(長崎新聞 2025/11/20)
2026年度に完了予定の長崎原爆資料館(長崎市)の展示更新を巡り、市は19日、具体的な展示内容をまとめた実施設計案を同館運営審議会(調漸会長、20人)に中間報告した。旧日本軍による「南京事件」の記述を維持するとした市の案に、一部の委員が「事件はなかった」と反対し、議論は一時紛糾した。
現在の展示では、日中戦争などに関する年表に「南京占領、大虐殺事件おこる」との表記があり、賛否両論がある。市は10月、識者でつくる同館運営審議会小委員会に「多数の民間人や捕虜を殺害する南京事件」と記述する素案を示していた。

19日は審議会本体の会合があり、リモートも含め18人の委員が出席した。市は素案に加え、小委員会の意見などを紹介。これに対し、「長崎の原爆展示をただす市民の会」代表の渡邊正光委員は「南京事件は起きていない。展示に出さないでほしい」と主張した。
他の委員からは異論が相次いだ。仏教大名誉教授の原田敬一委員は複数の歴史資料を踏まえ、南京事件は「あった」と反論。「(展示から)消してしまうと、世界の人は知っているのに、日本だけは隠しているということになる」と指摘した。
市の中間報告によると、1945年の米国による人類初の核実験で使用された原爆の模型や、爆心地周辺の復興をたどるジオラマなどを展示する。拡張現実(AR)も活用し、新たに休憩スペースを設ける。
審議会や今後の市議会での議論などを踏まえ、市は本年度中に最終案をまとめる。
◎他テーマに時間割かれず…市担当者、複雑な表情
「南京事件」を巡る展示の是非で紛糾した19日の長崎原爆資料館運営審議会。長崎市の担当者は、開館以来初めてとなる大がかりな展示更新計画の中で、南京事件ばかりが注目され他のテーマに議論の時間があまり割かれなかったことに、複雑な表情を浮かべた。
市によると、事件を巡る記述の素案は教科書や外務省の公式見解を踏まえて作成した。だが、19日の審議会会合では保守系団体代表の委員が「殺害や事件は起きていない」との持論を繰り返し展開。複数の委員が学術的なデータなどを根拠に「事件はあった」と反論し、被爆者の委員が「他の方の意見に聞く耳を持ってください」と諭す一幕もあった。
別の委員は南京事件と原爆投下の関連性を疑問視。市の担当者は「原爆投下されたのは戦争があったからで、第2次世界大戦や日中戦争は必要な項目。日中戦争を解説する中で、南京事件というのは重要な出来事だと私どもは捉えている」と説明。その上で「日本が悪いことをしたから、原爆が落とされたという『原爆容認』とされるような展示になってはいけない。注意しながら展示を構成したい」とした。
2時間強の会合のうち、約30分が南京事件を巡る議論に費やされた。市の担当者は終了後、「本来はいろいろな意見をいただきたかったが、核兵器や放射線の影響に関する展示についてはあまり議論にならなかった」と残念そうに振り返った。

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