(読売新聞 2020/02/16)

【香港=角谷志保美】新型コロナウイルスの感染拡大で封鎖措置が続く中国湖北省武漢市から、インターネットを通じて現地の様子をビデオで発信していた中国人のジャーナリストら2人が今月、相次いで行方不明になった。当局に不都合な情報を流したために連行されたとみられ、安否に懸念が広がっている。

 友人らがネットに公表した情報などによると、北京の弁護士で市民ジャーナリストの陳秋実氏は6日から、武漢市民の方斌氏は9日から連絡が途絶えた。陳氏は強制隔離、方氏は公安当局に拘束されている可能性が高いという。

 陳氏はツイッターなどに数十万人のフォロワーがおり、先月23日に封鎖が始まった際に武漢市入りした。

方氏は地元住民として「実際に起きていることを知らせたい」と、封鎖後に発信を始めた。

 政府の情報統制が強まる中、2人はそれぞれ、ごった返す病院の様子や死亡した肺炎患者の遺族らを連日取材し、「これは人災だ」などと訴えていた。


(中央日報 2020/02/16)

新型コロナウイルス問題と関連し、習近平中国国家主席を批判した許章潤精華大学法学部教授の行方がわからない状態という報道が出てきた。

英日刊紙ガーディアン日曜版のオブザーバー15日付によると、許教授の知人らは「数日間彼と連絡が取れない」と話した。

許教授は新型肺炎問題以降に習近平政権に対する批判の声を出している中国の知識人の1人だ。彼は最近のさまざまな海外ウェブサイトに寄稿した「憤怒する人民はこれ以上恐れない」という題名の記事で中国が新型肺炎の早期対応に失敗したのは中国で市民社会とメディアの自由が抹殺されたためだと批判した。

香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの報道によると許教授は他の知識人数百人とともに最近中国の議会である全国人民代表大会に「表現の自由の保障」などを要求するオンライン請願にも署名した。

彼は直近に上げた文で「私が処罰を受けるだろうとあまりにも簡単に予見できる。まちがいなくこれは私が書く最後の文になるだろう」と記したりもした。この文で彼は自身が1年余り前にも批判的な文を書き「自由を制約されたことがある」とし、職務停止と教授職剥奪の経験を打ち明けたという。

知人らは許教授が問題の文を載せた後、ウィーチャット(メッセンジャーアプリ)のアカウントが遮断され連絡も途絶えたと伝えた。許教授が拘禁されたのではなくて北京の自宅にいると推定されるとオブザーバーは伝えたが、彼のウェイボー(中国版ツイッター)のアカウントもやはり削除されており、中国最大の検索エンジンであるバイドゥでも数年前に上げたいくつかの文だけ検索できる。

一方、中国では最近政府対応を批判する人々が相次いで失踪する事件が起きている。発源地である武漢で現場の実態を映像で告発してきた元弁護士の市民記者陳秋実氏が6日から連絡が途絶え、武漢病院内外の実状と「独裁批判」動画などを上げた衣類販売業者出身の市民記者方斌氏も失踪している。


 肺炎患者集中の武漢で「市民記者」不明 4日の投稿最後に消息途絶える
(毎日新聞 2020/02/15)

 新型コロナウイルスによる肺炎患者が集中する中国湖北省武漢市で取材していた中国人フリージャーナリストで人権派弁護士の陳秋実氏(34)の消息が、4日のインターネットへの投稿を最後に途絶えている。中国でフリーの立場での取材は認められていないこともあり、その安否が気遣われている。

 「私は市民記者として、この災禍を取材する責務がある」。陳氏はそう説明し、1月24日夜の最終列車で武漢入り。2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と今回の感染拡大について「いずれも事実の隠蔽(いんぺい)が原因となった。同じ過ちを繰り返さないためにはウイルス(感染拡大)より早く情報を伝えなければならない」と、訴えていた。

 武漢では当局に不都合な報道が規制されるなか、陳氏は患者が廊下まであふれる病院や検査キット不足を訴える医師らの声を次々とツイッターやユーチューブで伝えた。

 中国で記者活動は免許制で、陳氏のように権力から独立した「市民記者」の活動は認められていない。5日からは新型肺炎に関する言論統制も大幅に強化されていた。

 陳氏は「私の前にはウイルスが、後ろには中国当局が迫っている。だが、私は共産党を恐れない」と、拘束覚悟で報道していた。

 支援者によると、陳氏は6日に市内の臨時病院を取材した後、病院周辺で当局者に連れ去られた可能性が高いという。当局者によって強制隔離されているとの情報もある。【北京・浦松丈二】
 「感染拡大防ぐ機会逃した」 清華大教授が習指導部批判
(朝日新聞 2020/02/05)

 新型コロナウイルスによる肺炎への対応をめぐり、中国の改革派の学者で清華大学法学院教授の許章潤氏が、習近平(シーチンピン)指導部を批判する文章をインターネット上に公開した。

 許氏は4日に公開された文章で、新型肺炎の発生当時の党指導部や政府の対応について「最初は口を閉じて真相を隠し、その後は責任を逃れ、感染拡大を防ぐ機会を逃した」と批判。さらに、庶民に対する言論や行動の監視が「当然存在すべき社会の情報伝達と早期警戒のメカニズムを圧殺した」として、指導部の強権的な統治のあり方が肺炎拡大の原因だと指摘した。

 また、局面を好転させるには主権が庶民になければならないと主張。今回の大流行を経て、「人びとはとうに権力の神話を信じていない」とつづった。

 許氏は憲政を重んじる改革派の論客として知られ、2018年に習指導部が憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃したことを批判する論文を発表。昨年3月、大学から停職処分を受けた。(北京=高田正幸)