(朝日新聞 2019/11/23)

聞き手=鈴木拓也

 日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が23日の失効期限直前に一転、延長されることになった。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が土壇場で協定破棄の決定を事実上撤回した背景や思惑について、静岡県立大大学院の奥薗秀樹准教授(韓国政治外交史)にその背景や思惑を聞いた。

 ――元徴用工訴訟で昨秋、韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた判決に端を発した日韓関係の悪化が、安全保障分野にまで及ぶ事態はひとまず回避された。

 GSOMIAは2016年11月に日韓が防衛協力分野で結んだ初めての協定であり、唯一の協定である。日米・米韓の安保協力体制において、日韓をつなぐ象徴的な意味合いを持つ。失効期限が近づく中、米国からはエスパー米国防長官ら政府高官や軍高官が相次いで韓国を訪れ、文政権の説得にあたった。

 文政権からすると、日本側の姿勢に何ら変化がないまま、米国からの度重なる撤回要求の圧力に屈すれば、政策判断が間違っていたことを自ら認めることになる。国民の批判は避けられない。来年4月に総選挙を控えるなかで、ジレンマに陥っていたことは間違いない。

 ただ、対北関係を最重要視する文政権にとって、良好な米韓関係は不可欠だ。対米関係が一線を越えて悪化する事態は避けなければならない。

 文氏は最近のテレビ出演で、GSOMIA破棄の決定を見直すには、日本政府が韓国への輸出管理強化をやめなければならないとの考えを改めて強調した。今回、日本政府が輸出管理強化をめぐる協議を受け入れたことで、破棄通告の効力を停止する名分が立ったと判断した。

 ――韓国で実施された最近の世論調査で、GSOMIA失効に半数以上が賛同し、維持を望む声は3割にとどまった。韓国の国民が破棄の決定を支持するのはなぜか。

 韓国では、GSOMIAの破棄が、北東アジアの安保環境と国際秩序にどのような影響を与えるのかという冷静な議論はほとんど見られない。日本が、韓国の貿易体制に安全保障上の懸念があるとして不当な「経済戦争」をしかけてきた以上、安保協力はできない。そのような日韓の二国間関係や、露骨に圧力を強める米国への反発から、この問題を捉える見方が韓国世論を支配している。

 ――北朝鮮は日本海に向けて短距離弾道ミサイルの発射を続けているが、韓国の国民に不安はないのか。

 北朝鮮が核実験や中長距離の弾道ミサイル発射を繰り返し、米国が激しく反発していた17年当時は、米朝間で軍事衝突が起きかねないという緊張感があった。その時期に比べれば、南北や米朝の首脳会談が実現し、韓国国民の北朝鮮に対する脅威感は低下した。

 ――韓国の世論は以前から、日韓GSOMIAに否定的ではないか。

 日韓が最初にGSOMIAを結ぼうとしたのは12年6月。当時、韓国は保守系の李明博(イミョンバク)政権だったが、署名のわずか1時間前に突然、一方的に延期を日本側に申し入れた。

 植民地宗主国だった日本との軍事協力協定の締結を、十分な議論を経ず水面下で処理しようとしたとして、大きな反発が巻き起こった。半年後に大統領選を控え、進歩(革新)系の野党候補だった文氏だけでなく、保守系の与党候補だった朴槿恵(パククネ)氏も反対を唱えた。朴氏は、日本との国交正常化を力ずくで推進した朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の娘として、「親日派」のレッテルを貼られることを警戒した。

 その後、大統領に就任した朴氏は15年末に安倍政権と慰安婦合意を結び、16年11月にGSOMIAも締結した。朴氏は当時、スキャンダルで窮地に陥っていたが、世論の批判を浴びても日米韓の安保協力の強化が必要と判断した。

 ――その後、朴氏は大統領を罷免(ひめん)され、「積弊清算」を掲げた文氏が大統領に就任した。文氏は選挙公約で、GSOMIAは「効用を検討後、延長の可否を決定」と明記していた。

 文氏がそのようなあいまいな表現を使ったのは、対米関係に配慮せざるを得なかったためだ。本来ならGSOMIAも、朴政権が民心を無視して強引に推し進めた慰安婦合意と並ぶ「積弊」で、正すべきというのが本音であろう。

 文氏はかつて、著書の中で日本とのGSOMIA締結は必要なく、中国を刺激するだけと批判していた。だが、実際の政権運営では、米国の後押しで締結された協定を真っ向から否定するのは難しいと判断したのだろう。

 ――日本政府の対韓輸出規制を理由に協定の破棄を決めた文政権が、土壇場で失効を回避したのはなぜか。

 文政権は、日米と中ロの間でうまく距離をとりながら朝鮮半島の平和を確保する多国間安保を志向する傾向がある。米国の反発をよそに破棄を強行した場合、韓国がもはや米韓同盟と日米韓連携を絶対視しないというメッセージが、北朝鮮のみならず、中ロにも伝わることになりかねなかった。米韓同盟を守るために苦渋の決断を強いられたのだろう。

 ――日韓関係筋によると、GSOMIAの失効期限を前に、韓国外交省の趙世暎第1次官がひそかに東京を訪問。外務省の秋葉剛男事務次官と非公式に協議を行うなど、両政府はぎりぎりまで打開策を探っていた。

 日韓双方には、大局的観点から歴史問題と安保を切り離した戦略的思考が求められる。GSOMIAの失効という事態はひとまず回避されたが、両国関係の根幹を揺るがす徴用工問題解決の糸口がつかめない中、両国はあらゆるチャンネルを動員して協議を重ねていくべきだ。日本としては、米国と緊密に協力しながら、日米から離れて行きかねない韓国を引き留める努力を怠ってはならない。


今後、韓国政府(+マスコミ)は韓国内の批判を抑えるために『輸出管理の協議開催に合意=事実上の輸出管理の緩和・グループA(ホワイト国)復帰に向けた手続き開始に合意』と説明し、いつの間にか韓国内ではそれが“真実”となり、「日本は“約束”を守れ」となって「日本が“約束”を守るまで不買運動ニダ」ですね。

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