(朝日新聞 2021/03/17)
無料通信アプリ「LINE」利用者の個人情報が中国の業務委託先から閲覧可能になっていた問題で、サービスを活用する全国の自治体に困惑が広がっている。LINE側に事実確認を求めるなど対応に追われている。
LINEは、公共サービスをLINEアプリで利用できる仕組みを整えるなど、自治体との連携を積極的に進めている。
全国で初めてLINEによる住民票の写しの申請受け付けを始めた千葉県市川市は17日、受け付けを一時停止すると発表した。村越祐民市長は「市民の情報が第三者に流れるリスクが払拭(ふっしょく)されない限り、市民に安心して利用していただけない」と話した。
市によると、申請時に顔写真付きの身分証明書を送る必要がある住民票などの受け付けを停止する。申請数は昨年4月から今年1月までに約1600件で全体の1%という。
神奈川県は昨年8月、行政のデジタル化を進めようと、LINE執行役員の江口清貴氏を県のCIO(情報統括責任者)兼CDO(データ統括責任者)に任命した。新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養する人の健康状態の確認などにもLINEを活用している。包括協定の窓口である県未来創生課の担当者は「情報を収集したい」としている。
2016年にLINEと連携協定を締結した福岡市。子育てや新型コロナ対応などの様々な情報発信や、粗大ごみの回収受け付けなどの市民サービスに活用してきた。
朝日新聞の報道を受け、市は「事実関係を確認中」と説明する。市内に本社を置くLINE子会社に事実関係を問い合わせたが、個別での回答は得られていないという。
提供サービスのうち、災害時の避難場所の案内や、道路や公園などの損傷を見つけた際の通報には、利用者の位置情報が使われている。新型コロナのワクチン接種の予約でもLINEの活用を予定する。市の担当者は「個人情報の安全な管理は最優先。今後LINEから十分な説明がなされるものだと思う」と話した。
■900自治体が公式アカウント
LINEの広報担当者によると、約900の自治体がLINEの公式アカウントを開設している。昨年7月時点で300ほどだったが、新型コロナの影響で急増したという。
大阪府は医療従事者向けの新型コロナのワクチン接種の予約で、LINEを活用する予定だ。吉村洋文知事は17日、記者団の取材に「あってはならない」と話した。その上で「ツールの安全性が確保できないのであれば、国としてある程度の方向性が示されないと自治体で判断するのは難しい」と国に注文した。
東京都は、新型コロナに感染した自宅療養者の健康観察や生活支援をする「フォローアップセンター」でLINEを使っている。健康状態や住所などの個人情報はLINEとは別のシステムに入力されるため、担当者は「現時点では患者の個人情報に外部からアクセスできる状況にはないと考えている。今後の情報を注視して、必要があれば対応を検討する」と話す。
横浜市は昨年4月に開設し、粗大ごみ回収の申し込みを受け付けている。担当課によると、利用者は申し込みの際、名前や住所、電話番号などの個人情報を登録する。これまでに16万7千件(1月末時点)の利用があった。
報道を受けて担当課は、サービスの委託業者にLINEへヒアリングするよう依頼した。サービスの継続については今後、検討していくという。公式アカウントを所管する市民局広報課によると、「友達」追加の際に個人情報がひもづけられることはなく、現時点での公式アカウントの利用停止は考えていないという。
LINEを使って子どもや保護者から相談を受けている名古屋市は、継続するかどうか「(事業者から)話を聞いて判断する」としている。
同市は、不登校などの悩みを抱える子どもと保護者を対象に自宅へ訪問する事業の中で、18年12月から支援をしている子どもらの相談をLINEでも受けている。19年度は子ども10人から1218件の相談があった。昨年2月からLINEを使って相談を受ける時間や対象者を限定してからは、利用者はほぼゼロで、今年度は1月末までで相談実績はないという。
