(朝日新聞 2024/05/14)
 エネルギー政策をめぐる有識者会議の提出資料に中国国有企業のロゴが入っていた問題で、政府の調査が長引いている。資料を出した委員や所属団体は、他省庁の意見聴取の対象からもはずされた状態だ。議論の多様性を確保するためにも、「宙づり」状態の解消を急ぐべきだ。

 内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」の3月の会合で、大林ミカ委員の提出資料に中国の国家電網公司のロゴが入っていた。意見聴取に呼ばれた他省庁での資料にも同じロゴがあった。

 大林氏は自然エネルギー財団の事業局長を務める。財団は東京電力福島第一原発事故を受けてソフトバンクグループの孫正義氏の寄付で設立。再エネ普及に向けて専門的な報告書を多数まとめ、国際シンポジウムを開いてきた国内ではほぼ唯一の団体だ。

 大林氏によると、問題のロゴは財団のイベントに参加した国家電網の資料に含まれ、内部の勉強会で引用した際にひな型がパソコンに保存された。ロゴが白かったので白紙のひな型と勘違いしてその後の資料作成に使ったため、ロゴだけが残ったという。

 財団は記者会見で経緯を説明し、人的・資金的に中国政府や企業と関係がないとする報告書をまとめ、先月上旬に関係省庁に提出した。

それから1カ月以上経つが、内閣府は「調査中で終了時期は未定」とし、経済産業省や環境省は「懸念が解消するまで」意見聴取に呼ばない考えだ。

 中国の意向で日本の政策がゆがむことがあってはならず、政府の検証は必要だ。だが現時点まで、ロゴについては大林氏の単純ミス以外の要因は指摘されていない。

 財団は、再エネが特定国に依存しないことや国内の供給網の重要性を度々訴え、太陽光パネルの生産でウイグル少数民族への強制労働に言及した報告書もある。国際送電網構想をめぐる過去の国家電網との交流についても、国際間の連系自体は当時幅広く議論されており、財団が中国の利益のために活動していたことを示す材料とは言えない。

 大林氏はミスを謝罪し、委員も辞任したが、ネット上では根拠なく国籍や氏名まで疑うような誹謗(ひぼう)中傷が続く。再エネ普及に熱心な河野太郎規制改革担当相が主導した再エネタスクフォースは3月以降ストップしたままだ。

 エネルギー問題では、多様な観点からの幅広い知見を集めて議論することが欠かせない。政府は調査の結論を早急に出し、民主的な政策形成に向けた態勢を整えるべきだ。