(朝日新聞 2025/04/01)
 韓国の憲法裁判所は1日、昨年12月に出した「非常戒厳」をめぐり国会から弾劾(だんがい)訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を罷免(ひめん)するかどうかの判断を、4日午前11時(日本時間同)に言い渡すと発表した。罷免されれば尹大統領は失職し、60日以内に大統領選が実施される。棄却や却下の場合には職務に復帰することになる。

 弾劾をめぐる与野党や世論の対立が深まるなか、憲法裁の判断は韓国の今後を大きく左右する。

 憲法裁の裁判官の定数は9人だが、1人が欠員のため8人で審理した。罷免の決定には6人以上の賛成が必要になる。

 弾劾審判では11回の弁論が行われ、2月25日に結審した。非常戒厳の宣布に重大な違憲・違法性があったかどうかをめぐり、野党議員らで構成する訴追団側は「憲政秩序への攻撃だ」として罷免を要求。尹大統領側は「正当で合法的だった」として棄却を求めた。

 罷免されれば、現職大統領としては2017年の朴槿恵(パククネ)氏に続き2人目となる。盧武鉉(ノムヒョン)氏も現職大統領として04年に弾劾訴追されたが、憲法裁は違法行為があったとする一方、罷免するほどの重大性はないとして棄却した。

 盧氏、朴氏の場合は結審から2週間以内に判断が示されたが、今回はより時間がかかった。世論調査機関・ギャラップが3月28日に発表した調査結果では、尹大統領の弾劾に賛成は60%、反対が34%。反対の世論も一定程度あることや、非常戒厳という事案の重さもあることから、憲法裁が判断に慎重を期したとの見方が出ている。

 憲法裁が宣告の期日を示したことを受け、保守系与党・国民の力の権性東(クォンソンドン)院内代表は「法理と良心に従って公正な判決が下されることを期待する」と述べ、「憲法裁の判決に従うつもりだ」と強調した。

 一方、進歩(革新)系最大野党・共に民主党の朴賛大(パクチャンデ)院内代表は、欠員の裁判官が補充されなかったことを「誠に遺憾」としたうえで、憲法裁に対しては「尹錫悦(大統領)の罷免によって民主主義の危機を解消してほしい」と述べた。

 尹大統領は昨年12月3日に非常戒厳を出し、同14日に弾劾訴追されて職務停止になった。弾劾訴追とは別に内乱を首謀した罪で起訴され、刑事裁判も進められている。(ソウル=貝瀬秋彦、清水大輔)

■真っ向から主張対立

 争点は「非常戒厳」の違法性 弾劾(だんがい)審判では訴追団側と大統領側の主張が真っ向から対立した。

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 憲法は、戦時やそれに準ずる国家非常事態の際に非常戒厳を宣布できると定めているが、訴追団側は今回はこの要件を満たしておらず、憲政秩序を転覆する行為だったと指摘。尹大統領が国会に軍や警察を送って機能の「無力化」を図り、政治家らの逮捕も指示していたと主張した。

 これに対し、尹大統領側は「巨大野党」が政府高官らを相次いで弾劾訴追するなどして国政をまひさせていることを国民に知らせ、不正選挙の疑いも調べるためのものだったと主張。国会への軍などの投入は秩序維持のためだとし、政治家らの逮捕指示も否定して、非常戒厳は大統領の権限の範囲内だったとした。

 証人尋問では、当時の陸軍特殊戦司令官が、尹大統領から直接電話で「(国会の)中にいる人員を引きずり出せ」と指示されたと証言。大統領側は指示を否定しており、こうした点を憲法裁がどう判断するかなどが焦点となる。(ソウル=貝瀬秋彦、清水大輔)