(朝日新聞 2019/08/01)

 米国が、悪化する日韓関係の仲裁に腰を上げた。同盟国がにらみ合う現状は、中国やロシアを利することにつながり、米国の安全保障環境にマイナスだと判断した。韓国は米国の介入を歓迎するが、日本は韓国への譲歩に後ろ向きで、事態が好転するかは見通せない。

■米国 東アジア覇権、弱体化を懸念

 ポンペオ米国務長官は30日、バンコクへ向かう機内で、「日韓それぞれが、良い場所を見つけられるよう手助けすることが出来れば、米国にとって大切なことだ」と記者団に語った。

 日韓対立について、米国は韓国政府から何度も仲裁を頼まれてきた。当初は静観する構えだったが、対立の激化を受けて東アジア地域における米国の安全保障リスクに対する懸念が強まった。

 23日にはロシアと中国の爆撃機が日本海と東シナ海の上空で、初めて共同警戒監視活動を実施。日韓のあつれきにつけ込もうとした可能性がある。また、日韓が軍事技術や戦術データなどの防衛情報を共有することを定めた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄される恐れまで出てきている。米国にとって、こうした事態は、同地域における覇権が弱体化し、中ロを利することにつながる。

 米政府関係者によると、米側は、安倍政権が2日にも韓国を「ホワイト国」から外す閣議決定をすることを憂慮している。この関係者は「米国は日韓問題について、これまで『韓国側が悪い』と考えてきた。しかし、安倍政権がホワイト国から除外する手続きを強行すれば、米国の立場は『日本も悪い』と変わるだろう」と警告する。(ワシントン=土佐茂生)

■日本 仲裁に応ぜず「手続き、粛々」

 日本政府は米国に対しては、仲裁に応じるのではなく、あくまでも日本の考えを理解してもらい、引き続き、韓国に問題解決を迫る方針だ。

 世耕弘成経済産業相は31日午後、記者団に「輸出管理の運用見直しは、米国など関係各国に説明をしてきた。引きつづき粛々と手続きを進めたい」と述べた。政府は予定通り、8月2日に閣議決定する方針だ。

 菅義偉官房長官も31日午前の記者会見で、「米国には我が国の一貫した立場や考えを累次伝達している」と説明。「今後とも我が国の立場に対して、正しい理解が得られるよう努めていきたい」と強調した。

 韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決をめぐって、日本政府は「日韓請求権協定に明らかに反し、法的基盤を根本から覆す」と主張してきた。判決は受け入れられないという立場を日本政府は変えていない。

 半導体関連3素材の輸出規制強化を含めた一連の措置をめぐっては、韓国側は元徴用工問題への「対抗措置」とみなしてきた。だが日本側は「安全保障のための輸出管理制度の適切な運用に必要な見直し」(世耕氏)と説明してきた経緯がある。米国の仲裁で「ホワイト国」からの除外に関する閣議決定を取りやめれば、「対抗措置」と認めることにもなりかねない。

 一方、両国間では緊張緩和を探る動きも一部で出ている。韓国国会の超党派の議員でつくる「韓日議員連盟」の幹部らが31日、事態の打開をめざして来日。日韓議連の額賀福志郎会長らと昼食を共にしながら会談した。額賀氏によると、韓国側からは「ホワイト国を外すのをとどまってくれないか」といった意見も出たという。

 昼食会終了後、河村建夫・同議連幹事長は記者団に「これ以上行き着くところまで行くと、取り返しのつかないことになるんじゃないかという、非常に危機感を持った発言が多かった」と語った。(伊藤弘毅、永田大)

■韓国 不透明な経済、米介入を歓迎

 韓国政府の関係者は31日、米国の仲裁を、「日本側が対話を避けている今のような状況では、どんな契機であっても歓迎だ」と好意的に受け止めた。一方、康京和(カンギョンファ)外相は訪問先のバンコクで記者団に「日本側は(仲裁案を)すぐに事実無根だと発表した」と述べ、日本への不満を示した。

 韓国ではこれまで、仲裁に消極的な米国に、失望感が広がっていた。日本による輸出規制で韓国経済がさらに低迷するとの危機感が強いためだ。半導体大手のサムスン電子は31日に4~6月の決算を発表した際、輸出規制に触れ、「先行きに不確実性があり(今後の影響は)予想しにくい」と異例の言及をした。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は輸出規制について、日本側が問題を政治利用しているとして撤回を求めてきた。与野党の「挙国態勢」をつくり、日本に譲歩しない強い姿勢を示すことで、政権の支持率も上向きになっている。

 ただ、足元では文政権が日韓対立を政治利用しているとの指摘もある。与党・共に民主党のシンクタンクが、「韓日の葛藤 来年の総選挙の好材料」と題する報告書を作っていたことが判明。同党は31日に関与を否定するなど、火消しに追われている。(ソウル=神谷毅)


さて、どうなるんでしょうかね。