(朝日新聞 2024/12/30)
韓国(かんこく)の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳(かいげん)」をめぐり、警察などの合同捜査(そうさ)本部は30日、尹氏に対する逮捕状(たいほじょう)を請求(せいきゅう)したと発表しました。韓国メディアによると、現職大統領に対する逮捕状請求は憲政史上初めてです。
合同捜査本部は内乱や職権乱用の疑いで尹氏の捜査を進めていますが、尹氏が3度にわたって出頭要請を拒(こば)んだため、逮捕状請求に踏(ふ)み切りました。ただ、裁判所が逮捕状を発付するかどうかは不透明(ふとうめい)です。
歴史を振り返ると、韓国の大統領経験者は過去に計4人が逮捕されています。逮捕以外にも、亡命、暗殺、自殺という末路をたどった大統領経験者もいます。なぜ韓国の歴代大統領による事件や不祥事が多いのか、解説します。

Q 韓国で大統領経験者が逮捕された例は?
A これまで4人の大統領経験者が逮捕されている。尹氏が逮捕されたら、5人目となるが、現職としては初めてのケースとなる。
全斗煥(チョンドゥファン)(1980~88年)、盧泰愚(ノテウ)(88~93年)の両氏はいずれも光州事件をめぐる内乱罪などに問われて有罪判決を受けた。前回の戒厳令の実施(じっし)は79~81年で、そのときに軍の実権を握っていたのが全氏だった。80年に戒厳令に反発する学生らが軍とぶつかった光州事件が起き、多くの市民が犠牲(ぎせい)になった。
李明博(イミョンバク)氏(2008~13年)は在任中に実兄が逮捕され、退任後の20年には自身も収賄(しゅうわい)などの罪で懲役(ちょうえき)17年の実刑(じっけい)判決を受けた。
朴槿恵(パククネ)氏(13~17年)は弾劾(だんがい)訴追(そつい)され、罷免(ひめん)後の17年、財閥(ざいばつ)から巨額(きょがく)の賄賂(わいろ)を受け取ったなどとして収賄などの罪で起訴された。計22年の懲役刑や罰金刑が確定し収監(しゅうかん)されていたが、21年末に赦免(しゃめん)された。
Q 他にはどんな事件や不祥事があった?
A 初代大統領の李承晩(イスンマン)氏(1948~60年)は、不正選挙をきっかけとする学生らのデモに発展した「学生革命」で、在任中に米国に亡命した。
朴槿恵氏の父である朴正熙(パクチョンヒ)氏(63~79年)は在任中、側近に暗殺された。
盧武鉉(ノムヒョン)氏(2003~08年)は不正資金疑惑(ぎわく)で検察当局の捜査を受ける中、自宅近くの山で自殺した。
Q 大統領の家族や親族、側近がからんだ事件もある?
A 金泳三(キムヨンサム)氏(1993~98年)は、企業(きぎょう)から資金を受領した次男が汚職(おしょく)事件で逮捕された。
金大中(キムデジュン)氏(98~2003年)も、次男、三男が汚職事件で逮捕されている。
前大統領の文在寅(ムンジェイン)氏(17~22年)をめぐっては、検察が文氏の娘(むすめ)の元夫が格安航空会社(LCC)に役員として採用された際の疑惑にからみ、娘の自宅などを捜索(そうさく)した。また、大統領時代に側近だった元法相が、子どもの不正入学をめぐる罪などで有罪となった。文氏自身も収賄の疑惑が浮上した。
Q なぜ不幸な末路をたどる人が多いのか。
A 韓国で大統領の権力は強大だ。国家元首であり行政のトップで、国軍の統帥権(とうすいけん)を持つなど、多くの権限がある。大統領の権力が強すぎるがゆえに、周りに利権を求める人が群がるという構図が生まれやすいと指摘(してき)されている。実際、親族や側近などが絡んだ不祥事が目立つ。保守と進歩(革新)の対立が激しく、大統領退任後に在任中の行為(こうい)が問題視され、有罪判決を受けるケースが多い。(藤原伸雄)

specificasia
が
しました