(朝日新聞 2020/08/27)
関東大震災で起きた朝鮮人虐殺を疑問視する団体「日本女性の会 そよ風」が昨年9月に開いた集会での発言を、東京都は人権尊重条例に基づく「ヘイトスピーチ」と認定した。一方、都は同じ団体が今年の集会を開くために申請した公園の使用は許可した。その背景を探った。
関東大震災が起きた9月1日。東京都墨田区の都立横網町公園にある朝鮮人犠牲者追悼碑前では、1974年から日朝協会などの実行委員会が追悼式典を開いてきた。

▲昨年の追悼式典で朝鮮人犠牲者追悼碑に供花する参列者ら=2019年9月1日午後0時47分、東京都墨田区の横網町公園、北野隆一撮影
一方、「そよ風」は、碑に刻まれた朝鮮人犠牲者数「6千余名」には「根拠がない」として、2016年から碑の撤去を都議らに働きかけ、17年から同じ公園で同時刻に「真実の慰霊祭」と称する集会を始めた。昨年は集会に抗議する人たちとの間で衝突が起き、逮捕者が出た。「そよ風」関係者のブログには「目標は両方の慰霊祭が許可されないこと」と書かれている。

▲昨年の追悼式典で朝鮮人犠牲者追悼碑に供花する参列者ら=2019年9月1日午後0時47分、東京都墨田区の横網町公園、北野隆一撮影
一方、「そよ風」は、碑に刻まれた朝鮮人犠牲者数「6千余名」には「根拠がない」として、2016年から碑の撤去を都議らに働きかけ、17年から同じ公園で同時刻に「真実の慰霊祭」と称する集会を始めた。昨年は集会に抗議する人たちとの間で衝突が起き、逮捕者が出た。「そよ風」関係者のブログには「目標は両方の慰霊祭が許可されないこと」と書かれている。

▲朝鮮人虐殺を否定する団体「そよ風」が昨年開いた「慰霊祭」。「六千人虐殺の濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を晴らそう」と書かれた看板が立てられた=2019年9月1日午後0時16分、東京都墨田区の横網町公園、北野隆一撮影
昨年9月の集会で「不逞(ふてい)在日朝鮮人によって身内を殺され、家を焼かれた多くの日本人」などと参加者が発言したことに対し、「ヘイトスピーチではないか」との通報が都にあった。
16年にヘイトスピーチ対策法(解消法)が制定された。ヘイトスピーチの定義を「在日外国人や子孫らに対する差別を助長する目的で、危害を加えると告知、侮蔑するなど、排除を扇動する言動」とした。罰則はないが、自治体に啓発や相談体制の整備を求めた。都では昨年10月、「都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」が制定された。
通報を受け、都は条例に基づく審査会を今年7月に2回開いた。その結果、「不逞朝鮮人により身内を殺され、家を焼かれ」などの発言が「別の集会への挑発的意図をもって発せられ、朝鮮人をおとしめ、傷つける表現」で、「不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)にあたる」と認定し、8月3日に公表した。
ただ、都が公表したのはヘイトスピーチと認定した発言内容だけで、集会の主催団体や発言者名は明かさず、団体や発言者への通知もしなかった。ヘイトスピーチと認定しても、都の対応は「表現活動の概要公表」と「表現内容の拡散防止の措置」に限られる。都人権部の担当者は「条例は国の理念法に基づき、制裁よりも啓発の側面が強い」と説明する。
一方、都の条例には、不当な差別的言動を防ぐため、公共施設の利用を制限できる規定もある。制限するには、(1)ヘイトスピーチが行われる可能性が高い(言動要件)(2)ヘイトスピーチに起因する紛争などで安全管理への支障が予想される(迷惑要件)――の両要件を必要とする。
実行委と「そよ風」は来月1日にも集会を予定し、公園の使用を都に申請した。都は当初、双方に「管理者が中止を指示したら従う」などとした誓約書の提出を求めたが、実行委側が「集会運営を萎縮させる」と反発。都は誓約書を求めない方針に転換し、今月17日、実行委とそよ風の双方に使用許可を出した。

▲都のヘイトスピーチ認定と公園使用許可の流れ
■利用制限にハードル 自治体で異なる要件
昨年の集会でのヘイトスピーチを認定しながら、今年も「そよ風」に使用を許可した理由について、都公園緑地部の担当者は「『差別的言動はしない』と書いた注意事項を守る意思が確認できたため」と説明する。ヘイトスピーチはしないと文書で示し、口頭で確認したことで、利用を制限できる二つの要件には該当しないと判断したという。
昨年の集会でのヘイトスピーチを認定しながら、今年も「そよ風」に使用を許可した理由について、都公園緑地部の担当者は「『差別的言動はしない』と書いた注意事項を守る意思が確認できたため」と説明する。ヘイトスピーチはしないと文書で示し、口頭で確認したことで、利用を制限できる二つの要件には該当しないと判断したという。
憲法が保障する表現の自由、集会の自由を踏まえ、地方自治法では「正当な理由がない限り、住民の公の施設の利用を拒んではならない」とされていることも背景にあるという。
同様の条例をもつ京都府や京都市は、言動要件か迷惑要件のいずれかだけで施設の利用制限を可能としている。京都府人権啓発推進室の担当者は「京都では09年に朝鮮学校への攻撃があったが、当時は法律がなく対処に限界があった。ヘイトスピーチ解消法ができたことを踏まえ、ヘイトスピーチを防ぐため、いずれかの要件だけでも対応できると判断した」と説明する。
ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は「昨年のヘイトスピーチを認定しながら会場使用を規制できないのはおかしい。都は今年も差別的発言があったら来年は許可しないなどの条件を課し、施設利用の制限の要件を見直すべきだ」と指摘する。
朝日新聞は「そよ風」に対し、団体関係者を通じて取材を申し入れたが、「取材は受け付けない」と答えた。
一方、17年に東京都江東区で、18年には京都府南丹市で、ヘイトスピーチに反対していた精神科医の香山リカ・立教大教授の講演会が中止された。いずれも抗議の電話や街頭宣伝の予告などを受け、主催する区の社会福祉協議会や南丹市が「安全確保」を理由に中止を決めたことに対し、対応を疑問視する意見が出た。(西村奈緒美、編集委員・北野隆一)
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〈関東大震災時の朝鮮人虐殺〉
約10万5千人が犠牲になった関東大震災で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「暴動を起こした」などのデマを信じた自警団や警察、軍により朝鮮人や中国人らが多数殺害された。政府の中央防災会議報告書などによると犠牲者は1千~数千人とみられる。2017年3月、都議会で自民都議(故人)が都立公園の追悼碑に刻まれた「犠牲者6千余名」は過大と指摘し、小池百合子知事に碑の撤去と朝鮮人の追悼式典への追悼文送付の再考を求めた。歴代知事は追悼文を送っていたが、小池知事は同年9月の式典から送付を見送っている。
>2017年3月、都議会で自民都議(故人)が
今年三月の都議会一般質問で、古賀俊昭議員(自民)が、碑文にある六千余名という数を「根拠が希薄」とした上で、追悼式の案内状にも「六千余名、虐殺の文言がある」と指摘。「知事が歴史をゆがめる行為に加担することになりかねず、追悼の辞の発信を再考すべきだ」と求めた。
これに対し、小池知事は「追悼文は毎年、慣例的に送付してきた。今後については私自身がよく目を通した上で適切に判断する」と答弁しており、都側はこの質疑が「方針を見直すきっかけの一つになった」と認めた。
2017年08月24日

NHKの1945ひろしまタイムラインの”戦犯国人は出ていけ”とどう違うの?
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