〈スキャナー〉中国海警法あす施行 尖閣挑発激化を警戒 
(読売新聞 2021/01/31)

沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張する中国が2月1日、主権が侵害されたとみなせば中国海警局(海警)の船舶に武器使用を認める海警法を施行する。尖閣周辺を警備する海上保安庁の巡視船や操業中の日本漁船が対象となる可能性がある。現場は強い危機感に包まれている。(那覇支局 矢野恵祐、政治部 前田毅郎)

【海警法のポイント】

△主権の侵害時は武器使用を容認。攻撃されれば公船搭載の武器の使用も可能に
△軍指導機関の命令で防衛作戦
△「管轄海域」では、法に反した他国の軍艦や非商業船を排除。船舶の臨検、「海上臨時警戒区」設置による航行制限も
△管轄する海域や島で外国が作った建築物は強制撤去も
△人工島も保護対象」

【クリップ】中国海警局(海警)
 2013年7月、公安省辺防海警と国家海洋局など4組織を統合して発足した海上保安機関で、東シナ海や南シナ海で監視活動を行う。13年時点で総勢1万6296人。当初は公安省の指導下に置かれていたが、18年7月、軍指導機関・中央軍事委員会の指導を受ける武装警察部隊の傘下に編入された。海警局トップには軍出身者が就くなど軍との連携を念頭に置いた動きが進んでおり、「第2の海軍」とも称せられる。海警法が成立するまで、自らの組織の権限などを具体的に定めた根拠法を持っていなかった。

◆「武器使用許可」高まる緊張

◇最前線

中国の全国人民代表大会(国会)常務委員会で海警法案が可決される前日の1月4日朝、尖閣専従で警備にあたる石垣海上保安部巡視船「いぜな」の佐々木賢一船長(57)が乗組員らにこう訓示した。

「中国側の対応が変わってくる可能性がある。何が起きても対応できるよう緊張感を持ち続けるように」

海警の示威行動は昨年、領海のすぐ外側にある接続水域で過去最長となる333日に及んだ。船体に新たな番号を表示した6隻も確認され、船団はおおむね4隻編成で行動している。「いぜな」は全長96メートルで1500総トン、20ミリ機関砲を装備する。一方、海警は排水量1万トン級の大型巡視船が配備されるなど大型化が進み、海軍並みの76ミリ砲を備えた船舶があるとの情報もある。

その海警の船舶に、海警法は武器使用を認めたばかりでなく、中国軍の指導機関の命令を受けた「防衛作戦」の任務も明記した。

「いぜな」など那覇海保も含めた計12隻は専従で、ローテーションを組んで尖閣周辺に出動してきた。「接触など最悪の事態に至らない距離を保ちつつ、海警の船にギリギリまで近づいて退去させる対応も求められる」(佐々木船長)という極度の緊張を伴ってきた任務は今後、一層神経をすり減らす対応となる。

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◇安保適用

「武器を向けられる恐怖で、今以上に現場海域に近寄りづらくなる」

所属漁船が海警につきまとわれた地元漁協の幹部はこう危惧した。海警が漁船に接近するトラブルは昨年、8件に上り、尖閣国有化後の2013~10年の計4件から急増した。

日本政府は、領海内での中国側による日本漁船への妨害が常態化するような事態は、絶対に避けたい考えだ。日本領海内で中国が海警法を執行しているかのような状態が定着すれば、日本が尖閣諸島を実効支配しているという事実に疑問が生じかねないからだ。

20日のバイデン米政権の発足後、日米両国は防衛相や外相、首脳の会談でそれぞれ、「日本の施政の下にある領域」での共同防衛義務を定めた日米安全保障条約5条について、尖閣への適用を確認した。短期間で繰り返し確認したのは、日本の実効支配を強調し、中国をけん制する狙いがある。

◇連携

海保の能力強化も図っており、昨年2月、沖縄や鹿児島に大型巡視船3隻が配備されたばかりだったが、28日に成立した第3次補正予算では、さらに大型巡視船1隻の建造費が計上された。23年度に配備予定だ。

領海の警備は海保が担っているが、海保で対処できない事態が起きた場合、閣議決定を経て防衛相が海上警備行動を発令し、海上自衛隊が対処することも可能だ。岸防衛相は29日の記者会見で、「防衛省・自衛隊においても警戒監視、情報収集に万全を期したい。海警の動きは関心を持って注視していきたい」と述べ、警戒を強める考えを示した。