大阪市は府や堺市と共同で、LINEで子育ての相談に応じる事業を5月に始める予定だ。松井一郎市長は17日の記者会見で、「住民の声を聞くツールとしては非常に有効。今すぐにすべての行政での活用をやめることは考えない」と語り、状況を注視する考えを示した。
(朝日新聞 2021/03/17)
国内の月間利用者が8600万人に上る無料通信アプリを運営する「LINE(ライン)」(本社・東京都)が、利用者間でメッセージをやりとりするサービス「トーク」に投稿されたすべての画像と動画を韓国内のサーバーに保管していることがわかった。同社は、現行のプライバシーポリシー(個人情報に関する指針)ではそのような状況が利用者に十分伝わっていないとして記述を見直す方針で、データも日本国内に移転するとしている。
同社によると、日本国内の利用者が「トーク」でやりとりしたデータのうち、画像や動画のすべてをLINEを実質的に傘下に持つ韓国IT大手ネイバーのサーバーに保管している。そうした運用は、2012年ごろに「トーク」で画像や動画を扱うようになって以来続いているという。
韓国のサーバーにはスマホ決済「LINE Pay(ペイ)」の取引情報も置かれていた。氏名や住所などは含まれていないとしている。
このサーバーには、韓国にあるLINEの子会社「LINEプラス」の社員がアクセスする権限を持っていた。アクセス権を持つ社員の数や業務内容、アクセス履歴の有無は「調査中」としている。データは複数のサーバーに分散化する特殊な処理がなされており、アクセス権を持つ社員も具体的な画像内容は見られないという。
こうした運用の経緯についてLINEの舛田淳・取締役最高戦略マーケティング責任者は、「サーバー構築や費用の面で(日本と比べ)韓国の方が有利だった」と説明した。
膨大なデータを海外のサーバーで保管する企業は珍しくない。同社は指針で、国外に個人情報を提供するケースとして、「(インフラの構築・運用など)一部の業務を第三者に委託する場合があり、パーソナルデータの全部または一部を委託先に預託することがある」としている。
この記述について、1日にLINEと経営統合したZホールディングス(HD)の中谷昇常務執行役員は取材に、「(利用者への)説明の仕方として、自分の画像や動画が日本の外にいくとは想像しがたいと思う」と述べ、不備があるとの見解を示した。その上で、指針を見直し、今年半ば以降にデータを国内移転する計画を進めていることを明らかにした。
ZHDは、すでに明らかになった中国の委託先に日本のサーバーへのアクセス権を付与していた問題などを含め、政府の個人情報保護委員会に報告している。
平井卓也デジタル改革相は17日の衆院内閣委員会で、「個人情報保護委員会で十分に調査をし、不適切と判断した場合には訂正していくことが必要だ」と述べた。菅義偉首相は17日、政府内でのLINE利用の見直しについて記者団に問われ、「見直しということではなくて、まず事実関係について確認している状況だ」と述べた。加藤勝信官房長官は会見で、「関係政府機関において事実関係を確認の上、適切に対応していくことになる」と述べた。(編集委員・峯村健司、篠健一郎)
◇LINEがコメント
日本国内にある個人情報などのデータへの中国拠点からのアクセスなどが発覚したLINEは17日、コメントを発表した。日本の利用者の個人情報などにアクセスする必要がある業務は「国内移転を進めている」とした。親会社のZホールディングスが今後、有識者でつくる第三者委員会で問題を検証する。
LINEはコメントで、「外部からの不正アクセスや情報漏洩(ろうえい)は発生していない」と説明した。「ご不安やご心配をおかけすることになり、誠に申し訳ございません」と謝罪し、「今後、各国の法制度の環境変化に合わせて、さらに先回りした対応や情報開示を実施する」と表明した。データの海外移転は「国名の列挙などを含め、よりユーザーに明確で分かりやすい説明を行う」としつつ、「グローバル企業として、海外拠点での開発は必要なもの」と強調した。

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