(読売新聞 2016/09/20)

 中国の独善的な海洋進出を既成事実化させてはなるまい。海上保安庁の警備態勢を戦略的に増強することが重要だ。

 尖閣諸島周辺で、中国海警局の公船による領海侵入と接続水域進入が続いている。安倍首相が5日の日中首脳会談で自制を求めたのにもかかわらず、11日には公船4隻が領海に入った。

 南シナ海の領有権問題で、日本が国際法の順守を中国に要求していることへの意趣返しとの見方もある。そうだとすれば、全くの筋違いであり、看過できない。

 中国公船の接続水域航行は、2012年9月の尖閣諸島の国有化以降、常態化している。今年8月には、最大15隻の公船と200~300隻の漁船が集結した。昨年12月からは、機関砲のようなものを搭載した公船も増えている。

 日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国公船の乗員が中国漁船に乗り込むケースが再三、確認された。中国の法律に基づく立ち入り検査などの可能性がある。

 EEZ内では、漁船操業は日中漁業協定で可能だが、中国政府が漁業に関する管轄権を行使することは国際法上、できない。

 こうした行為の既成事実化を防ぐため、海保の巡視船は常時、中国公船の動向を監視し、迅速かつ適切に警告せねばならない。

 偶発的な衝突や漁民らの不法上陸を防ぐには、相手の船より数的優位を確保することが肝要だ。

 しかし、海保の現状は、必ずしも十分とは言えない。

 海保は今春、尖閣諸島周辺を警備するため、巡視船12隻の専従体制を整えた。中国公船5隻程度を想定したものだ。より多数の公船が来た際は、全国から巡視船の応援派遣を受け、対応している。

 中国海警局はこの3年で、大型船を3倍増の120隻にした。19年には135隻に増やす。

 海保が保有する大型巡視船は62隻にとどまる。16年度第2次補正予算案に3隻の新造費390億円を計上した。今後も、計画的に増強することが求められよう。

 要員の確保も急務である。

 海保の定員は約1万3500人で、尖閣諸島国有化前より約800人増員した。元海上保安官の再雇用も進めている。保安官の養成には数年を要する。将来を見据えて早めに手を打つ必要がある。

 不測の事態を避けるため、中国当局とのパイプ作りも大切だ。

 海保と中国海警局は昨年、双方に連絡窓口を設けたが、あまり機能していない。粘り強く意見交換を重ねたい。


(朝日新聞 2016/09/21)

 海上保安庁の巡視船艇366隻のうち、約35%の129隻が耐用年数を超えていることがわかった(平成27年度末基準)。漁業管轄権の200カイリへの拡大で1970~80年代に大量に建造した船が、一挙に更新期を迎えたためだ。エンストや水漏れなど老朽化は深刻だが、近年は沖縄県・尖閣諸島の警備に予算を優先配分せざるを得ず、更新が後回しになっている。

 海保が保有する巡視船艇(今年4月現在)は、外洋を航行できる中~大型の巡視船が128隻、沿岸をカバーする小~中型の巡視艇が238隻ある。耐用年数はいずれも20~25年。特に巡視艇の老朽化が深刻で、約40%が耐用年数を過ぎている。このままでは、5年後には巡視艇の約60%(142隻)、巡視船の25%(32隻)、船艇全体の約5割が老朽化する。

 現役の船艇で最も古いのは横須賀海上保安部所属の巡視船「たかとり」(325トン、全長46・5メートル)で、船齢は38年、耐用年数を13年も過ぎている。

 海保の業務は、海難救助から違法な漁の取り締まりまで多岐にわたる。ただ、船が耐用年数を過ぎると故障が増え、修理にも時間がかかる。機器が旧式で航行の速力が落ち、部品の腐食が進む。海保は古い船が同じ地域に固まらないよう配置に工夫しているという。

 老朽化が進んだ背景には、海保の活動領域の拡大がある。77年の領海法施行で領海が3カイリから12カイリに広がり、同年施行の「漁業水域に関する暫定措置法」で漁業管轄権の及ぶ範囲が200カイリになったことを受け、海保は80年代にかけて100隻超を建造した。

 これらの更新時期がこの十数年で一挙に訪れたが、造船所の能力や予算の制約で更新は追いついていない。さらに、尖閣諸島の魚釣島などを国有化した12年以降、中国公船が周辺海域で活動を活発化したことで、尖閣警備に専従する最新鋭の船の建造が最優先となり、老朽船の更新に予算が回らなくなった。

 今年4月時点で、19隻を更新する予算がついているが、老朽船の約15%に過ぎない。


「平成29年度 海上保安庁関係 予算概算要求概要 平成28年8月 海上保安庁」より
20160713-164659865401

20160713-164659865402


沖縄振興予算から回す。 なんてことはできないんでしょうね・・・

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