月、香港で税抜きで仕入れた高級腕時計を国内で仕入れたように装い、輸出の際に税の不正還付を受けるなどしたとして、販売業者が東京国税局から消費税法違反の疑いで告発された。財務省幹部はいう。「手を替え、品を替え、これからもいろいろやってくるだろう。これも消費税の徴税コストだ」(笠井哲也)
財務省による2017年の状況↓(2018年02月23日発表)
財務省による2017年の状況↓(2018年02月23日発表)

現在は刑法19条2項により、犯人側(実行犯だけでなく組織・グループ含む)の所有と認めらないと没収できないようですが、密輸品に限っては、国内に被害者(盗まれたとか、だまされて預けたとか)は生じず、また本当に被害者かの確認も難しいので、「原則没収」できるようにしても良いんじゃないですかね。
刑法 第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。 一 犯罪行為を組成した物 二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物 三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物 四 前号に掲げる物の対価として得た物 2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
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それで税収が減ることなんてないでしょーに
商社と官僚がズブズブでわざと見逃してるとしか思えない
specificasia
が
しました