「攻めの農業」で懸念される、ある死角を取材しました。 
(FNN/ニュースジャパン 2013/06/11)






日本で開発された「レッドパール」という品種のイチゴがあります。しかし、あるきっかけをもとに、かつて、このイチゴの不法栽培が、韓国中で横行したことがありました。

安倍政権が掲げる「攻めの農業」で懸念される、ある死角を取材しました。

福岡・筑紫野市にある農業総合試験場。東京ドーム29個分ほどの敷地内で、猛暑に強いイネなど、福岡オリジナルの農作物を開発している。有名なイチゴ「あまおう」も生み出したこの試験場で、現在、力を入れているのは、10年という長い年月をかけて開発した、世界初の種のない柿「秋王」。

しかし、2013年4月、農家に提供していた125本の苗木のうち、19本が盗まれるという事件が起きた。世界初だけに、国外での不法流通が懸念されている。

福岡県農業総合試験場の冨永修子氏は「国内の対策は、監視の目も徹底していますし、情報も即入ってきますので、即対応するという態勢をとっております。国外の場合、やはり時間的なものとかですね、若干そこは、国内ほどはできない」と話した。

いったん国外に流出すると、取り返しがつかない事態になる。

その実例が、過去に起きていた。韓国の市場で、イチゴが売られている。一時期、韓国のイチゴ市場で、8割を占めるようになったイチゴがある。

それが、日本の品種「レッドパール」だった
。

愛媛県のイチゴ農家・西田朝美さん(90)は、レッドパールを6年かけて開発した、まさにその人だった。実は、西田さんは、およそ20年前、ある韓国人の農業研究者だけに、レッドパールの苗を5年間、有料で栽培できる条件で渡す契約をした。

西田さんは、最初は全く取り合わなかった。しかし、西田さんは「『これは絶対渡せない』と言うたけど、『何とかしてくれ』ともう、拝むようにして言われて。これもう、あんまり熱心なもんで」と話した。西田さんの持つ契約書には、その人物以外とは許諾契約しないと、確かに書かれていた。

なぜ、韓国で一時、8割を占めるまでになってしまったのか。

西田氏が契約した、金重吉(キム・チュンギル)氏(80)を、韓国で直撃した。

金氏は「日本よりもおいしいよ」と話した。日本語が流ちょうな金氏は、韓国南部にある晋州(チンジュ)市で、レッドパールを、現在も栽培している。日本の農業技術を、これまで研究してきた。金氏は「この品種(レッドパール)は良いと思って、育成者である西田さんに会って、『栽培させてほしい』とお願いし、契約をして、(韓国に)持ってきた」と話した。西田氏と契約したことを認めたうえで、金氏は「(わたしが苗を譲った人が)無分別に分け与えたり、売ったりしたため、広まってしまった」と証言した。

知り合いなどに、苗を譲り渡した結果、韓国国内でレッドパールが広まってしまったと、金氏は説明した。

日本では、農作物の著作権を守るべく、品種登録制度が法律で整備されており、通常、25年間は使用料を取ることができるが、韓国国内で不法に栽培されてしまったレッドパールについては、西田さんのもとに使用料は入らなかった。

西田さんは「日本人の考えで、それやったもんだから。やっぱり、わたしも、うかつでした、それは。良心的にやってくれると、思っていたんですけどね」と話した。

現在は、韓国でも品種登録制度ができた。金氏によれば、韓国の当時の制度上、使用料を支払う仕組みがないまま、苗が広まってしまい、金氏自身も法制度を整えるよう、韓国当局に訴えたこともあるという。

このレッドパールの権利は、2008年11月で切れた。

そして、新たな問題も発生している。韓国のイチゴで最も多く出回っているのが、「ソルヒャン」という品種だが、元は、日本のイチゴ同士をかけ合わせて作られたものだという。レッドパールと同時期に、「章姫」など、日本のほかの種類のイチゴも流出しており、それらをかけ合わせることで、韓国国内では、ソルヒャンという韓国産のイチゴが作られていた。

ソルヒャンは現在、およそ1,000億円の韓国のイチゴ市場で、7割を占めているが、かけ合わせた品種のため、品種登録の対象外で、日本側にお金が入る仕組みがない。

こうした問題は、日本の農産物食品の輸出倍増戦略を発表している安倍政権にとっても、見過ごせないものとなる。

現在、日本は農作物の知的財産権を守るために、「ユポフ91年条約」と呼ばれる国際条約を、51の国や地域と結んでいる。韓国も、2002年にこの条約を批准して、猶予期間を経て、イチゴなど全ての植物が保護対象になったのは2012年、つい最近のこととなる。農水省によると、この条約に加盟していない国へ、一度、農作物が流出してしまうと、打つ手がないということで、安倍首相が掲げる「攻めの農業」には、緻密な戦略も求められる。



農業政策は支援ばかりでなく、こうした事例をどんどん紹介することも必要ですね。


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