(中央日報 2021/10/29)
チェ・ジュノ/科学&未来専門記者・論説委員

純粋な独自技術で作った初めての韓国型発射体(KSLV-2)ヌリ号打ち上げから1週間が過ぎた。21日、打ち上げ初日の興奮は落ち着いたものの、韓国航空宇宙研究院(航宇研)は羅老(ナロ)宇宙センターと済州(チェジュ)・パラオ追跡所で受信したヌリ号データの分析に余念がない。発射体第1・2段のレビューも重要だが、終盤失敗に終わってしまった第3段の早期燃焼終了原因を突き止めなければならない。

航宇研の趙光来(チョ・グァンレ)元院長(62)は韓国型発射体開発事業本部内の最年長だ。2009~2013年、3回にわたって打ち上げられた初めての韓国型発射体「羅老号」(KSLV-1)打ち上げ推進団長を務めただけではなく、1989年航宇研入社以降、今まで宇宙ロケット開発一筋で歩んできた「ロケットマン」だ。26日、大田(テジョン)航宇研で会った趙氏は韓国宇宙ロケット開発の秘史を初めて公開した。

--羅老号責任者として、最初のヌリ号打ち上げを見守った所感を是非聞きたい。

「非常に残念だ。技術的にはかなり満足しているが、任務を最後まで完遂できなかったせいで究極的には失敗になった。個人的には研究院入社以降、1993年KSR-1(1段型固体科学ロケット)の2回の打ち上げを皮切りに、今回が通算10回目の打ち上げになる。事実、今回は大きな期待を寄せていた。過去は打ち上げ準備過程でたびたび何かがひっかかていたが、今回はすべてのことが順調だった。難しい仕事だと思っていたが、1回の打ち上げで良い成果を見せることができるだろうと考えた。ところが第3段後半に速度上昇が予測から外れ始めた。『速度が上がらない、上がらない』と心配していたところにコンピュータが自動で燃焼中断を知らせてきた」

--何が原因だと考えられるか。

「第3段酸化剤である酸素タンクの圧力が低下したことがファクトだ。問題は原因だが、タンク自体の異常というよりは配管などの結合部位やバルブ類からの漏洩が考えられる。パラオ追跡所に受信されたデータを分析してみれば正確な原因が出てくるだろう。データ量が多いため分析に少し時間がかかるかもしれない」

--調査委員会が構成されると聞いた。

「それがまた心を複雑にする。羅老号の時もそうだったが、調査委が開かれれば航宇研は事実上被告となる。大統領の慰労も効果がない。発射体の経験が一度もない調査委員が占領軍のようにやって来て無理な報告書を出せという。羅老号1、2回目の打ち上げ失敗の時、調査委員の一人は『言われたとおりにやれ。そんなにいい加減だから失敗したんだ』と言いながら侮辱まで浴びせた。当時『こういうことが生き地獄を見るということか』と実感した。日本がHロケットを開発して失敗した時、内部調査はあったが外部調査委のようなものなかった。外部ではよく分からないためだ。それでも外部要人が調査委に参加する理由は研究院内部の専門家を尊重していないためだ。羅老号失敗時は調査委の他にも政府監査官室で私の銀行口座まで調べ尽くしたと聞いた。幸い、科学技術情報通信部が今回は航宇研主導で調査をするというので見守っているところだ」

--最近も何回も監査を受けて重い懲戒要求まで受けたとのことだが。

「前院長とつながった現政権高位層の影響があったと推定する。科学技術情報通信部独立事業形態で構成された宇宙ロケット開発事業本部を前院長が快く思っていなかった。結局、2019年年末の会食の席で院長がロケット本部研究員の腕をかむなど暴行に訴えるまでに広がった。このような内容が上に伝えられて、国政監査場でその院長が叱責を受けた。その後、ロケット本部の最古参で元院長が出てきて職員に何度も無理な監査が行われた。最終的に今年7月に懲戒委員会から『懲戒不可』という結論が出たが、ヌリ号打ち上げ準備を控えてロケット開発事業本部がこのような困難に耐えなければならなかった」

--前回の羅老号打ち上げ経験がヌリ号では役立ったか。羅老号は第1段をロシアからそのまま持ち込み、第2段は固体エンジンを使ったため、第1・2・3段すべてを自力で開発した液体ロケットとは完全に違っていた。

「今だからこそ言えるが、羅老号がなかったらヌリ号を開発することはできなかった。まず羅老号打ち上げ当時、そのような問題で推進力30トン液体エンジン開発を非公式的に始めた。その時、ターボポンプ・燃焼機・ガス発生器などを開発した。羅老号も単にロシア製1段目を韓国製2段目に取り付けたわけではない。1・2段を結合するには全体的な体系総合に対する理解がなければ難しい。羅老号に使ったケーブルの長さだけで38キロに達する」

