(日本経済新聞 2020/11/11)

【北京=羽田野主】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は11日、香港の独立を支持したり、中国政府の香港への権限行使を拒んだりする香港立法会(議会)議員の資格を剥奪する方針を決めた。香港政府は同日、この決定に従って4人の民主派議員の資格をなくすと発表した。反発した香港民主派は抗議のため、集団辞職すると表明した。

香港民主化運動への支援を外国に求めた議員や国家の安全に危害を加えたと判断した議員も、資格剥奪の対象とする。新型コロナウイルスの流行を理由に2021年へ1年延期した立法会選挙の候補者にも適用する。

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習近平(シー・ジンピン)指導部の意向次第で香港の民主派議員を排除しやすくなる。6月末に施行した香港国家安全維持法に続く中国当局による香港の統制強化策といえる。高度の自治を保障した「一国二制度」の後退がより鮮明になった。

香港政府は11日、楊岳橋、郭栄鏗、郭家麒、梁継昌の4氏の議員資格を剥奪すると発表した。4氏はいずれも民主派の議員で、訪米するなどして米国に支援を求めていたことが問題視された可能性がある。

反発した香港の民主派議員は11日、緊急会見を開き、失職した4人に加えて、15人の民主派議員が一斉に辞職すると表明した。立法会(定数70議席)の民主派は2人に激減する。


(日本経済新聞 2020/11/11)

【香港=木原雄士】中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は11日、香港立法会(議会)から民主派議員の排除に乗り出した。米国の政権移行期という国際政治の空白を突いて、民意を映す議会から反対勢力を追い出す異例の決定だ。「核心的利益」と位置づける香港問題で一歩も譲らない姿勢を鮮明にした。

「一国二制度は消えてしまった」。中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の方針を受けて議員資格を失った郭家麒氏はこうつぶやいた。失職した4人は穏健な民主派とされ、10年以上の議員経験を持つ人もいる。

香港の選挙管理当局は7月、今回失職した4人について9月に予定していた立法会選挙への立候補を認めないと決めた。米国に香港制裁を求めるなど外国勢力とのつながりを問題にした。しかし、立法会選が1年延期となり、全人代常務委はいったん4人の任期延長を認めた。

中国がこのタイミングで4人を失職に追い込んだのは、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領への政権移行が本格化する前に民主派を抑え込む狙いが透ける。バイデン氏は人権や民主主義の価値観を重視し、香港問題に強硬姿勢をとる可能性もある。中国側は否定したが、政権移行で米国が混乱の渦中にある中、揺さぶりをかけたとの見方もある。

香港中文大学の蔡子強・高級講師は「香港国家安全維持法によって急進的な民主派が打撃を受けた。今回の決定は平和的に戦う穏健な民主派ですら抑圧されることを明確に示した」と話す。

民主派は香港国家安全法で過激なデモを封じられたため、選挙を通じて民意を示す戦略を立てていた。亜細亜大学の遊川和郎教授は全人代の決定を「2021年の立法会選をにらんで、民主派の排除を進める狙いがある」とみる。

民主派は失職した4人以外に15人が一斉辞職を表明した。定数70の立法会は親中派41、民主派2、欠員27のいびつな構成になる見通し。議会の形骸化が一段と進む。

香港の「一国二制度」にも決定的な打撃になる。香港基本法は立法会について有権者が1人1票を投じる「普通選挙」を目標にすると明記する。現在の選挙制度は親中派に有利だが、一定程度は民意が反映される。ただ中国に批判的な議員をいつでも排除できるようになれば、選挙で民意を問う意味がなくなる。

香港の親中派は司法制度にも大きな問題があると主張する。暴動罪で起訴されたデモ参加者が無罪になるなど、判決が「民主派寄り」と問題視する。中国が香港の議員だけでなく裁判官の「選別」に乗り出せば、ビジネス都市として香港が強みとしてきた司法制度にも影響が及ぶ。

「香港に住む人々の国家意識と愛国精神を増強する」。中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月下旬に採択した方針には香港への統制強化がにじむ。香港中文大の蔡氏は「香港は完全な専制体制になりつつある」と危機感をあらわにした。