(日本経済新聞 2026/01/30)
日本と韓国はともに米国を安全保障の軸に据えつつ、頼りきれない部分を自助努力で埋める方策を探る。小泉進次郎防衛相は30日、神奈川県横須賀市で韓国の安圭伯(アン・ギュベク)国防相と会談した。中朝などを念頭に置いた日米韓連携の強化や日韓両部隊の共同訓練の拡充に合意した。
安氏の来日は中谷元前防衛相による2025年9月の訪韓に続く相互訪問の一環だ。小泉、安両氏は防衛相会談を毎年実施するとも一致し、意思疎通をより緊密にする姿勢を見せた。
小泉氏は会談で「両国を取り巻く地域の安保環境が厳しさと複雑さを増すなか、日韓、日米韓の防衛協力がかつてなく重要となっている」と伝えた。米国を同盟国とする国同士、米国との協力と並行して独自の防衛力強化を模索する。
自衛隊と韓国軍は25年秋以降、交流が一時停滞した。航空自衛隊は11月に韓国空軍の飛行隊「ブラックイーグルス」へ予定していた給油支援を中止した。同飛行隊が島根県の竹島(韓国名・独島)周辺で飛行訓練したと判明したためだ。
日本は領土問題の争点化を避け、協力再開の道筋を残した。給油支援は会談前の1月28日に実現した。
小泉、安両氏は会談で海上自衛隊と韓国海軍による海上での救難捜索訓練を実施するとも申し合わせた。
小泉、安両氏は会談で海上自衛隊と韓国海軍による海上での救難捜索訓練を実施するとも申し合わせた。
米国を視野に入れた日韓の防衛力強化は、両国の防衛相・国防相が訪問した場所に表れている。今回の横須賀と中谷氏が25年9月に視察した京畿道平沢(ピョンテク)市はそれぞれ日米、米韓の軍事施設が集まる。
横須賀は海自が主に太平洋側の防衛を担う拠点だ。護衛艦隊や潜水艦隊が司令部を置く。警戒監視に向かわせるため艦艇に直接指示を出す自衛艦隊司令部もある。艦艇運用の中枢といえる。
米海軍は原子力空母「ジョージ・ワシントン」の母港として使う。同艦は戦闘機を遠方まで運び海空戦力を展開する空母打撃群の中核を担う。
24年には韓国の強襲揚陸艦「マラド」も寄港した。小泉氏は記者団に「日韓、日米韓の防衛協力が実践される現場だ」と強調した。
韓国の平沢は、黄海を挟んで中国大陸と対峙する。中国と北朝鮮の海上活動に対処する韓国海軍第2艦隊が司令部を置く。在韓米軍基地も同地域に位置する。日韓は米国の軍事的プレゼンスの助けも得ながら、これらの拠点で中朝へにらみをきかせる。
中国の海洋活動の拡大は日韓双方にとって懸念材料だ。
日本周辺では25年12月に空母「遼寧」が太平洋まで進出し、艦載機が空自の戦闘機にレーダー照射する事案が起きた。中韓の排他的経済水域(EEZ)が重なる暫定措置水域付近にブイを置いてきた経緯もある。
核・ミサイル開発を進める北朝鮮は26年に入ってから日本海に向けて複数発の弾道ミサイルを発射した。ミサイルの情報は日韓が発射地点と落下地点の観測を補い合い、米国も交えた3国でリアルタイムに共有する態勢を取る。
日韓の共通の悩みの種が米国からの防衛費の増額の要求だ。米国は23日に発表した国家防衛戦略(NDS)に同盟国へ国防費を「国内総生産(GDP)比5%」まで引き上げるよう求める方針を明記した。
高市早苗政権は25年度に当初・補正予算を合わせ、防衛費をGDP比2%に相当する11兆円程度まで増やした。安保関連3文書の改定にあわせ26年中に新たな防衛費水準を決める。
基準となる名目GDPはインフレの影響で24年度に640兆円ほどまで膨らんだ。仮に米国が求める5%の水準を単純計算であてはめると30兆円を超え、政府の当初予算の3割近くに相当する。規模の議論と同時に安定財源の確保が欠かせない。
韓国は既に国防費をGDP比3.5%まで積み増すと表明し、米国も評価していた。米国がNDSでさらに5%目標を打ち出したため、追加の議論が求められる。

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