趙氏の表情が険しくなったと思ったら、突然インタビューを中断した。説明をもっとするために見せたいものがあると言った。航宇研本館の横にある組立棟1階に降りて行った。普段は利用する人がいないのか、埃が厚く被ったようにみえる空間が広がっていた。趙氏がズボンのポケットから赤銅色の鍵を取り出して古い鉄門を開いた。ガタっという音を立てながら高さ25メートルの組立棟1階を3分の1に分けた空間が目に入ってきた。直径2.9メートル、長さ10メートル余りのロケットが横たわっていた。色あせた白色胴体の上に「教育科学技術部」と「KHRUNICHEV STATE RESEARCH AND PRODUCTION SPACE CENTER」という文字が書かれたマークが鮮明に映った。羅老号1段目を作ったロシア宇宙企業クルニチェフのロケットだ。胴体の先端部に巨大な先端液体ロケットがついていた。エンジン燃焼機の上にロシア語で「MAKET-НЖ」と赤色で書かれていた。本物ではない「模型」という意味だ。

--2013年を最後に打ち上げられた羅老号がなぜ航宇研の倉庫にあるのか。

「これは過去羅老号の時に使った第1段地上検証用発射体(GTV)だ。当時としては初めて作る宇宙ロケット組立棟と発射台認証試験のために実際の機体がなければならなかった。このために2008年8月に真っ先にロシアから第1段地上検証用発射体を持ってきたのだ。2009年8月羅老号1回目打ち上げに先立ち、4月に最初に発射場に立ててメディアに公開したその羅老号だ」

--その時は地上検証用発射体はロケットエンジンがない状態にすると説明していなかっただろうか。

「当時は私たちもGTV第1段部にノズル程度だけをつけた模型エンジンだと思っていた。ロシアのクルニチェフもそう説明していた。だが、3回目の打ち上げまで終わって大田に持ってきて分解してみると先端多段燃焼サイクルのアンガラエンジンが完ぺきな姿で装着されていた。それを初めて見た瞬間、戦慄が全身に走った。

当時は2回目の韓国型発射体(KSLV-2)ヌリ号の開発プロジェクトがすでに4年目に入っていた時だった。だが、基本設計もできておらず足踏み状態に陥っていた状態だった。その後のヌリ号75トンエンジン開発にこのアンガラロケットが多いに役立ったのは言うまでもない」
(羅老号プロジェクト当時、航宇研は米国・ロシアなど宇宙先進国は宇宙ロケットの核心であるエンジン技術は絶対に流出しないという説明と共にGTVに対して実物は全く同じだが第1段エンジンはない状態だとメディアに明らかにしていた)

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▲大田(テジョン)航空宇宙研究院組立棟1階に保管中の羅老(ナロ)号第1段ロケットエンジン。ロシア語で模型と書かれているが、ロシア宇宙関連企業クルニチェフの推進力210トン先端多段燃焼サイクルエンジンがそのまま搭載されている。[写真 航空宇宙研究院]

--ロシアはなぜGTVに実際のエンジンをつけたままにしていたのだろうか。

「私の推定では、模型エンジンをわざわざ作るほうが面倒くさく費用も多くかかるので既成のエンジンをそのまま付けておいたようだ。このために3回目の打ち上げが終わってロシアがこのGTVを持っていこうとした時、私たちが『契約にはGTVも含まれるのではないか』と言って阻止した。そのようにしてGTVは韓国に残ったが、そのために当時クルニチェフ社の社長が解任される事件まであった。ロシアがデフォルト(債務不履行)に陥って経済的に厳しく、社会が混乱していた時だったからこのようなことが可能だったようだ」

--今までなぜこの事実が公開されなかったのか。

「あえて隠そうとしたわけではない。羅老号打ち上げ当時はそのような事実を知らず、後になって知ったが、その時は誰も大きな関心がなかった。今回のヌリ号を打ち上げが終わり、開発秘史について知りたがっているので中央日報に公開することになった」

--今後の韓国型発射体高度化事業にも役立つ。

「そのとおりだ。ロシアのアンガラロケットは推進力210トンの最新型多段燃焼サイクルエンジンで、米国も最近輸入しようとした強力で先端のエンジンだ。ヌリ号75トンエンジンは燃焼試験をやってみたが、ターボポンプから不完全燃焼した真っ黒な排気ガスが出てくる。多段燃焼サイクルはこれをエンジン内部でもう一度燃焼させる方式だ。エンジン効率が高くパワーもはるかに強力だ。もうすぐ始めなければならない韓国型発射体高度化事業も多段燃焼サイクルエンジンのほうに進まなければならない」

--21日のヌリ号打ち上げ当時、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が演説するとき科学者を動員して屏風にするという論争があった。

「当時現場の雰囲気が実際にそうだった。統制棟は打ち上げを控えて非常に忙しく、全神経がそちらに向かっていた状況だったので、青瓦台(チョンワデ、大統領府)儀典チーム・警護チームだけでなくイベント企画会社の人々まで歩き回った。打ち上げ当日朝は統制棟の出入りまで統制して研究員が行き来するのが難しかった。そのうえ打ち上げ後、本部長をはじめ航宇研エンジニアを40分以上待機させたことが決定打になった。当初航宇研では打ち上げ現場に大統領が来ないほうがいいという意見を送った。大統領が打ち上げ現場に来ることになればやむを得ず多くの統制を敷くことになり、邪魔になりかねない。他の国の場合、大統領は打ち上げ現場に直接来ないでメッセージを送るだけにとどまる。それにはすべて理由があるのだ」