(朝日新聞 2024/02/18)
 群馬県による県立公園「群馬の森」(高崎市)の朝鮮人追悼碑の撤去は、韓国メディアでも大きく取り上げられた。日韓友好をアピールしてきた韓国政府はこれまで目立った動きを見せていないが、4月に総選挙を控えていることなどもあり、専門家は「いずれ動かざるを得なくなるだろう」と指摘する。

 「撤去前に反対集会」「日本の市民団体は『歴史否定』と反発」「追悼行事に右翼」……。撤去開始前日の1月28日には、韓国のキー局3局(KBS、MBC、SBS)全てが夜のニュース番組で報じた。市民が碑に集まって別れを惜しむ様子や、右翼や機動隊がもみ合うシーンが韓国全土で放映された。

 全国紙も何度も記事にした。ハンギョレ新聞の記者は「(徴用工問題などの)歴史問題を強引に片付けてしまった尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と岸田文雄首相の関係改善が、韓日友好どころか『歴史の抹消』をあおっている」とコラムで批判した。

 撤去前の同26日にあった済州(チェジュ)特別自治道の呉怜勲(オヨンフン)知事と山本一太知事らとの面会では、呉知事が碑について円満な解決を要請したと、済州島の漢拏(ハルラ)日報やソウル新聞が報じた。聯合ニュースは撤去後、呉知事が群馬県と進行中の友好交流を見合わせるべきか悩んでいるとも伝えた。

 これについて山本知事は会見で、面会では追悼碑の話は出ていないと断言し、交流については「実務的に進まなかったところで、特に県政には全く何の支障もない」と話している。

 韓国でネットメディア「コリア・フォーカス」の編集長をしている徐台教(ソテギョ)さん(45)は、「韓国では非常に大きなニュースとして扱われた」と振り返る。韓国のインターネットでは「群馬をボイコットしよう」などの反応もあるといい、徐さんは「今回の件は韓国国民の群馬への拒否感につながるだろう」と言う。

 徐さんは新町(現高崎市)出身でもあり、高校卒業まで県内で過ごした。碑の撤去については、「ショックというより、知事に腹が立つ」。一方で、「(撤去前日の)28日には碑に多くの市民が集まっていたが、それでも『このくらいしか来ないのか』という人数だった。あまり県民は関心がないのかなと寂しい気持ち」とも話した。

 徐さんは朝鮮人が虐殺された関東大震災の時代の空気へと、社会が逆戻りしているように感じるという。「碑は過去を忘れゆく社会のブレーキとして存在していた」(川村さくら)

■当面の批判をかわそうとする姿勢

 早稲田大の金敬黙(キムギョンムク)教授(日韓関係)の話

 韓国メディアが大きく報じたのは、「日本に文句も言えないのか」という韓国政府への批判でもあった。ただ、当の韓国政府には「メディアや世論の当面の批判をかわせばいずれ落ち着くだろう」という姿勢が見える。

 日本政府は「撤去はあくまで群馬県の判断」という立場を貫いているが、韓国側は日本政府としてのスタンスと捉える。日韓は隣国として切っても切れない関係で、これまでも悪化と軟化を繰り返してきた。日韓首脳は近年、会談を重ねて友好姿勢を強調してきており、またいずれ回復するものなら発言してあえて傷を深くすることはしたくない、というのが両国の考えだろう。

 ただ、自民党の杉田水脈衆院議員が朝鮮人追悼碑について「噓(うそ)のモニュメント」などとネット上で発言したように、今後もこうした問題は続く可能性が高い。3月には岸田首相の訪韓が調整中とされており、4月は韓国の総選挙もあるなど、韓国側で対日姿勢が問われる場面も連続する。日本へ明確に態度を示さないままなら国民からの批判は高まり、韓国も対応を迫られるだろう。