自民党内では、海警法施行を受け、海保と海自の連携を強化するための法整備を求める声が出ている。

ただ、海警側も、尖閣などでの示威行為の背後で中国海軍が監視体制を敷く。日本政府内には「海警の船に対して海自を出動させれば、中国が海軍を現場に派遣する口実を与えかねない」(防衛省幹部)と慎重な声も多い。防衛省は、偶発的衝突を避けるため、自衛隊と中国海軍の幹部のホットライン開設に関する協議を加速化させる方針だ。


◆日本の実効支配崩す狙い 南シナ海 比・ベトナム反発

中国の習近平(シージンピン)政権は2012年の日本政府による尖閣諸島国有化以降、領有権を主張するため、海警による日本の領海への侵入を常態化させてきた。法施行には、海域を自ら管理していると既成事実化するため、日本漁船を完全に排除する思惑もあるとみられる。香港を拠点とする国際政治学者の林泉忠氏は、習政権が尖閣周辺海域の「日中共同管理」を目指していると分析する。米軍が反撃するリスクがある尖閣の武力奪取には当面踏み切らず、まずは日本側の実効支配を突き崩そうとする戦略がうかがえるという。

海警法は法執行の及ぶ範囲として「管轄海域」という独自の基準を盛り込んでいる。最高人民法院(最高裁)は過去、「管轄海域」が領海や接続水域、排他的経済水域(EEZ)などに加えて「中国が管轄するその他海域」を含むとする曖昧な定義を示している。

この定義は通常の国際法解釈と相いれないが、習国家主席は昨年1月、「立法、法執行、司法などの手段を利用し、国家主権を断固守れ」と指示した。東シナ海や南シナ海で、国内法をたてに自らの主張を押し通そうとする思惑が鮮明だ。

海警法は、中国が南シナ海で軍事拠点化を進める人工島も海警の保護対象としている。中国との間で領有権問題を抱えるフィリピンの外相は7日、すでに外交ルートで抗議したことを明らかにした。ベトナム外務省も9日に声明を出して中国をけん制した。(中国総局 比嘉清太、ハノイ 田中洋一郎)


中国海警法施行 尖閣、衝突懸念も
(読売新聞 2021/02/01)

【北京=比嘉清太】中国で1日、海上保安機関・海警局(海警)の権限などを定めた「海警法」が施行された。海警公船の活動がさらに活発化するとみられる。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域では、日本の領海を警備する海上保安庁の巡視船と衝突する危険性もある。

海警法は、国家主権が外国の組織や個人に侵害された際、武器の使用を海警に認める。軍指導機関である中央軍事委員会の命令で防衛作戦の任務を執行するとも明記し、「第2の海軍」と称される海警の軍事的性格を強める内容だ。


中国海警法懸念伝達へ政府あすにも日中海洋協議
(読売新聞 2021/02/01)

日中両政府が海洋当局者による「日中高級事務レベル海洋協議」を3日にもオンライン形式で開催することがわかった。中国公船が挑発行為を繰り返す沖縄県・尖閣諸島の周辺海域など東シナ海問題が主な議題となる。

日本政府は協議で、中国の海上保安機関・海警局(海警)の武器使用の条件などを定めた「海警法」が1日に施行されたことを受け、東シナ海の緊張をさらに高める恐れがあるとの懸念を伝える方針だ。

加藤官房長官は1日の記者会見で海警法について「国際法に反する形で運用されることはあってはならない。今後とも中国側に対してしっかりと我が国の懸念や関心を伝える」と強調した。

また、尖閣諸島周辺などでの自衛隊と中国海軍の偶発的衝突を避けるため、幹部間のホットライン開設に関する協議の加速化についても協議するとみられる。

中国が軍事拠点化する南シナ海問題や、海洋プラスチックごみの削減に向けた両国の協力についても話し合う見通しだ。

日本側は外務省や防衛省、海上保安庁、水産庁の局長級の担当者らが参加する。開催は2019年5月以来で、昨年11月の日中外相会談で早期開催を確認していた。


>習政権が尖閣周辺海域の「日中共同管理」を目指していると分析する。米軍が反撃するリスクがある尖閣の武力奪取には当面踏み切らず、まずは日本側の実効支配を突き崩そうとする戦略

この通りなら、海自の出動をちらつかせ、「もし中国軍が出てくるなら米軍に共同対応を依頼する」などの姿勢であたりながら、避難所をつくるという名目などで港をつくるなど実効支配を進めた方が良いんじゃないですかね。

すでに、尖閣諸島周辺だけで見れば、アメリカが投入できる軍事力を中国が上回るという分析もあるだけに(沿岸からのミサイル攻撃など)、中国が軍事・経済・政治的にもアメリカが出て来ても大丈夫、またはアメリカが迂闊に出てこれないとなるほどの体制になる前に日本が先手を打ち続けないと、結局、中国軍が出てきて奪われるだけでしょうね。


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