(朝日新聞 2025/05/16)
中国海警局のヘリが今月3日、沖縄県・尖閣諸島周辺の領空を侵犯した。東シナ海での中国の圧力が一段と強まった。日本は無用な挑発を避けつつ、実効支配を続けていく必要がある。
中国による尖閣上空の領空侵犯は無人機を含め3度目とされる。今回は日本の民間小型機が上空を飛行したことに即応し、中国が尖閣周辺を管理しているかのような行動をとった点に特徴がある。
海上では中国海警局の公船が尖閣接続水域に毎日数隻入り、領海侵入を試みることもある。尖閣を自国の領土と見なす中国が既成事実を積み重ねようとしているのだろうが、全く受け入れられない。
日本の民間機が必要な手続きをとって日本の領空を飛行することは、何ら問題ない。しかし、尖閣をめぐり対立する日中間の緊張が続く中では、話は別だ。
飛行した男性は、尖閣を守る海上保安庁職員らに「エールを送る」ことが目的だったと話している。だが、海上保安庁は事前に飛行中止を要請していた。このような行動は問題の解決につながらないばかりか、不測の事態を招きかねず危険だからだ。
この男性は、10年前に尖閣上空を飛行したときは無事だったと振り返っている。しかし、当時に比べて中国側は尖閣周辺の海域や空域での対応力を格段に強めている。
結果的に中国がヘリを出す口実を与えてしまった面がある。飛行は控えるべきだったのではないだろうか。
日本は1895年に尖閣諸島を領土に編入。第2次大戦後の米国施政下にあった時期を除き、実効支配してきた。
これに中国は異議を唱えているが、そうした主張を始めたのは、尖閣周辺に海底石油資源の可能性が報告された後の1971年12月のことで、それまで何も言っていなかった。「明代から中国の海上防衛区域」だったとして一貫性を装う論法は疑わしい。
尖閣をめぐる対立を理由に日中間の外交を停滞させるべきではない。とはいえ日本社会における中国への警戒感の原因の一つに、尖閣をめぐる中国側の威圧的行動があるのも事実だ。
気がかりなのは習近平(シーチンピン)国家主席自身の考えだ。南シナ海の岩礁の軍事拠点化も、海警局の態勢強化も、習政権下で進んだ。「海洋強国」への志向は強いとみられている。
2019年6月、当時の安倍晋三首相と習主席が大阪で会談し、東シナ海を「平和、友好、協力の海」にすることで合意している。そのことを忘れてもらっては困る。

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