漁船漂着、亡命、ミサイル…北朝鮮の今
(東京新聞 2017/12/04)
北朝鮮の漁船とされる小型木造船が相次いで日本海沿岸に漂着し、朝鮮半島の南北軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)では先月中旬、北朝鮮兵士が韓国に亡命した。核兵器と弾道弾の実験を繰り返す北朝鮮では何が起きているのか。経済制裁は影響しているのか。北朝鮮に覆面記者を抱えるアジアプレスの石丸次郎氏に聞いた。(鈴木伸幸)
・闇市場を黙認 庶民に食料届く
・核に財政集中 兵士の待遇劣悪
韓国メディアによると、板門店で脱北した兵士は二十四歳男性で越境時に銃撃を受け、一時は危険な状態だった。だが、意織を取り戻し、回復に向かっている。担当医によれば、兵士の栄養状態は悪く、臓器からは大量の寄生虫が見つかった。石丸氏は「板門店の共同警備区域(JSA)にはエリートが勤務する。待遇がいいはずの部隊でも、食料事情、衛生状態が劣悪で驚いた」と話す。
北朝鮮で寄生虫は珍しくない。だが、中国から安価で輸入される虫下しは、かなり流通していて入手は難しくない。その程度の薬品がエリート部隊に供給されていないことになる。
意外にも、現状、北朝鮮で食料不足は起きていない。援助国の旧ソ連の崩壊や農業政策の失敗に伴う一九九〇年代の食料危機で配給制度が崩れ、市民が生き残るために闇市場を形成。それが発達して、潤沢ではないが、市場活動で現金を得て、食料を買えるようになった。経済制裁にもかかわらず、米やトウモロコシの価格は安定。今のところ市民生活には、大きな影響は出ていないそうだ。
金正日(キムジョンイル)総書記は市場の統制を試みたが、失敗で混乱が続き、後継者の朝鮮労働党の金正恩(キムジョンウン)委員長は市場を黙認、活用にかじを切った。恐怖政治で思想統制を強め、脱北の取り締まりも厳格化されたが、住民には「商売で頑張れば、自力で食っていける」という意識が広がり、電気や水道事情は劣悪なままでも庶民の暮らしに混乱は起きていない。
むしろ、問題は国家財政が頼りの人民軍兵士たちだ。北朝鮮では、核兵器と弾道ミサイルの開発に軍事費を集中し、人口の約5%に当たる約百二十万人の兵士を食べさせられなくなっている。栄養失調での除隊も多い。「核兵器と寄生虫が共存するのが人民軍の実態。制裁で今後、国家財政は一層厳しくなり、末端兵士の待遇は悪化する」
◇「中国が制裁順守」燃料高騰 粗悪な油でエンジン故障
そんな中、小型木造船の漂着は何を意味するのか。石丸氏は、二つの原因が考えられるという。一つが、制裁による燃料の高騰。今年四月と比べて二倍以上に値上がり、燃料に粗悪な油を混ぜることがあるそうで、それが故障を誘発している可能性がある。もうひとつは、漁獲高に応じて漁師の手取りが増えるので、一獲千金を狙い無理な操業をしがちなことだ。
また、制裁で対中国貿易が制限され、海産物は国内に流通している。「平壌の市場に、これまでなかったエビやカニ、タコなどが並んだ」と言う。ただ、価格を抑えないと売れず、燃料費の高騰もあって水産業者には厳しい経営環境になっている。
今年七月から十月にかけて、断続的に中国の北朝鮮国境沿いを取材した石丸氏によると、中国はかなり厳格に制裁を守っていたそうだ。「制裁の影響は確実に出てくる。今年は、干ばつで米とトウモロコシが不作で、来年の初めから経済悪化は避けられないだろう。北朝鮮は核開発をやめないが、平昌冬季五輪など周辺国の事情もあって、どこかで対話局面が現れるかもしれない」と石丸氏は推測している。
経済制裁は人道的措置ですね。

じゃあ、韓国の人道支援は人民軍兵士の腹に・・・