(朝鮮日報 2020/12/25)

〇裁判所「大統領が下した停職処分の効力を停止する」
〇尹総長「法治と常識を守ることに最善」きょう出勤

 韓国の憲政史上初めて現職の検察総長である尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に法務部が下した「停職2カ月」の懲戒処分に対し、ソウル行政裁は24日、執行停止を命じる決定を下した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今月16日、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の求めを受けて裁可した懲戒処分を裁判所が覆したことになる。尹総長は8日ぶりに職務に復帰し、25日に大検察庁に出勤する。

 ソウル行政裁は尹総長が秋長官を相手取り、停職2カ月の懲戒処分の執行停止を求めた申し立てを認め、「大統領が申請人(尹総長)に対し下した2カ月の停職処分は本案訴訟(懲戒処分取り消し訴訟)の判決宣告日から30日となる日まで効力を停止する」と決定した。尹総長が起こした懲戒処分取り消し訴訟の判決が来年7月までの尹総長の任期中には出ないとみられるため、尹総長の任期を事実上保障したものだ。

 ソウル行政裁は法務部が主張した尹総長の懲戒事由6項目の大半について、疎明が不足しているか、紛争の余地があるとし、「尹総長の本案訴訟勝訴の可能性がないとは断定できない」と指摘した。政治的な論議を呼んでいた尹総長の「退任後の奉仕」発言についても、ソウル行政裁は「政治的中立に関する不適切な言行と断定することは難しい」とした。

 ソウル行政裁はまた、尹総長に対する懲戒処分により、2カ月間にわたって検察総長の職務を遂行できないことは、検察総長の任期(来年7月24日まで)を考慮すると、明らかに耐え難い損害に該当すると指摘した。

 裁判所による今回の懲戒処分執行停止の決定は、法務部の検事懲戒委員会による協議結果を秋長官が報告し、大統領が承認した内容を完全に覆すもので、法曹界は裁判所が事実上、大統領の決定にブレーキをかけたものと受け止められている。法曹界関係者は「裁判所が大統領の裁可事項を覆す負担を覚悟してまで、1年以上続いた政権による『尹錫悦外し』が違法だと判断したものだ」と指摘した。

 尹総長は職務復帰後、月城原発1号機の経済性評価ねつ造疑惑事件と青瓦台の蔚山市長選介入疑惑事件など権力による不正の捜査を指揮するとみられる。尹総長は裁判所の決定を受け、「司法府の判断に深く感謝する。憲法精神と法治主義、そして常識を守るために最善を尽くしていく」と表明した。青瓦台はコメントを出していない。


(朝鮮日報 2020/12/25)

 ソウル行政裁が24日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が下した尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に対する停職2カ月の懲戒処分を覆した。大統領権力の象徴である人事権が裁判所によって損ねられたものであり、政権全体への打撃は避けられないとみられる。特に文大統領が最後まで信任していたチョ・グク前法務部長官の妻、チョン・ギョンシム氏まで前日、一審で子女の入試不正疑惑で懲役4年の判決を言い渡され、政界からは「尹総長の完勝」「大統領のレームダック化が加速しそうだ」との声まで上がり始めている。

 青瓦台と共に民主党は「検察改革」という名分で秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官を立て、事実上の「尹錫悦追放」を推進してきた。尹総長が政治的な欲望からチョ・グク前法務部長官の家族をはじめ、現政権の中心人物に対する強引な捜査を行っていると主張した。秋長官は今年1月の就任直後、人事異動で尹総長の側近を追放し、尹総長を「植物総長」に仕立て上げ、ついには懲戒のカードまで切った。尹総長は「検察改革」の障害であり、追い出さなければ検察改革を完成できないという論理を唱えた。

 これまで大統領は尹総長に関する直接的な言及を避けてきた。しかし、今月16日に憲政史上初めて現職の検察総長に対する懲戒処分の具申を受け、そのまま裁可した。尹総長に対する懲戒の最後の瞬間になってステージに上がった。文大統領は22日、大法院長ら5府の要人を青瓦台に招いた席で、尹総長の懲戒処分に関する裁判所の決定を控え、「権力機関の改革問題で対立が多い。それを克服し、改革を前進させる上で力を合わせてもらいたい」と発言した。このため、今回の決定は「大統領VS検察総長」という性格が強まったが、裁判所は尹総長を支持した格好になる。

 青瓦台はショックに受けた。文大統領が国民的反対世論にもかかわらずに強行した尹総長懲戒の正当性が大打撃を受けたからだ。青瓦台は裁判所の決定当日、公式の反応を示さなかった。内部からは「検察に続き、今度は裁判所まで保守世論に便乗し、政治ブームだ」とする強い批判の声も漏れた。しかし、ある関係者は「文大統領の立場では、自身が任命した総長を直接懲戒までしたのに、こんな結果が出て、とても困惑しているはずだ。尹総長を無理に懲戒したという批判も高まりそうだ」と語った。特に尹総長が捜査を指揮してきたチョ・グク前法務部長官の妻、チョン・ギョンシム氏の事件で有罪判決が出たことも重なり、大統領の政治的負担もさらに大きくなった。文大統領は今年初めの新年記者会見で、チョ・グク問題で世論が悪化している状況でも、「チョ前長官が今まで経験した苦難だけでも、私は心に大きな借りを負っていると思う」と述べ、チョ前長官をかばった。

