「文在寅」韓国大統領の「慰安婦づくし」フルコース
(週刊新潮2017年8月3日号 2017/07/27)

「慰安婦記念日」「慰安婦歴史館」「慰安婦研究所」「慰安婦パーク」

 やっと隣の不味いメシ屋が閉まったのに、新装開店でやって来たシェフのメニューはもっと酷くなっていて……。自慢のフルコースはとても口にできない代物らしい。ならば行かなきゃいいやと思うなかれ。何を隠そうこの店は、我々の困った隣国そのものなのである。

 この国はいつまで同じことを繰り返すのか。人権派弁護士で「男版福島瑞穂」と呼ばれる韓国の文在寅(ムンジエイン)大統領。就任わずか2カ月でついに馬脚を現したのだ。

 7月19日、韓国政府は「国政運営5カ年計画」を発表し、再び慰安婦問題を重要課題のひとつに挙げた。

 その内容は、まず来年の2018年に「慰安婦記念日」を制定し、後世までその記憶を語り継ごうというもの。翌年には「慰安婦被害者研究所」を設立して調査事業を進め、その成果を東京五輪のある20年に「慰安婦歴史館」で結実させる。

 いわば「慰安婦づくし」フルコースといった様相を呈しているのである。

 さる在韓ジャーナリストが解説する。

「韓国では、日本の終戦記念日にあたる8月15日を『光復節』(こうふくせつ)と呼び、独立を記念する祝日としています。その前日、14日を『慰安婦記念日』に制定するとしたのは、26年前に初めて元慰安婦が公に名乗りを上げたゆかりの日だからです」

 ちなみに、その日は国民の休日になるというが、

「文大統領は、選挙で慰安婦問題の見直しと国民の休日を増やす公約を掲げ当選しました。記念日を設けることで、ダブルで公約を果そうとしているのです」(同)

 自らの人気取りで、歪んだ歴史認識を蒸し返されてはたまったものではない。

 そもそも、一連の慰安婦問題は、一昨年の 「日韓合意」によって両国間で解決済みではなかったのか。

 振り返れば、安倍総理がおわびを表明したその合意で、日本政府は10億円を拠出。それを受け取った韓国政府は、日本大使館前に建立された慰安婦像について適切に解決されるよう「努力する」と約束し、「慰安婦問題」が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と誓った。

 このことは、歴史的和解としてNYタイムズなど欧米メディアも報じ、国際的に高く評価されていたのだ。

 しかし、冒頭の計画発表と同じ日に、合意を受けて韓国政府が設立した元慰安婦を支援する財団の理事長が辞意を表明したことで、その存続が危ぶまれているという。

 どうやら文政権は世界に認知された約束を、容易く反故にするつもりらしい。

 すでに予兆はあったと全国紙の外報部記者が言う。

「朴模恵(パククネ)政権が一連の疑惑で職務停止となっていた昨年末、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されました。合意を履行すべく撤去に動いた政府に世論は反発し、当時はまだ人権派弁護士の肩書きだった文大統領も、SNSで慰安婦像を〝生きた歴史の教科書だ〟と擁護しています。結局、撤去に及び腰になった韓国側に対し、日本は駐韓大使を一時帰国させ対立が深刻化しました」

 そんなことなどおかまいなしに、文政権が提供するフルコースにはこんな前菜が添えられているという。

「合意が成立した後の昨年秋、ソウルでは『慰安婦パーク』と呼ばれる記念公園がお目見えしているのです」

 と話すのは、元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏である。

「建設に尽力したのは大統領と同じ党所属のソウル市長です。慰安婦像設置を進める韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が公園を計画した際、市長が土地の無償提供を申し出たのです」

 その場所は、韓国統監府の初代統監・伊藤博文の公邸跡地。まさに韓国にとっては因縁の土地なのだ。

「園内には、慰安婦として名乗り出た247名の女性の名が刻まれた碑文がありますが、近隣には世界各国の若者が集うYMCAの宿舎があります。彼らが公園を通る度に韓国の言い分を見聞することになる。慰安婦問題を国際的に拡散する意図があるのです」(同)

〝反日教〟のご本尊

 日本への宣戦布告ともいえる「慰安婦づくし」が発表された翌日には、こんな〝援護射撃〟もあった。

 前川氏が続ける。

「左派系労組が中心となり、10月に『徴用工像』を済川島の日本総領事館前に設置するという計画を発表しました。別の団体も8月15日に同じ像をソウルの日本大使館や釜山の総領事館の前に作ると宣言しており、実現したら韓国にある全ての日本公館前に、相手国への侮辱行為を禁じた国際条約に違反する像が置かれます」

 韓国側に言わせれば、徴用工とは戦時中に朝鮮半島から日本へ強制連行されて、炭鉱や工場などで働かされた人々のことを指す。

「当時は半島から出稼ぎの形で日本へ来る労働者が多かった。もちろん賃金は支給されましたが、それでも強制労働だと主張するのは、終戦1年前に国民徴用令が朝鮮半島でも適用されたから。とはいえ、対象は当時の日本人全てで朝鮮人を特別に動員したのではありません」(先の記者)

