(朝日新聞 2020/01/19)
北朝鮮情勢が近年で最も緊迫した2017年秋、韓国と日本に住む数十万人の米国市民を早期退避させる計画が、米政権内で検討されていたことがわかった。当時の在韓米軍司令官だったビンセント・ブルックス元陸軍大将が朝日新聞のインタビューで明らかにした。ただ、実施に移すと北朝鮮側に「読み違え」が生じて戦争につながる恐れがあるとしてブルックス氏は反対し、実際の退避行動は行われなかった。
17年は北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返し、秋にはトランプ米大統領が国連総会で「北朝鮮を完全に破壊するほか選択肢はない」と宣言。米軍が原子力空母を朝鮮半島周辺に派遣するなど、緊張が高まった。米テキサス州オースティンで取材に応じたブルックス氏によると、複数の米政府当局者や議員が「戦争が始まる方向であるなら、米軍は米国市民を退避させる責任がある」と主張し、トランプ氏も「同様の考えを持っていた」という。
ブルックス氏によると、米軍の非戦闘員退避作戦(NEO)で第一義的に対象となったのは、韓国に在住する米軍兵士の家族や一般の米市民ら数十万人。北朝鮮の攻撃で日本にも危険が及ぶ場合は、日本に在住したり、韓国から日本に一時的に避難したりした米市民も対象だったという。
ただ、ブルックス氏は実際の早期退避行動を行うためには、①敵意から身体に危害を加える状況へと変わっている②北朝鮮への戦略的圧力として効果がある――のいずれかが必要だと考えていたという。検討の結果、いずれの条件も満たされていないうえ、退避行動を行えば北朝鮮が「米国が開戦準備をしている」と受け止め、「読み違えによって容易に戦争が起こり得る」と判断し、実施に反対した。
17年11月には、トランプ氏も韓国を訪問した。ブルックス氏はこの時、「米軍の家族の状況について十分に知らされていない可能性がある」と考え、家族の状況を案内したという。「我々から見える世界を知ってもらおうと思った」と振り返った。
ブルックス氏は一方、米軍が先制攻撃や単独攻撃を含めた「すべての選択肢」を検討していたと明らかにした。各国大使らとの会談では「我々の目的は戦争ではない。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の考え方を変え、外交的な路線を定着させるのが目的だ」と述べつつ、「この現実と深刻さを過小評価してはいけない。(北朝鮮側の)読み違えで戦争は起き得る」と伝えていたといい、「(戦争に)非常に近い状況だった」と振り返った。
ブルックス氏は「我々は(北朝鮮に)戦争の準備は整っていないという証拠を示さないのと同時に、戦争が起きぬように慎重に行動しなければいけなかった」と語った。こうしたぎりぎりの軍事的圧力が、18年から始まった米朝交渉に結びついたという考えを示した。(オースティン=園田耕司)
ビンセント・ブルックス氏 オバマ、トランプ両米政権のもとで2016年4月~18年11月、在韓米軍司令官。米韓連合軍司令官、国連軍司令官も兼務した。11~13年、イラクやアフガニスタンなど中東地域を担当する米陸軍第3軍司令官。19年1月、退役。アフリカ系米国人としては史上8人目の陸軍大将。

▲2017年11月に韓国を訪れたトランプ米大統領(右)と握手するブルックス在韓米軍司令官(当時)=AP
(朝日新聞 2020/01/19)

▲2018年6月に式典で話すブルックス在韓米軍司令官(当時)=AP
北朝鮮情勢が緊迫した2017年、米韓連合軍の指揮もとっていたビンセント・ブルックス前在韓米軍司令官(元陸軍大将)が朝日新聞のインタビューに応じた。「北朝鮮の読み違えによって戦争は起き得た」と、一触即発の危機を振り返りつつ、米朝が今後も対話路線を続けることの重要性を訴えた。
――17年秋は北朝鮮情勢が緊迫した。
「17年から18年初頭は米韓合同軍事演習時に米軍3万4千人が韓国に集結し、韓国軍62万人も合わせて即応態勢を整えていた。我々は当時、すべての軍事行動の選択肢を検討していた。先制攻撃や単独攻撃が実際に必要かどうかは別として、どちらの選択肢も検討する必要はあった」
――戦争の可能性をどうみていたか?
「18年2月には韓国で平昌冬季五輪があり、多くの国が関心を寄せていた。各国大使らに問われた際は『我々の目的は戦争ではない。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の考え方を変え、外交的な路線を定着させるのが目的だ』と答えつつ、『この現実と深刻さを過小評価してはいけない。意図してではなく、読み違えを通じて戦争は起き得る』と率直に伝えていた」
――当時、米国市民の安全を確保する策は?
「ワシントンでは、複数の米政府当局者や上院議員、退役将校らが『戦争が始まる方向であるならば、米軍は米国市民を退避させる責任がある』と考えていた。トランプ米大統領も同様の考えを持っていた」
「我々には当然、戦争になるのであれば、米国市民を早期退避させる義務がある。ただし、北朝鮮に対話のドアは開いているというシグナルを送る努力をするならば、今は早期退避行動を取る時期ではないと判断した」
――退避行動が戦争の引き金を引くと?
「我々は(戦争に)非常に近い状況にあった。どちらも望んでいなくても、読み違えによって容易に戦争に至る可能性があり、熟考して行動する必要があった」
――当時は米研究機関などで戦争が起きた場合、韓国や日本で数百万人単位の犠牲者が出るという予測が相次いだ。
「率直に言えば、私はこれらの犠牲者数の予測を信用していない。現実に弾道ミサイルが北海道上空を2回飛ぶなど、日本や韓国の市民に被害が及ぶ危険があった。ただ、正恩氏の目的は都市破壊ではない。攻撃で恐怖とパニックを引き起こし、米国との同盟関係に圧力をかけるためだ。正恩氏は戦略的にものごとを考えている。都市の全面壊滅のために兵器を使えば、正恩氏の未来はない」
――金正恩氏は最終的に対話路線へとかじを切った。
「我々が米韓合同軍事演習を五輪後に後ろ倒ししたことで、五輪は大きな成功を収めた。それが米朝対話にドアが開かれることにもつながったと思う」
――正恩氏は昨年末、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の一時停止に縛られないと宣言した。
「宣言は必ずしも、核実験やICBM発射の再開を意味するわけではないと思う。『我々が再開しないのは、その手法を選べるけれども選んでいないからだ』という点を強調することにある。米朝対話を前に進めるため、圧力をかける狙いだとみている」
――米国の専門家の中には「米朝交渉はすでに失敗した」という見方もある
「私はその見方に同意しない。今は17年当時の北朝鮮の瀬戸際外交とは異なり、米朝当局者同士のコミュニケーションのチャンネルが存在する。正恩氏は対話の道を閉ざしていない」
――停滞する米朝交渉を前に進める方策はあるか?
「米朝の政治指導者レベルでお互いへの敬意を維持し続けることが重要だ。米朝実務協議が前に進むように、北朝鮮に正しい圧力をかけることも必要だ。正恩氏の言動に過剰反応するべきではない。今は軍事的にエスカレートする状況ではない」(聞き手・園田耕司)
石油も宗教も絡まないだけに、相当なきっかけがないと軍事行動は起こさないんでしょうね。
石油も宗教も絡まないだけに、相当なきっかけがないと軍事行動は起こさないんでしょうね。

訓練を装って避難されてはいかがかな
specificasia
が
しました