(朝日新聞 2020/08/19)

 金塊を売りに来た中国人たちが提示した身分証は偽物だ――。そんな国税当局の認定で、金の買い取り業者が約5億9千万円の追徴課税を受けたことがわかった。業者側は「偽物だと見破るのは困難だ」と主張し、課税処分の取り消しを求めるという。

 課税処分を受けたのは東京都台東区の「アステリア」=今年4月に解散。

 関係者によると、同社は主に中国人らから金の地金(じがね)を買い取り、大手業者などに転売することで利益を得ていた。買い取り時には、本人確認のために中国人たちに身分証明書の提示を求め、在留カードのコピーなどを保管していたという。

 ところが、税務調査に入った東京国税局は、同社にコピーがあった中国人客ら約70人分の証明書のほとんどを「偽物」と判断。取引時には日本にいない人のものが含まれるなど、実際に訪れた客のものだと認めなかったとされる。

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▲東京国税局が「偽物」と判断したとみられる身分証明書の写し。金地金の買い取り業者が、買い受け時に提示を受けて保管していた(画像を一部加工しています)

 追徴課税を受けた約5億9千万円の大部分は、こうして身分不詳と判断された中国人たちに対し、業者が買い取り時に支払ったとする消費税分だ。

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▲金地金の取引をめぐる課税処分の構図

 消費税は、売上時に受け取った税額から、仕入れ時にかかった税額を差し引いた金額を納める。仕入れ時の税額を差し引くことが認められるのは、仕入れ先の氏名や取引の年月日などを記した帳簿を保管している場合だ。

 同国税局は偽物と認定した身分証明書のうち、繰り返し取引するなどした十数人分について、仕入れ先の氏名を正しく帳簿に記載しておらず、仕入れ時の税額を差し引くことはできないと判断。調査対象とした2017年12月~18年10月の約11カ月間について、同社が事前に差し引いて納めていた消費税では足りないとして、過少申告加算税を含め約5億9千万円を6月に追徴課税(更正処分)した。

 一方、同社の社長だった男性(36)は取材に、「身分証明書が本物かどうかまで確認する責任を業者が持たなければならないのか」と処分への不満を語る。

 身分証明書のコピーの保管は、仕入れ時の税額を差し引ける要件に昨年10月から含まれた。課税処分の対象となった取引時は義務づけられていなかったが、古物営業法などでも求められることや、密輸品を扱っていると疑われないようにと税理士の指導もあって実施していたという。

 男性によると、同社は課税処分対象期間の約11カ月で約400億円を売り上げた。ただ、価格競争で買い取り価格を高く設定したため利益は約800万円だったといい、「(約5億9千万円という)税金はとても払いきれない」と話す。

■金の密輸グループとの関わり調査か

 今回の調査の背景には、後を絶たない金の密輸事件がある。

 密輸グループは、消費税がかからない国で金地金を購入し、日本に密輸して消費税込みで販売する。本来は持ち込み時に消費税が課される税関を通さないことで、買った価格と同じ価格で売っても10%の消費税分の利ざやが得られるという手口だ。

 財務省によると、昨年1年間の金密輸の摘発件数は、前年の20分の1近くにまで減ったが、消費税率が10%に引き上げられた昨年10月以降は再び増加した。金地金の密輸に詳しい関係者は「密輸したような出元不明の金は大手で買い取ってくれないので中小の買い取り業者に持ち込む。その際は足跡が残らないように身分を偽るのが一般的」と言う。

 今回の調査で国税当局は、金地金の取引に密輸グループがかかわり、税逃れをしていないかを調べる目的だったとみられる。アステリアの社長だった男性は「うちは買い取り価格が高かったのでうわさで客が集まったのだと思う」とし、密輸グループとの関係は「一切ない」と否定した。

 今回の課税処分について、EY税理士法人の角田伸広会長は「偽物の身分証明書が常習的に使われていたとすれば、買い取り業者が偽物と知りながら取引していたと国税当局が判断し、正しい帳簿や請求書が存在していないと認定したのではないか」としたうえで「買い取り業者が本人確認をどこまでできるかは議論のあるところと思うが、偽物の身分証明書が使われたとわかった以上、国税当局として見過ごすわけにはいかないのではないか」と指摘。「業者側が身分証の真偽まで確認しなければ税務リスクが生じるということを示している」とみている。(中野浩至)


買取業者から商社が購入して輸出している量が相当あり、以前、財務省が商社に「あやしい品を買うな」と圧力をかけたら輸出が減ったということがありましたが、今回は買取業者を締め付けたんですね。

2019年02月20日


密輸された場合、本来輸入時に入る税金が国に入らないので当然問題ですが、さらに輸出される場合、商社は買取業者に支払った消費税の還付を受けるため国の持ち出しになるので、さらに問題ですね。