 付言すれば、慰安婦問題と同じく、65年の日韓国交正常化時の条約で韓国は戦前の被害請求権を放棄している。だが、韓国は今でもそれを〝不都合な真実〟として退け認めていないのだ。

 前川氏が話を継ぐには、

「韓国の中学生向けの教科書には、慰安婦と徴用工の問題は解決されていないと記されています。ゆえに、戦時中に朝鮮人労働者を不当に搾取したとして、三菱重工や新日鐵住金など日本企業が韓国で訴えられ賠償金を命じられている。日本側は上告していますが、徴用工像を設置することで追い討ちをかけたいのでしょう」

『悪韓論』の著者で元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏はこうも言う。

「〝反日教〟のご本尊が慰安婦像なら、徴用工像は女神さまを護る男神になりつつありますね。その背景には、慰安婦問題が思惑通りに進まないジレンマがあるんです。実際のところ、日韓合意で日本政府が拠出した10億円は、元慰安婦の7割が受け取っている。そのため、今後は韓国が再び謝罪を要求しても、合意破りだと国際社会からも批判を浴びる。それで、次なる日本への攻撃材料は、徴用工問題だと躍起になっているのです」

 例えば、その勢いは〝韓流〟の世界にも及ぶ。韓国で7月26日に封切られた映画『軍艦島』は、反日の炎に油を注ぐ内容なのだ。

 ざっと物語をさらっておくと、舞台は長崎にある世界遺産の端島(はしま)、通称・軍艦島の炭坑だ。そこで残酷な虐待を受けていた朝鮮の炭坑夫、いわゆる「徴用工」は、終戦間際にその実態を隠そうとした日本兵が爆殺を企てていることを知り、知恵を絞って脱出を図るといったアクション映画だ。

 この1月に予告編がウェブ公開されると、僅か13時間で再生回数が100万回を超える勢いを見せた。人気の韓流スターも出演したことで、ヒットは確実と太鼓判を押されているという。

「ヘル朝鮮」

 だが、これに憤慨するのは、映画の舞台にかかわる「軍艦島を世界遺産にする会」の坂本道徳理事長だ。

「予告編では子供も炭坑で働いていたことになっていますが、島の小学校では日本人も朝鮮人も同じ机で並んで勉強していた。戦時中は日本の若者が戦地に駆り出され、朝鮮の炭坑夫はむしろ島の人から感謝されていたのです。彼らのための遊郭もあって映画の内容は完全に虚構。いたずらに反日感情を煽って欲しくありません」

 周囲1200㍍の小さな島では、出自に関係なく互いの助け合いが欠かせない。

 端島炭坑で働いた松本栄氏(89)もこう反論する。

「私の両親は豆腐屋で、お腹を空かせた朝鮮の方々がよく来ました。父は〝お金はいいから〟と、余ったオカラを分け与えていましたが、終戦後、国に帰る際、彼らが木箱に沢山詰まったリンゴを届けてくれましてね。あの美味しさは忘れられない。米が足りないとか醤油がないなら譲り合う。島全体が家族のようなもので、迫害などありませんでした」

 映画スタッフが元島民らへ取材した形跡もなく、史実を捻じ曲げた「反日映画」なのは言うまでもない。

 かの国が、あらゆる手段を講じて反日の狼煙を上げたのには事情がある。

 韓国出身で現地事情に詳しい拓殖大学の呉善花(オソンファ)教授がその理由を明かす。

 「いま、韓国経済はひどい状況で、これまで財界を牽引してきたサムスンや現代グループの売上は、最盛期の3分の1程度まで落ち込んでいます。就職難も相当深刻で、15歳から29歳の失業率は10・5%、大卒で職に就けない者は全国で50万人以上いるのです」

 そんな若者たちは「七放世代」と呼ばれる。「七放」とは、恋愛、結婚、出産、就職、マイホーム、友人関係、夢を指し、その全てを諦めざるをえないと言う。

「若者たちは祖国のことを『ヘル朝鮮』、つまりは〝地獄のような韓国社会〟と揶揄しています。文大統領は財閥改革や、公的部門で81万人の雇用を創出して、非正規雇用をゼロにしたいと選挙で訴えました。その結果、若者たちの支持を集めて当選しましたが、政策を進めるにあたっての具体的な財源などは示せていません」(同)

 溜った不満の矛先を、お得意の反日に向けようという魂胆が透けて見えるのだ。

 けれど、当の文大統領の本音はといえば、日本から投資など経済協力を取りつけたいのである。

「彼は就任後、『ツートラック外交』と銘打って歴史問題と北朝鮮や経済問題について線を引き、日本と話し合う方針を示しました。いわば国家間の約束を履行せず経済協力を求める腹積もりですが、そんな虫のいい話は通用しません」(同)

 世間ではこれを称して「二枚舌」と言う。しっかりした舌を持たないシェフに、誰もが唸るフルコースなど作れまい。