(朝日新聞 2022/04/04)
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が4日、再選出馬をしないと表明した。2019年の反政府デモで社会が混乱したことや、新型コロナ封じ込めに失敗して感染者数が115万人に達するなど、中国政府から管理能力に重大な疑問符をつけられたとの見方がある。後任の候補には、さらなる強硬派の名前も浮上している。
「家族のことを最優先に考えた。その家族が家庭に帰る時だと思っている。考慮したのはそれだけです」
林鄭氏は4日の記者会見で、5月8日に予定される次の行政長官選に立候補しない理由を説明した。「昨年3月に全国人民代表大会(全人代)に出席した際、中央政府に直接伝え、理解を得ていた」とも語り、中国政府と円満に話し合って決めたことを強調した。
しかし、実際は昨年末ごろまで、林鄭氏の再選の可能性は消えていなかった。中国政府が主導して選挙制度を変更したことで、昨年12月の立法会(90議席)選挙でも親中派が89議席とほぼ独占し、「林鄭氏が再選されれば、進めたい政策を自由に進められる」(親中派)との見方も出ていた。
また、林鄭氏の前任だった梁振英・前行政長官らが再出馬の意向を示していたが、中国政府と香港政界がともに強く推す候補者が見あたらなかったことも、林鄭氏の名前が消えなかった理由の一つだった。
だが、流れが完全に変わったのが、昨年12月末から始まった新型コロナウイルスの感染再拡大だ。香港はそれまで中国と同様にゼロコロナ政策を維持し、域内の感染者はほぼゼロの状態が続いていた。しかし、香港政府は早期に感染源を見つけて抑え込むことに失敗し、3カ月余りで約740万人の人口のうち、115万人以上が感染。8千人近くが亡くなった。
中国政府は、香港だけでは対処できないと判断。医療支援隊や専門家らを香港に派遣するなど、不満を募らせていたとされる。
立法会選で親中派の選対顧問を務めた人物は、中国政府が求める新たな行政長官の条件として、(1)管理能力(2)民意の支持(3)中央政府の信任(4)愛国者による香港の統治の徹底、が必須だと指摘。林鄭氏の3月の支持率は12%にまで落ち込んでいる。「管理能力だけでなく、民意も中央政府の信任もなくなった」と語る。
行政長官の任期は5年。市民に投票権はなく、親中派が99・9%を占める選挙委員(定数1500人)だけが投票できる。立候補するには、選挙委員188人の推薦を受ける必要があり、中国側の信任を得た者でないと立候補できない。
立候補の受け付けは3日に始まり、多くの香港メディアは、昨年6月に政府ナンバー2の政務長官に抜擢(ばってき)された李家超(ジョン・リー)氏が出馬の見通しだと伝えた。李氏は治安部隊トップの保安局長として、中国政府の方針に忠実に、香港の多数の民主活動家や議員らを逮捕するなど強硬な捜査を指揮したことで知られる。(香港=奥寺淳)

specificasia
が
しました