(毎日新聞 2023/12/04)
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 香港民主活動家の周庭(英語名アグネス・チョウ)氏(27)が3日、写真共有アプリ「インスタグラム」の自身のアカウントで声明を発表し、9月中旬からカナダに留学していて、今後香港には戻らないつもりだと明らかにした。周氏は2019年の大規模デモを扇動したとして実刑判決を受け、21年6月まで服役。その後もしばらく、外国渡航が認められない状況が続いていた。

 声明によると、周氏は今年カナダ・トロントの大学院への留学を目標に動き始めた。だが20年8月に香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕(その後保釈)された周氏は当局にパスポートを没収されていて、9月のカナダ渡航時には治安当局の許可が必要だったという。

 周氏は当局から求められていた条件に従い12月中旬には香港に一時帰郷するつもりだったが、「香港の状況、自分の安全などを熟考した結果、戻らないことを決めた。恐らく一生戻らないだろう」と記した。香港では再び逮捕されるのではないかとの恐怖などから心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されるほどの厳しい状況だったと説明。また、当初から香港に戻らないつもりで渡航したのではなく、カナダで考えた結果だとしている。

 声明ではカナダへの渡航を求める周氏に対し、香港国安当局が中国への愛国心を証明するさまざまな行動を要求していたことも明らかにした。周氏は民主化運動に参加したことへの反省や今後運動関係者と接触しないことを記した文書を提出。8月には香港国安当局者5人が同行して中国本土を訪問し、歴代の中国指導者の業績を示す展示や広東省深圳にあるIT大手・騰訊控股(テンセント)の本社などを見学し、展示とともに写真を撮影するようにも言われたという。

 中国では、人権派弁護士らを政治事件で処罰する際に、自分の行為が誤っていたことや国家の正当性を認める「告白」映像などを撮影させることと引き換えに、刑を軽くしたり仮釈放を認めたりするケースが少なくない。

 周氏は「中国の経済発展は否定しないが、こんな強大な国が民主化を求める人を牢(ろう)に送り、パスポートを返す際に愛国心を示す訪問を条件にするのは、ひ弱ではないか」としている。

 周氏は民主的な選挙制度を求めた雨傘運動(14年)や中国への容疑者引き渡しに関する逃亡犯条例改正案への抗議活動(19年)に参加。堪能な日本語を生かして、日本を訪れて民主化運動への支持を訴えたこともある。19年のデモに関して、20年12月に無許可集会扇動罪などで禁錮10月の実刑判決を受けた。【台北・林哲平】


(朝日新聞 2023/12/04)

 香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏(27)が3日、写真投稿アプリ「インスタグラム」で、今年9月に留学を理由にカナダに出国していたことを明らかにした。香港当局から12月末に一時帰郷し、出頭するよう求められたが、安全面を考慮してカナダに残ることを決めたという。

 周氏は投稿で「おそらく一生、香港に戻ることはない。ようやく逮捕に恐れる必要なく、言いたいことを語り、やりたいことを実行できる」と記した。

 周氏は2021年6月、未許可デモを組織するなどした罪での刑期を終え、釈放された。その当日、インスタグラムに黒一色の図柄を投稿した後、沈黙を続けていた。反中国的な言動を禁じた香港国家安全維持法(国安法)による摘発を懸念していたとみられていた。この間、3カ月ごとに当局への出頭を求められ、精神的に追い詰められていたという。

■カナダ行きの条件は中国本土訪問

 共産党幹部の業績展示を参観 投稿によると、周氏は今年7月初め、香港当局から、中国本土を一度訪問することを条件に、当局の管理下にある旅券の返還とカナダへの留学を許可すると打診された。8月に当局者5人と、香港と接する中国の深圳を1日訪ね、中国の改革開放政策の成果や共産党幹部の功績を紹介した展覧などを見学させられた。香港に戻った後には、「祖国の偉大な発展を学ばせてもらい、警察の対応に感謝する」という文書を書かされたという。

 その後、旅券の返還を受け、9月に香港からカナダのトロントに向けて出国した。現在はカナダの大学に通っている。香港当局から12月末に出頭のために一時帰郷するよう求められ、自ら航空券も購入していたが、拒むことを決めたという。周氏は「もう二度と望まぬことを強制されたくないし、中国にも行きたくない。恐れで心身が崩壊してしまう」と理由を記した。

 周氏は近年の香港の民主化運動に絡み、日本で最も注目を集めた人物の一人だった。日本アニメやアイドルのファンで、独学した日本語に加え、母語の広東語や英語、北京語を駆使し、記者会見やSNSで国際世論の支援を求め続けた。

 16年に仲間と政治団体「香港衆志(デモシスト)」を創設し、副事務局長に就任。香港の未来は香港人が決めるという「自決権」の獲得を訴え、18年に立法会(議会)の補欠選挙に立候補するが、当局に不受理とされた。

 19年以降の大規模デモにも加わり、訪日して会見や講演で香港の民主主義の危機を訴えたが、20年8月に国安法に違反したとして逮捕された。翌日に保釈された時には、日本のアイドルグループ「欅坂46」のヒット曲で、自らの信念を貫いて抵抗する気持ちをうたった「不協和音」の歌詞を思い浮かべていたと語っていた。(台北=石田耕一郎)