[日韓の現場]宣伝戦<3>「移民1世」増す影響力 韓国の主張 米で浸透
(読売新聞 2019/12/05)

〇撤去と謝罪

 米ロサンゼルスの公立学校「ロバート・F・ケネディ・コミュニティー・スクールズ」が、校内の壁画を巡って揺れている。

 壁画は2016年5月、学校行事の一環として、ニューヨークの芸術家ボー・スタントン氏の手で体育館の外壁に描かれた。女優の横顔の背景に、青と赤の線が放射状に広がるデザインだ。昨年11月、地元の韓国系住民団体が突然、「日本帝国主義を象徴する旭日旗を思い出させる」と決めつけ、管轄する学区に撤去と謝罪を求めた。学校はコリアンタウンの中心地にある。

 全米の韓国系33団体・個人の連名の抗議文は、旭日旗や慰安婦問題などを「日本の戦争犯罪」だとし、約100㌻に及んだ。抗議デモも繰り広げられた。

 学区は昨年12月に壁画撤去の方針を示したが、芸術家団体などから「表現の自由の侵害だ」と批判されて保留に。韓国系団体の撤去要求は続き、今年9月、来春にもスタントン氏が背景などを描き直すことで決着した。今は絵柄を検討中で、韓国系芸術家グループも検討に加わる予定だ。

 スタントン氏は、戸惑いを隠せない。

 「旭日旗の存在は知らなかった。完成から2年半もたって問題化するとは……」

 韓国系団体のジェイク・ジャング代表は、取材に対し、「彼に描き直しを強制するようなことはなかった」と説明する。だが、スタントン氏は「彼らは旭日旗に似ても似つかないデザインを問題だと吹聴し続けた。抗議のための抗議でしかなかった」と明かした。

〇手法様々

 旭日旗以外にも、米国の韓国系住民は慰安婦を象徴する少女像や記念碑の建設、日本海への「東海」併記要求など、様々な手法で、日本の評判を落とすような活動を重ねている。

 「慰安婦像」や記念碑は、韓国系市民団体などの手で、10年頃以降、ニュージャージーやカリフォルニア州などの10か所以上で設置された。人権意識の高い米国で、慰安婦が重大な人権侵害だというイメージが広がる要因となっている。

 韓国系住民の比率が高いバージニア州では14年、公立学校の教科書で、「日本海」に韓国が主張する「東海」の併記を義務づける州法が成立した。

 今年8月には、ニューヨーク州教育局が、民主党州議会議員2人の要請を受け、公立学校の授業で「東海」併記の指導を推奨する通達を出した。両議員は韓国系ではないが、韓国系住民の多いニューヨーク市クイーンズの選挙区選出だ。

 両議員は、5月に教育局幹部と面会して「地元の韓国人コミュニティーの懸念を伝え、歴史的に正確な呼称を使うよう求めた」という。韓国系住民の意向が、議員を通じて行政に反映されたことがうかがえる。

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〇同胞意識

 自治体や議会へのロビー活動での韓国系住民の力の源泉は、「結束力」だ。

 米調査機関ビュー・リサーチ・センターによると、15年時点の韓国系住民は約182万人で、15年間で約59万人も増えた。日系人は3世、4世などの米国生まれが多いのに対し、韓国系住民の6割は移民1世なのも特徴だ。韓国系米国人の政治コンサルタント、アレックス・キム氏は「1世の多さは、祖国への帰属意識や同胞意識の強さにもつながっている」と解説する。

 韓国系住民の「結束力」は、米国政治にとって無視できない存在になっている。日本政府も個別に説明を重ねるなどの防戦に努めるが、政府関係者は「全ての一方的主張を否定し、かき消すには限界がある」と漏らす。韓国の主張が、じわりと既成事実化している。

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2019年12月04日