お米が安い韓国、日本の約半額でも「少し高い」…どんな食糧政策をやっている? そこには特殊事情も(東京新聞 2026/02/18)
隣国韓国のコメ価格が、高騰が続く日本の半額程度になっている。気候や生産品種の似通う両国で、価格に差がついているのはなぜか。現地の農家や専門家を取材し、その理由を探った。(上井啓太郎)
◆10キロで3万2000ウォン=約3400円
昨年10月末、韓国・ソウルの中心部から60キロほどの距離にある仁川(インチョン)広域市の江華島(カンファド)。山の麓に、ひと月ほど前に稲刈りを終えた田んぼが広がる。家々や店舗が点在する光景は日本と変わらない。近くのスーパーに積み上がったコメの価格は10キロで3万2000ウォン(約3400円)と、日本と比べて大幅に安い。高級品種も、10キロで4万5000ウォン(約4800円)ほどだった。
だが、ここで農業を営む劉永錫(ユンヨンソク)さん(61)は「現在の(韓国の)コメの価格は少し高いぐらい」と語る。農家にそんな「ゆとり」をもたらしているのは「手厚い補助金」だと、韓国経済に詳しい亜細亜大アジア研究所の奥田聡教授(63)は指摘する。
◆潤沢な補助金を投入
奥田氏の試算によると、韓国で農家の所得を補填(ほてん)する補助金は、昨年で約2兆4000億ウォン(約2500億円)。韓国で1年に生産されるコメの生産者価格ベースの生産金額は約6兆ウォン(約6400億円)で、畑作に対するものを除くなど調整すると、生産金額の3割程度の補助金が投入されている計算になるという。
一方、日本では、同様に算出したコメの生産金額は約4兆円。稲作農家に対する補助金は約5300億円で、補助率は13%程度にとどまる。奥田氏は「韓国にも日本と同じくコメからの転作奨励はあるがグリップが弱く、基本的には『コメを作ってください』という体制だ」と話す。韓国統計庁の資料によると昨年12月時点の玄米20キロの平均価格で5万6974ウォン(約6000円)。同月の日本では玄米60キロの取引価格が3万6075円で、20キロ当たりでは1万2000円余りと、韓国の約2倍となっている。
◆「日本はコメの減産をやりすぎてしまった」
奥田氏によると、韓国は北朝鮮との休戦状態で準戦時体制にあるため、経済安全保障を重視していることも背景にあるという。奥田氏は「戦争になった場合、十分なコメがないと飢餓が発生する」と指摘。さらに、韓国でも食生活の洋風化が進み、1人当たりのコメの消費量は減少傾向にあることから「コメ余り」になりやすい環境は整っている。
その韓国でも、農業機械の価格上昇や不作で、2025年産米は一時、前年比3割ほど値段が上がったが、韓国政府は買い上げていたコメを放出し米価引き下げに走った。日本でも備蓄米が放出されたものの、米価の高止まりが続いている。
奥田氏はその背景を「日本の米価高騰の原因は、コメの減産をやりすぎてしまったことにある」と分析。「今の制度のままでは、長期的に日本の農業は維持不能になるのでは。韓国の手厚い補助は一つのモデルになり得る」と語った。

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