(毎日新聞 2023/04/19)
 元外国籍であることを理由に入会を断られ精神的苦痛を受けたなどとして、三重県桑名市の40代男性が愛岐カントリークラブ(岐阜県可児市)に対し、慰謝料など約330万円の損害賠償を求めた訴訟で、津地裁四日市支部は19日、男性の請求を棄却した。私的団体であるゴルフクラブが元外国籍であることを理由に入会を拒否することに違法性はないと判断した。男性は控訴する方針。

 判決によると、元韓国籍で2018年に日本国籍を取得した男性は22年2月、知人と同クラブでプレーし、入会を申し込んだ。その後、クラブ側から「元外国籍を含む外国籍の会員の枠に空きがないためすぐに入会することはできない」として入会を断られた。男性は「法の下の平等」を定めた憲法14条に抵触する、などと主張していた。

 判決理由で升川智道裁判長(日比野幹裁判長代読)は、「元外国籍であることが入会拒否の唯一の理由ではない」というクラブ側の主張を退け、入会拒否は元外国籍であることが理由だと認めた。一方で、クラブは会員となるために正会員2人の紹介と理事会の承認を得る必要があるなど「会員同士の人的つながりが強い閉鎖的かつ私的な団体」だと指摘。「平等の権利への侵害の程度は憲法の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるとは認められない」とした。

 原告代理人の尾市淳二弁護士は「非常に残念。時代の流れとも逆行する」と話した。男性は「まったく納得できない。差別を受け精神的苦痛を受けることも私的団体内であれば許されるのか」と述べた。【寺原多恵子】


(朝日新聞 2023/04/19)

 元外国籍を理由にゴルフクラブへの入会を拒むのは法的に許されるのか。この点が争われた訴訟の判決で津地裁四日市支部(升川智道裁判長)は19日、「違法性は認められない」との判断を示し、原告の請求を棄却した。ただ、こうした入会制限について「合理的な理由があるかは疑問もある」と述べた。

 原告は会社経営の40代男性=三重県桑名市。在日韓国人3世で、2018年に日本国籍を取得。22年4月に元韓国籍を理由に愛岐カントリークラブ(岐阜県可児市)から入会を拒まれ、精神的苦痛を受けたとして330万円の損害賠償をクラブ側に求める訴えを起こした。

 判決は、私人である団体は、憲法21条で結社の自由が保障されており、構成員の加入条件について原則として自由に決められると指摘。団体内の問題に法の介入が許されるのは、個人への権利侵害の程度が「社会的に許容し得る限界を超えるような例外的な場合に限られる」との判断枠組みを示した。

 判決はまず、クラブ側が元外国籍を理由に入会を拒否したと認定。その上でクラブが「閉鎖的かつ私的な団体」とし、ゴルフは「社会生活を営むに当たって必要不可欠とはいえない」と指摘。入会拒否によって男性が被る不利益は「例外的な場合」に当たらないと結論づけ、男性の「入会拒否は法の下の平等を定めた憲法14条に反する」との主張を退けた。

 原告の男性は「今後も『元外国籍』として不利益を受け続けなければならないのか」と判決を批判し、控訴する方針を明らかにした。一方、クラブ側の代理人弁護士は「まずは判決をしっかりと検討する」とした。(松原央)

■割れる司法判断 弁護人は「世の中の風潮に合っていない」

 外国籍を理由にゴルフクラブへの入会を拒否したことの是非が争われた訴訟は過去にもあったが、司法の判断は割れている。

 栃木県内のゴルフ場で在日韓国人の男性経営者が入会を拒否された訴訟では、1995年の東京地裁判決が「日本国籍であることを会員の条件にすることには、合理的な理由がない」と指摘。「法の下の平等を定めた憲法の趣旨に反して違法と評価せざるを得ない」との判断を示し、原告の男性が勝訴した。

 一方、在日韓国人の男性が千葉県内のゴルフ場への入会を拒否された訴訟では、2002年の東京高裁が「私的な団体としてのゴルフクラブが、構成員の資格を国籍で制限しても、社会的に許容し得る限界を超えて平等の権利が侵害されているとはいえない」と判断。男性の訴えを退ける判決を言い渡した。 19日の津地裁四日市支部判決は、この東京高裁判決の判断を踏襲した形だ。

 一方、原告男性の代理人弁護士はこの日の判決について「いまの世の中の風潮に合っていない」と指摘。判決は元外国籍であることを理由に入会制限することに疑念を呈したが、「不当な差別だと認定するべきだった」とも批判した。

 原告男性の人権救済の申し立てに対し、三重県弁護士会は昨年12月に「(国際条約で定めた)人種差別に該当する違法なもの」と指摘。元外国籍を理由に入会拒否をしないよう勧告していた。代理人弁護士は「この判断と食い違う非常に残念な判決だ」と話した。(斉藤佑介)

2022年07月14日