(朝日新聞 2026/09/17)
 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の実施状況を調べている日米韓など有志11カ国の「多国間制裁監視チーム(MSMT)」は16日、北朝鮮の海外労働者に関する報告書を公表した。労働者のほとんどは中国とロシアに集中し、ロシアへの派遣が増加傾向にあると指摘。ロシアでは軍事用ドローンの製造にも従事しているとした。

 報告書では、北朝鮮は少なくとも17カ国に推定3万5600~10万1280人の労働者を派遣し、2025年には、推定4億5千万~8億ドル(約700億~1200億円)の収入を得ていた可能性があると指摘した。労働者の大半は、中国(2万~7万人)とロシア(1万5千~3万人)に集中しており、学生ビザや短期研修名目で入国・就労しているとみられる。

 北朝鮮は海外労働者の収入の80~90%を没収し、没収額が収入を上回って個人が負債を抱えるケースもあるとした。

 北朝鮮はウクライナ侵攻を続けるロシアへ派兵し、関係を強化している。報告書は24年以降、労働者の派遣先が、中国からロシアに移っているとの情報があると指摘。ロシアの賃金が中国より高いことに起因しているという。ロシア国内での北朝鮮労働者の年間平均賃金は推定7500ドル(約120万円)で、業種によっては中国内で得る賃金の最大5倍に達する可能性がある、としている。

 MSMTによる報告書は3回目。MSMTは国連安全保障理事会のもとで北朝鮮制裁の監視を担っていた「専門家パネル」が、ロシアの拒否権行使で24年に活動を終えたことにより、代替措置として発足した。安保理決議は19年までに北朝鮮労働者を原則送還するよう国連加盟国に義務付けている。

 日本の外務省関係者は「制裁を風化させないためにも、違反は白日の下にさらし、着実な実施を求めていくしかない」と話す。(小木雄太)