(毎日新聞 2026/03/23)
韓国の与党「共に民主党」が、国会での過半数という「数の力」を使って司法制度を変えようとしている。三権分立の原則から逸脱しないか憂慮を禁じえない。
柱の一つが「法歪曲(わいきょく)罪」の導入だ。判事や検事、警察官が法を故意にゆがめて解釈した場合に処罰する。最高刑は懲役10年だ。
問題は、規定があいまいなため恣意(しい)的に適用される余地があることだ。
政治家が関係する事件で、判事や検事らが政権にそんたくする恐れが指摘される。最高裁は「権力が司法を掌握する手段として悪用される可能性がある」と懸念を表明してきた。
与党に近い弁護士団体などからも「熟議が必要だ」という声が出た。だが与党は先月末、主要野党がボイコットする中で法案採決を強行し、可決に持ち込んだ。
最高裁への大統領の影響力強化につながる法案も可決された。最高裁判事を14人から26人に増員する。定年などで退任する判事の後任を含め、李在明(イジェミョン)大統領が22人を任期中に任命することになる。
韓国では上告される裁判数が増え続けており、審理の遅れが問題となってきた。与党はそれに対応するものだと強調している。
一方で野党は、背任や公職選挙法違反の罪などで被告となっている李氏の救済策だと非難する。退任後に再開される公判への備えという見立てだ。
尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領に任命された最高裁長官への報復的な色合いもうかがえる。
最高裁は昨年6月の大統領選前、尹氏と対立してきた李氏に不利な司法判断を下した。与党の有力議員らは、長官の辞任を公然と要求している。
李氏の認識にも疑問を呈さざるを得ない。選挙で選ばれる大統領と立法府は司法府に優越するという考えを示してきた。
だが三権分立は、互いにけん制し合うことで権力の暴走を防ぐものだ。司法府は立法府に従属するわけではない。司法の独立が損なわれれば、国民の権利が侵害されかねない。
司法制度を巡る対立は、ただでさえ深刻な党派対立に拍車をかける。李氏には、社会の分断を広げないための賢慮を求めたい。

specificasia
が
しました