(ハンギョレ新聞 2022/07/09)
10日の選挙後、党内強硬派が主導権を握る見込み
9条改正、防衛費増強などタカ派政策予想される
米日関係や韓日関係にも影響
日本との関係改善を図っていた韓国に「大きな悪材料」
「政局の影響については今触れるべきではないと思う。私自身もそういったことを考えていない。まず、今の厳しい状況に対して『救命措置』がしっかりと行われること、政府としてはあらゆる事態に対応できる万全の措置を用意することが大事だと思う」
8日午後2時40分、安倍晋三元首相の「狙撃」の知らせを聞き、急きょ東京の首相官邸に戻ってきた岸田文雄首相は、緊張の面持ちでカメラの前に立った。集まった記者団が安倍元首相の狙撃事件が今後の日本の政局に及ぼす影響を尋ねたが、まだこれに触れる時ではないとして、明確な言及を避けた。
しかし、2012年から7年8カ月間にわたり「世界3位」の経済大国の首相を務め、新冷戦に突入する東アジアで、日本の「針路」を決めた安倍元首相の存在感を考えると、今回の事態は日本だけでなく東アジア全体の情勢に甚大な影響を及ぼすものとみられる。
まず関心を集めるのは、10日に迫った参議院選挙だ。日本では有力政治家が志半ばで死去した後に行われる選挙を「弔い合戦」と呼ぶ。故人に対する追悼の中で行われる選挙であるため、その遺志を受け継いだ方が大勝を収めるケースが多い。ただでさえ今回の選挙では自民党が「四分五裂」した野党を相手に圧勝すると予想されていた状況だった。
今回の選挙は当初、昨年10月の就任以後、安倍元首相の「強硬路線」に押されていた岸田文雄首相が勝利を通じて自身の政策を展開する契機になるかどうかに注目が集まった。だが、今回の狙撃事態で選挙が「岸田の独立をかけた戦い」ではなく、「安倍を追悼する戦い」になってしまった。選挙で大きな勝利を収めた後も岸田首相の影響力が低下し、安倍元首相の遺志を維持していくべきだという高市早苗氏や萩生田光一氏ら強硬派の影響力が大きくなりかねない。安倍元首相が首長を務める安倍派(清和政策研究会)は伝統的なタカ派・保守派の派閥で、党内で最も多い現役議員95人を抱えている。
強硬派が政局の主導権を握ることになれば、今後改憲や現在進行中の外交・安全保障政策にも大きな影響が予想される。まず、改憲だ。安倍元首相と祖父の岸信介元首相などは憲法改正を「悲願」、「歴史的な使命」と呼んできた。岸田首相は憲法改正自体には同意しながらも、日本の軍隊保有と交戦権を否定した平和憲法の中核である9条については慎重な態度を示してきた。しかし、今回の事態で日本政界の雰囲気が一気に9条改正の方に傾く可能性が高くなった。自民党は安倍元首相在任中の2018年、自衛隊の存立根拠を盛り込む内容の改憲案を発表した。
次に外交と安全保障の路線だ。自民党は今回の選挙公約集で「北大西洋条約機構(NATO)諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に置き、防衛関係費の増額を目指す」と明示した。この公約が現実化すれば、5年後の日本の防衛予算は10兆円を超え、世界3位の規模になる。岸田首相は「数字ありきではない」と強調したが、党内強硬派の主張に押される可能性がある。
中長期的に米日関係や韓日協力にも少なからぬ影響が予想される。安倍元首相は2015年4月、日米防衛協力のための指針などを改正して日米同盟を強化する一方、2016年、米国の東アジア政策になった「自由で開かれたインド太平洋構想」を初めて打ち出した。最近では台湾に対する中国の軍事的脅威を提起し「台湾有事は日本有事だ。日米同盟有事でもある」という認識を重ねて示した。韓国に対しては2015年8月、安倍談話を通じてこれ以上歴史問題で謝罪できないという意思を明らかにし、同年末の慰安婦合意後には「合意は1ミリも動かない」と述べた。日本との関係改善の糸口をつかもうとした尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の立場にとっても、安倍元首相の死亡は「災害的なニュース」と言える。キル・ユンヒョン記者
(ハンギョレ新聞 2022/07/09)
日本の参議院選挙を控えた8日、街頭で演説していた日本の安倍晋三元首相が銃撃され死亡した。逮捕された容疑者の犯行動機はまだ明確には明らかになっていないが、政治家に対するテロはいかなる理由であろうと許されない。民主主義の根幹を揺るがす暴力行為に断固反対しつつ、衝撃に陥った日本社会に深い慰めの言葉を送る。
安倍元首相は奈良県で遊説中、8日午前11時30分ごろ、後方から近づいてきた容疑者に首と心臓を銃撃されて倒れた。病院に移送された時にはすでに心肺停止状態だった安倍氏は、午後5時3分に死亡した。元海上自衛隊員であることが確認された容疑者は「安倍元首相に不満があって殺そうとしたが、政治信条に対する恨みではない」との趣旨を語ったと日本メディアは報じている。
選挙遊説を中断して急きょ東京に戻った岸田文雄首相は「民主主義の根幹である選挙が行われている中で起きた卑劣な蛮行」と糾弾した。野党の政治家たちも「絶対に許せない政治テロであり蛮行」だと糾弾しつつ遊説を中断した。韓国政府が「ご遺族と日本国民に深い哀悼と慰労の意を表する」と語るなど、世界各国からも追悼メッセージが相次いだ。
安倍元首相は二度、8年8カ月間にわたって政権を握っていた日本歴代最長の首相だ。辞任後も自民党内の最大派閥を率いて「院政」に例えられる強大な影響力を行使してきた。彼が在任期間中に靖国神社を何度も参拝し、日本の植民地支配と侵略歴史に対する反省を拒否し、韓国最高裁の下した日帝強占期強制動員労働者に対する賠償判決に反発して輸出規制措置を取るなど、韓日関係が最悪の状況に陥ることに中心的な役割を果たした人物であることは明らかだ。このような彼の政治理念と行動には同意しない。しかし、政治家を狙った銃撃暗殺は決していかなる問題も解決しえず、社会をさらなる対立へと追いやるものであるということを明確にしておく。
今回の事件はそれ自体も大きな悲劇だが、韓日関係とアジア情勢にも長い影を落とす可能性がある。10日に予定されている日本の参議院選挙が「追悼選挙」として行われ、安倍元首相が率いてきた自民党内の強硬派の声がさらに強まりうるからだ。そうなった場合、平和憲法の核心である9条を変え、自衛隊の役割を明示する改憲や、防衛費の大幅増額など、日本の軍備強化の動力が強まることが懸念される。衝撃と悲しみに沈む日本社会が賢明にこの局面を乗り越えていくことを願う。
>日本社会が賢明にこの局面を乗り越え
選挙区の場合、「1人区」以外、当選確実な自民候補への過剰な票は事実上死票になるので、当落ライン上の自民候補、または維新候補などに投票するように、ということですね。

specificasia
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