(日本経済新聞 2016/1/19)
香港の書店関係者5人が相次ぎ失踪した事件で、香港の警察当局は18日深夜、中国広東省の公安当局から書店の株主の李波氏(65)について「中国本土にいる」との連絡を受けたと発表した。中国政府は書店関係者が自らの意思で中国本土に入ったと強調して事件の幕引きを図る構えとみられるが、香港の民主派は「中国側の説明には不自然な点が多い」と反発している。
中国公安当局が、李氏が中国本土にいることを認めたのは初めて。広東省の公安当局からの連絡には、香港政府の関係機関にあてた李氏の直筆の手紙も同封されていたという。香港警察はさらに事情を調べるため、李氏との面会を求めている。
この事件では、習近平国家主席を批判するなど中国本土で販売が禁じられている書籍を扱っていた銅鑼湾書店の大株主や店主が昨年10月以降、広東省深圳やタイで次々と行方不明となっている。
李氏は昨年12月30日に香港の倉庫から姿を消したが、出入境管理局には香港を出た記録が残っておらず、中国の公安当局に連行されたとの観測が広がっていた。
李氏は昨年12月30日に香港の倉庫から姿を消したが、出入境管理局には香港を出た記録が残っておらず、中国の公安当局に連行されたとの観測が広がっていた。
また、国営新華社や中国中央テレビは17日、タイで失踪した別の株主の桂民海氏が2003年に浙江省で起こした飲酒運転による死亡事故の罪を償うため、中国の公安当局に自ら出頭したと伝えた。
外交・防衛を除く幅広い分野で自治を認める「一国二制度」の下では、中国の公安当局には香港で法律を執行する権限が認められていない。香港の民主派は「言論の自由を抑圧する試みだ」と強く反発しているが、中国側は書店関係者らが自らの判断で中国本土に入ったと説明し、香港で捜査活動を展開したとの見方を否定するとみられる。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2016/01/19)
中国当局は国営テレビで17日放映された告白を皮切りに、香港の書店関係者5人の最近の失踪の経緯を説明し始めた。この件は世界的な警鐘を鳴らした。というのも、これら書店関係者たちは、本の中で中国指導者批判を展開してきたが、法的な管轄範囲を超えて香港とタイで活動している中国の国家工作員によって拉致されたとみられるからだ。ここに来て中国当局は、最初の逮捕者について、2004年にさかのぼる飲酒運転の死亡事故に関係したものだと述べている。
それが、逮捕された桂民海氏がビデオの中で自白している犯罪内容だ。桂氏は昨年10月、タイにある自宅から姿を消した時、習近平国家主席の私生活に関する本を完成させるところだった。桂氏は17日、テレビ放映された告白の中で、自らの意思で出頭したと涙ながらに述べ、飲酒運転で科された執行猶予付き有罪判決の条件に反して中国を離れたことに関し「進んで罰を受けるつもりだ」と語った。
桂氏は、中国生まれのスウェーデン市民だが、「今なお中国人であると真に感じている」と述べ、「スウェーデン側」が「私自身の問題を私自身で解決させてくれるよう望む」と語った。
桂氏は、中国生まれのスウェーデン市民だが、「今なお中国人であると真に感じている」と述べ、「スウェーデン側」が「私自身の問題を私自身で解決させてくれるよう望む」と語った。
「でまかせの告白」として、これはとりわけ説得力がない。桂氏は、タイのリゾートタウンであるパタヤから何の前触れもなく姿を消した。そして「国境なき記者団」によれば、その後、中国当局の手当てしたチャーター便に搭乗した。その際、タイ当局の承認を得て本国に送還された他の中国人反政府活動家たちと共に送還されたという。桂氏のタイのアパートを撮影したビデオでは、同氏の失踪後、正体不明の中国人の男たちが桂氏のコンピューターを捜索している場面が映されていた。10年前の飲酒運転の捜索としては奇妙だ。
英国に住んでいる桂氏の娘は、2004年の飲酒運転の一件について何も知らないと述べ、桂氏と面会することも同氏のための弁護士を雇うことも禁止されていると語っている。彼女によれば、スウェーデン当局者は桂氏の苦境を「重大に受け止めている」と述べているという。彼女はこの当局者に対し、中国まで同行してほしいと要請した。
17日のテレビ放映直後、親中国政府系のウェブサイトは、香港書店のもう一人の関係者で12月30日に消息を絶った李波氏が自分の妻宛ての手紙で、桂氏は「道徳的に受け入れられない人間」だとし、桂氏の捜査で中国本土の当局に協力していると書いていると報じた。これも国家プロパガンダの臭いがする。
李氏は自らの失跡の前、桂氏や他の行方不明になった同僚たちを擁護していた。李氏は、書店に関係した著者たちは皆、恐怖を感じていると述べながらも、香港にいる限り自分は安全だと思うと語っていた。そうした彼の自信は根拠のないものだったことが判明した。その数日後に香港市中心部にある倉庫から姿を消したからだ。
英国のハモンド外相は今月、李氏を香港から拉致したことは、旧英国植民地である香港の市民的自由(公民権)に関する中国の条約上の約束に対する「言語同断の侵害」だと批判した。これに対し中国の王毅外相は、桂氏の告白のプレビューの中で、李氏は「まずもって中国市民だ」と反論した。
行方不明の書店関係者たちの報道が浮上した際、一部には「一匹おおかみ」的な中国の工作員が北京の上層部の承認もなく、拉致事件を引き起こしたのかもしれないと憶測する向きもあった。しかし、テレビ放送された桂氏の自白は、中国当局が承知し共謀していたことをうかがわせる。一連の件は、ジャーナリズムや香港の自治、そして他の主権国家の市民である海外在住中国人の権利に対する中国の侵害がエスカレートしていることを示している。
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権力闘争がわかれば中国がわかる ―反日も反腐敗も権力者の策謀
福島 香織

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