 与党からは今回の裁判所の決定が文大統領の人事権に大打撃を与えるという評価とともに、任期末のレームダック化加速につながり、政局運営に重荷になりかねないとの懸念が示されている。まず、月城原発問題、蔚山市長選介入疑惑、ライム・オプティマス事件など検察の政権に対する捜査を防ぐため、強引な手段に出たという責任論に直面することになった。同時に、尹総長が直ちに職務に復帰し、「生きている権力」に対する捜査を急ぐと予想されることから、それに伴う負担にも耐えなければならない状況だ。最近の世論調査では大統領の支持率も下落傾向だ。不動産問題で世論が悪化している上、コロナが拡大する中、政府のワクチン確保遅延に対する責任論も強まっている。政界関係者は「秋美愛氏と尹錫悦氏の対立が1年以上も続き、国民分裂の様相が強まったことに対する責任論も出てくるはずで、辞意を表明した秋長官の後任探しも難航しそうだ」と話した。

 「尹錫悦追放」へと変質してしまった検察改革の動力もかなり失われそうだ。文大統領が新年早々の発足を強調し、与党が法律まで改正して推進した高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の意味も色あせかねない。与党からは「公捜処の最初の捜査対象は尹錫悦」という主張が多かったが、それも実現の可能性は低下している。


↑右派『朝鮮日報』、↓左派『ハンギョレ』

(ハンギョレ新聞 2020/12/25)

〇法務部の懲戒圧迫を越えて復帰 
〇文大統領と張り合う状況で勝利

 憲政史上初の現職検察総長に対する懲戒、これを不服としてユン・ソクヨル検察総長が行った文在寅(ムン・ジェイン)大統領と張り合った法廷闘争の勝者は、ユン総長だった。自分が主導したチョ・グク前法務部長官の妻、チョン・ギョンシム教授事件の捜査が一審で有罪判決を受けたのに続き、懲戒執行停止まで受けたユン総長は、復帰後、自分の考えを迷わず行動に移すものとみられる。

 ユン総長の任期はあと7カ月しか残っていないが、懲戒の不当性が確認され、いつにも増して力を得た状態だ。ユン総長は昨年7月の就任から1カ月後に“着手”した「チョ・グク一家」の捜査で与党の集中攻撃を受けた。文在寅政権の検察改革の象徴的人物であるチョ前長官一家に対する捜査で、文在寅政権とユン総長の蜜月関係は瞬く間に壊れた。結局、チョ前長官夫妻を起訴したが、同時に文在寅政権の信任も失った。

 チョ長官の後任として就任したチュ・ミエ法務部長官との関係は悪化の一途をたどった。法務部長官と検察総長の人事協議はなくなり、チュ長官は人事正常化を名分にいわゆる「ユン・ソクヨル師団」を地方に飛ばし、ユン総長の“手足”を切って孤立させた。監察権を手段に、検察内部の不正疑惑が出るたびにユン総長との衝突も頻繁になった。

ユン総長もチュ長官の攻撃に対応し、「検察とマスコミの癒着」疑惑の捜査を妨害するなど無理な手段を何度も使った。今年10月にユン総長が最高検察庁の国政監査で政治参加を示唆した発言は最大の失策だった。

結局、チュ長官はこれまでの8件の不正疑惑を集めて懲戒を請求し、その結果、ユン総長は停職2カ月の懲戒が確定した
。

 裁判所の今回の懲戒執行停止決定は、懲戒取り消しを請求した本案訴訟の一審判決から30日までの効力だ。懲戒の手続きと実体を争う事件であり、判例もない状況なので、一審判決が出るまで長い時間がかかる可能性もある。ユン総長としては任期を全うする可能性が高くなったということだ。チュ長官も辞意を表明した状態なので、ユン総長を制御する人もいない状況だ。チュ長官とユン総長の対立に対する世論の嫌気も大きかったため、後任の法務部長官もユン総長を尊重して関係を確立する可能性が高い。チョン・ギョンシム教授事件の一審判決で捜査の正当性まで認められたユン総長としては、より自信を持って職務を遂行できるようになった。

 もちろん、ユン総長が前途洋々というばかりではない。職務復帰後、大田(テジョン)地検の月城(ウォルソン)原発事件を指揮し「生きた権力に対する捜査」を強調するだろうが、最高検察庁の国政監査で政治参加を示唆した発言に足を引っ張られる可能性が高い。「退任後、政治はしない」という宣言・約束がない限り、文在寅政権と対立し勝利した野党の大統領候補として人気はさらに上がるだろうし、「政治家を目論む検察総長」の捜査指揮には公正性問題がつきまとうことになる。

来年初めに発足する高位公職者犯罪捜査処(公捜処)も危険要素だ
。ユン総長が「裁判部の政治傾向分析文書」の作成を指示したという職権乱用の疑いなどが公捜処の第1号事件になるという話が、早くも政界から流れている。

ユン総長は職務に復帰し判定勝ちを収めたが、これを「検察の勝利」と解釈するのは性急かもしれない。ユン総長が文大統領と対立する姿から、司法府の判断とは別に検察に対して不信感と反感を覚える世論も少なくないからだ。


今後政府は、1月の検察人事で検察総長の足を引っ張るような体制にすることと、高位公職者犯罪捜査処(トップ候補に対する野党の拒否権はない)を早急に設立して検察から政権絡みの捜査を移管することに全力を尽くすようになりそうですね。