(日本経済新聞政治 2019/01/16)
冬の味覚の王様、ズワイガニの漁をめぐり関係者がいらだちを募らせている。昨年11月に兵庫県沖など日本海で解禁された漁は天候に恵まれつつ滑り出したが、国の研究機関による調査で資源量の急減が懸念されている。好漁場が重なる韓国との関係のきしみも漁獲量に影を落としている。
兵庫県北部の浜坂漁港は国内有数のズワイガニの水揚げ港だ。県によると昨年11~12月の漁獲量は前年同期比24%増の358トン。出足は順調に映るが、関係者の表情はさえない。
ズワイガニは1990年ころに漁獲量が減少し、国の管理下で97年、全国的に上限規制が敷かれた。92年に298トンに減った兵庫では国とは別に漁業団体も独自に漁期短縮などに取り組み、2007年に1945トンまで回復させるなど、16年まで15年連続で水揚げ日本一となった。
ところが「他の魚種に見られないほど厳しい」(兵庫県水産課)規制にもかかわらず漁獲量は再び減少に転じ、16年は07年比でほぼ半減。17年は速報段階で1千トンを割り、兵庫とは別の日本海海域を漁場とする北海道に首位を譲った。
兵庫の地元漁師からは「かつて日本海でとれなかったマグロやサワラが生まれて間もない海に浮いた微小なカニを食べているのでは」「近年は夏に兵庫沖で西からの対馬海流が速い。幼いカニは遠くに流されているのでは」といった声が飛ぶ。海洋環境の変化を指摘する向きは少なくない。
そんな中、国立研究開発法人水産研究・教育機構の日本海区水産研究所(新潟市)による調査で不穏な結果が出た。日本海でズワイガニの資源量が3年後に半減するというものだ。
同研究所は昨年5~6月にかけて能登沖~山陰沖の137地点を観測。国の基準で漁獲できる成熟したカニは例年並みだったものの、未成熟なカニの数が極端に少なかった。同機構の上田祐司グループ長は「要因は特定できないが、幼生段階の死亡率が高まっているようだ」と語る。漁獲可能な資源量は18年の約2万2千トンから、21年に約1万2千トンまでほぼ半減すると推定する。
資源量の減少とともに関係者がいら立ちを強めるのが日韓関係の悪化だ。兵庫沖にはズワイガニの好漁場が広がるが、海域は韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)の東方海域と重なる。日韓両政府は1999年に漁業協定を発効させ、韓国側と利害がぶつかる海域を暫定水域として共同管理することを決めた。

暫定水域で日韓は互いに自由な操業を認めるが、ズワイガニ漁に関しては「韓国側が占拠している状態だ」と浜坂漁業協同組合(兵庫県新温泉町)の川越一男組合長は訴える。背景には漁法の違いが関係している。
日本側は船が網を引いて海底のカニを取る底引き網漁が主流。韓国は籠や網を海底一面に仕掛ける漁法で、川越氏は「隠岐諸島北方のカニは取りつくされ、仕掛けは暫定水域を越えて日本側にも広がる」と話す。日本の漁船は網が籠などに絡まないよう暫定水域での操業を避け、漁解禁前には日本側海域で漁具を掃除しなければならない状況だという。
昨年7月にソウルで開いた非公式の官民協議会。日本から外務省や水産庁、兵庫や鳥取の底引き網漁の団体関係者が出向いた。暫定水域の管理をめぐる対話は決裂。内容を公にしないとの申し合わせで関係者は口をつぐむものの、出席者の一人は「韓国とは話にならない」とあきらめ顔だ。
同10月下旬には全国底曳網漁業連合会と大日本水産会の幹部が外務省を訪れ「暫定水域に中間線を引いてほしい」と境界画定を求めたが、同省参事官は明確な回答を避けた。連合会幹部は「もう何十年も竹島問題に振り回されている」と憤る。
歴史問題で日韓関係はぎくしゃくしている。ズワイガニ以外でも日韓漁業協定に関連する協議はこじれたままで、漁業関係者の生計や日本の食卓にしわ寄せが及びかねない。資源管理の観点からも関係改善が求められる。(小嶋誠治)
日韓政府は「日韓暫定水域」での操業について、自国船籍の関係法令違反のみを取り締まり、共同漁場としてのルールは双方の民間団体同士で取り決めるようにしているらしいです。
日韓政府は「日韓暫定水域」での操業について、自国船籍の関係法令違反のみを取り締まり、共同漁場としてのルールは双方の民間団体同士で取り決めるようにしているらしいです。

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