(朝日新聞 2019/06/24)

 沖縄・尖閣諸島周辺の日本領海に、尖閣の領有権を主張する中国の公船が盛んに侵入している。日本の海上保安庁にあたる海警局に所属する公船は、領海の外側を2カ月以上連続で航行。これまでにない動きに、海保は警戒を強めている。その背景を読み解いた。

 尖閣をめぐる緊張関係は、民主党政権時代の2010年9月にさかのぼる。

 尖閣沖で海保の巡視船に衝突した中国漁船の船長が逮捕された事件をきっかけに、日本国内で領土保全を求める世論が高まった。その後、日本政府は12年9月に尖閣を国有化。以降、中国公船による領海への侵入や接続水域の航行が続いている。

 昨年まで減少傾向にあったその回数が目に見えて増え始めたのは、今年に入ってからだ。

 領海侵入は昨年9~11月は月1回、12月に国有化以降では初めてゼロとなった。ところが今年1~4月は毎月3回、5月は4回に増えた。6月19日までに侵入したのは延べ70隻に上り、すでに昨年1年間に並ぶ。接続水域の航行は、4月12日から6月14日にかけて過去最長の64日間連続を記録した。

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 「依然として予断を許さない状況だ。事態をエスカレートさせることがないよう毅然(きぜん)として対応したい」

 海保の岩並秀一長官は今月19日の会見でこう述べ、活発になる公船の動きに警戒感をあらわにした。

 なぜ突然、動きが活発になったのか。

 考えられるのは、中国軍が影響を与えている可能性だ。海警局は昨年7月、中央軍事委員会の指揮下にある部隊に編入された。

 日中関係に詳しい小原凡司・笹川平和財団上席研究員は、公船の動きは習近平・国家主席の意思にもとづくと分析する。「日中関係が良好になるなかで、国内からの『弱腰』批判を抑える政治的な意図があるのではないか」と指摘。「中国が尖閣を領有しようと圧力をかけ続ける長期的な構図は変わらない。海保はこうした動きに対応できるように体制の整備を急ぐべきだ」と訴える。

 ただ、現状では日中の「体制」には格差がある。

 中国は尖閣周辺に送る船の大型化を進める。大型になれば荒れた海でも安定して長期間活動でき、3千トン以上や5千トン以上の船も多くなった。今年に入ってからは8割ほどが3千トン以上という。

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▲沖縄・尖閣諸島沖で領海侵入や接続水域への航行を繰り返している中国の公船「海警」。最近は5千トン以上の大型船も頻繁に見られるようになっている(海上保安庁提供)

 一方の海保。尖閣警備に専従する巡視船計12隻を石垣島(沖縄県石垣市)と那覇市に配備しているが、ほとんどが1千トン級だ。ヘリコプターを2機搭載できる大型巡視船4隻を全国から順次派遣し、中国の大型船に対応している。

 さらに20年度中には6千~6500トンの3隻を鹿児島港に、21年度中に1隻を石垣島にそれぞれ新たに配備する方針を打ち出し、地元の自治体と調整している。

 尖閣周辺では中国海軍の軍艦も確認されており、日本側は神経をとがらせる。

 16年6月には戦闘艦艇が初めて接続水域に入ると、18年1月には潜水艦の航行も確認された。今月には沖縄本島と宮古島の間の公海を空母「遼寧」が航行した。通算で3度目のことだ。

 18年度の防衛白書は、中国側の動きについて「尖閣諸島周辺を含めてその活動範囲を一層拡大するなど、わが国周辺海空域における行動を一方的にエスカレートさせている」と指摘し、警戒している。

 防衛省は尖閣諸島を含む南西諸島の防衛強化を目的に、「日本版海兵隊」と言われる水陸機動団を昨年新設するなど「南西シフト」を進めている。

 尖閣周辺で見られる中国公船の動きに、海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は18日の記者会見で「何か意図があって、命令があって彼らは動いているものだと思う」と述べ、「今後いろんな面で分析していく必要がある」と話した。(贄川俊、伊藤嘉孝)

※参考 産経新聞より
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