(朝日新聞 2026/09/05)
 1923(大正12)年の関東大震災直後、旧片柳村(現さいたま市見沼区)で自警団に殺された朝鮮人青年の姜大興(カンデフン)さんを追悼する会が4日、姜さんの墓がある見沼区の常泉寺で開かれた。韓国で、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の真相究明を図る特別法の施行を年末に控える中、参列者らが姜さんの死を悼んだ。

 「大宮市史 別巻一」などによると、姜さんは東京方面から避難する途中、片柳村で刀ややりを持った地元の自警団に襲われて亡くなった。24歳だったとされる。事件前には、県が郡役所を通じて各町村側に朝鮮人への警戒を求める指示を出していた。県庁などが朝鮮人に襲撃されているとの流言も広がる中で事件が起き、住民5人が有罪判決を受けた。常泉寺の墓は、村の人たちがつくったという。

 追悼会は日朝協会埼玉県連合会が2007年から開いてきた。震災から100年の節目である23年に市民らが実行委員会をつくり、以降、連合会と共催で行っている。

 この日の追悼会には、連合会や実行委員会の関係者ら約100人が参列し、姜さんの墓前で手を合わせた。本堂では大野元裕知事と清水勇人さいたま市長の追悼メッセージが読み上げられた。ただ、震災や震災後の混乱による犠牲者を悼むといった内容で、「朝鮮人」「虐殺」の言葉はなかった。

 この日は姜さんのおい姜武中(カンムジュン)さんによるビデオメッセージも上映された。ドキュメンタリー映画を制作している在日朝鮮人2世の呉充功(オチュンゴン)さん(71)が韓国で撮影した。武中さんは来日を望んでいたが、体調を崩し実現しなかったという。

 韓国では25年12月、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の真相を究明し、犠牲者の名誉を回復することを目的とする特別法が公布され、今年12月31日に施行される。9人の委員で構成される委員会を3年間、最大5年間置き、資料の収集や分析、犠牲者や遺族の審査、遺骨の発掘や返還などを進める。

 日本の市民社会と連携し、関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相究明に取り組む韓国の市民団体「1923韓日在日市民連帯」の金鐘洙(キムジョンス)さんは、日本の市民団体などが積み重ねてきた調査成果を引き継ぐ必要があると強調。「これまで積み重ねてきた成果と、解決できなかったことを整理し、(特別法に基づいて)きちんと真実の究明ができるようにすることが課題だ」などと話した。(廉翔云)