(朝日新聞 2025/05/07)
生徒の半分が中国籍という高校が千葉県鴨川市にある。留学生数を押し上げたのは、中国で過熱する受験戦争を避け、日本での大学進学や就職も視野に自由な教育を受けたい留学生側のニーズと、経営のために生徒数を確保したい高校側の狙いが一致したためだ。
房総半島の南東部に位置する鴨川令徳高校。教室の窓から太平洋が一望できる。ここに通う生徒100人(2025年4月現在)のほぼ半数が中国籍だ。
同校は、校舎の立て替えなど過度な設備投資と過疎化のあおりをうけ、12年ごろに当時の学校法人の経営難が表面化。18年ごろ、再建の柱の一つとして入試に留学生の枠を設けると、中国の生徒が殺到した。
「成績ばかりを重視する中国の教育は厳しすぎる。距離も文化も近い日本で教育を受けたいと思った」。広東省出身で同校2年の林家慶さんはそう語る。林さんは22年に中国の高校に進学。授業時間に加え、朝は午前6時から、夜は午後11時まで自習を強いられた。耐えられなくなり、1カ月で辞めた。留学の仲介業者から10校ほど日本の高校を紹介され、「景色がいい」という理由で同校を選んだ。
広西チワン族自治区出身で2年生の李欣蔓さんは、日本の大学に進学してキャラクターデザイナーになりたいという夢を描いている。「中国では競争が激しすぎて、夢を叶えられない」
■意見をはっきり、日本人にも刺激
日本留学のニーズは強い。同校の和田公人理事長によると、仲介業者から「何十人単位で受け入れてくれないか」という依頼もある。同校では外国籍の生徒の割合が半分を超えないようにしている。日本語を使う環境を校内で保つためだ。日本での就職を視野に入れている生徒は多い。同校は、日本社会に順応できる力を養いたいとしている。
同校の方針は、外国籍の生徒を「特別扱いはしない」。校内で中国語が併記されているのは校則など限られたもののみ。国語以外は、日本人生徒と一緒に授業を受け、寮長も担う。
ただ、日本語の壁は厚い。明治大でITを勉強したいという2年生で重慶市出身の林軒楽さんは「日本語の会話力が足りない」と悩む。大学受験では「総合型選抜」「留学生入試」「一般入試」の順に選ぶ生徒が多いが、いずれも日本語能力試験2級のレベルが求められる。
日本語をどう身につけさせるかは学校側の課題でもある。日本語を使わざるをえない環境にするため、同校では「東京に遊びに出る時はスマートフォンを持っていかせない」などの工夫も考えているという。
留学生受け入れで、好影響も生まれた。はっきり意見を言う中国人生徒から日本人生徒が刺激を受けることも多いという。 留学仲介業の袁列さんは、中国から日本の高校へ留学が増えた原因の一つに、18年ごろから中国で始まった政策の影響を挙げる。大学などを目指す普通高校コースに進めるのは「半分ほど」と言われ、ほかは職業学校などへと進む。普通高校に進めなかった人や、過度な競争に嫌気がさした人が日本に渡るケースは多いという。
留学生受け入れで、好影響も生まれた。はっきり意見を言う中国人生徒から日本人生徒が刺激を受けることも多いという。 留学仲介業の袁列さんは、中国から日本の高校へ留学が増えた原因の一つに、18年ごろから中国で始まった政策の影響を挙げる。大学などを目指す普通高校コースに進めるのは「半分ほど」と言われ、ほかは職業学校などへと進む。普通高校に進めなかった人や、過度な競争に嫌気がさした人が日本に渡るケースは多いという。
■少子化を背景に、受け入れ校拡大
袁さんは「ここ10年間で日本の受け入れ先は10倍に増えた」と言う。日本の私立高校で事情を聞いた。
神戸山手グローバル高校(神戸市)は、今年度に初めて新入生の3割強にあたる留学生を受け入れた。平井正朗校長によると、「国際都市である神戸にふさわしい学校づくり」を強化する方針を掲げたほか、少子化により「日本人だけではやっていけない」という理由もあった。
明徳義塾高校(高知県)は、1991年から日本語コースを設置し、早期から留学生を受け入れた学校の一つだ。中国籍の留学生が多い環境を生かし、日本人が中国語を学べるコースも97年に設けた。現在は生徒の3割強にあたる約300人の留学生を受け入れている。今後はさらに拡大を図り、「半分が留学生の環境をつくりたい」という。(岩田恵実)

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