(朝日新聞 2023/02/28)
日韓の懸案になっている徴用工問題をめぐり、韓国の朴振(パクチン)外相は28日、日本企業に賠償を命じた訴訟の原告らとの「対話の場」に臨んだ。1月に公表した財団が寄付金で賠償を肩代わりする「解決策」の有力案について原告側で賛否が二分している。韓国政府内では、案を正式な「解決策」とするためには、日本側の寄付などの「呼応」がなければ難しいとの声がより強まってもいる。
ソウルでの「対話」は非公開で、元徴用工や遺族らが出席したが、有力案に反発する一部の人らは参加しなかった。原告代理人によると、韓国政府側は、被告の日本企業からの自発的な財団への拠出などを日本側に引き続き求めていると説明したという。
朴氏は対話の後、記者団に「お話を傾聴して心がとても痛くなった。この問題の合理的な解決策を早急にまとめたい」と語った。
■「早く解決して」望む原告も
三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた2018年秋の韓国大法院(最高裁)判決について、日本側は賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、賠償に応じていない。
日韓関係の改善に意欲的な尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、1月に「解決策」の有力案として韓国の財団が企業からの寄付をもとに原告への賠償分を肩代わりする仕組みを公表。原告の一部や支援団体からは「日本政府や日本の被告企業を免責するものだ」との反発があった。
一方、この案を受け入れる意向を示す原告はいる。
父親が徴用工だった原告の李圭梅(イギュメ)さん(72)は「私は父の訴訟を受け継いだ2世。大声を上げて反対するより、どんな方法でも、解決して(日韓関係が)良くなってほしい」と話す。
同じく父親から訴訟を引き継いだ朴在勲(パクジェフン)さん(76)も「韓国企業のお金でもいいから受け取りたい。もう年なので、どんな方法でもいいから早く解決してほしい」と話す。
大法院判決では、15人の元徴用工について日本企業の賠償責任が認められたが、そのうち存命しているのは3人。多くは遺族らが原告となっている。韓国政府関係者によると、有力案で支給対象となる原告は37人と見込まれる。どれだけ多くの賛同が得られるかが、案が正式な「解決策」となるかに影響を与える。
■教訓ふまえた尹政権の姿勢
15年の日韓慰安婦合意では「最終的かつ不可逆的な解決」として、日本が拠出した10億円を財源に元慰安婦らに支援金を支給する仕組みとなった。合意当時に存命だった元慰安婦47人のうち35人が1人あたり1億ウォン(約1千万円)を受け取った。だが、元慰安婦の一部や支援団体が猛烈に反発。韓国国内の世論が呼応して合意は空文化した。
こうした経緯から尹政権は今回、原告との対話を丁寧に進める姿勢を見せている。「日本側の態度が硬く、現状では韓国国内を説得できない」と見る大統領府の幹部もいる。
日本政府も尹政権の下で問題を決着させたいとの意向は持っている。1月以降、外交当局の協議に続き、林芳正外相と朴振外相がドイツで会談した。
ただ、政府関係者は「政府、被告企業、団体など日本側から財団に拠出することはない」と言う。歴代内閣が示してきた植民地支配と侵略に対する「反省とおわび」の継承の表明を検討している。
外務省幹部は「決着に至るかどうかは韓国の決断次第だ」と話す。日本政府は、徴用工問題が解決すれば、対韓輸出規制など他の課題の解決の検討にも入るとみられる。(鈴木拓也、稲田清英=ソウル、高橋杏璃)

specificasia
が
しました