(日本経済新聞 2023/05/30)
〇韓国軍は指針撤回を用意

韓国海軍が2018年12月、自衛隊機に火器管制レーダーを照射した問題を巡る日韓両政府の協議が詰めの段階に入った。韓国側は照射の事実を否定しているものの、その後に作成した軍の指針を撤回する用意がある。日本は再発防止を確実にすることで、韓国との防衛協力を前に進める方針だ。

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▲海上自衛隊のP1哨戒機。2018年12月に同型機が韓国軍の艦艇から火器管制レーダーを照射された

浜田靖一防衛相と韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相が6月3日にもシンガポールで会談する。日韓防衛相の会談はおよそ3年半ぶりとなる。両氏は同月2〜4日に同地で開くアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席する。

レーダー照射問題は韓国が革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権下にあった18年12月20日に起きた。日本海の能登半島沖を警戒監視していた海自厚木基地(神奈川県)所属のP1哨戒機に、韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」級が火器管制レーダーを当てた。

レーダー照射は本来、攻撃前に標的の位置を測定する目的で使う。武力衝突を誘発しかねない危険な行為で、日本は抗議し再発防止を求めた。

抗議を受けた韓国側は探索レーダーを使い北朝鮮の遭難船を捜していたと主張した。「哨戒機が低空飛行で韓国軍艦を威嚇した」と反論し日本側に謝罪を求めた。

防衛省は19年1月に「韓国側が事実とは全く異なる主張を繰り返している。客観的、中立的な事実認定に応じる姿勢が見られない」との最終見解を発表した。

韓国側は照射の事実を認めず、同年2月には「日本哨戒機対応指針」を海軍内に通達した。自衛隊機が2回警告にこたえず近距離を飛んだ場合、レーダーを照射すると定めている。自衛隊機に限った異例の対応だった。

日本政府は自衛隊のみを敵視するような指針の撤廃が必要との立場をとる。韓国の姿勢が変わったのは22年5月に保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発足してからだ。

尹政権はレーダー照射の指針を取り下げる検討を進めてきた。防衛省はこれが実現すれば、同様の事案の再発を防ぐ環境が整うと判断する。

岸田文雄首相と尹大統領は今年3月以降に3度会談し安全保障協力を強めると確かめた。防衛関係の修復の動きは顕著だ。

4月には18年以降に途絶えた外務・防衛当局の日韓安全保障対話を5年ぶりに開いた。海自の護衛艦は5月29日、韓国の釜山港に自衛艦旗(旭日旗)を掲げて入港した。海自艦艇が韓国の港に入るのは17年以来となる。

韓国艦艇がレーダーを照射したとする日本側の見解は変わらない。6月の日韓防衛相会談で、浜田氏は李氏に事実認定の表明は求めない意向だ。

懸案だったレーダー照射問題を収拾できれば、安保協力は18年以前の状況に戻る。滞っていた海自と韓国海軍の2国間訓練の速やかな再開を調整する。

海自トップの酒井良海上幕僚長は30日の記者会見で、レーダー照射問題の収拾を巡り「日米韓の連携を阻害しないよう日韓の連携も強化する」と話した。韓国軍との共同訓練について「機は熟している。速やかに交流を再開できる」と語った。

シンガポールでは日米韓3カ国の防衛相会談も予定する。北朝鮮のミサイル発射情報を即時に共有する取り組みを早期に始める調整を急ぐ。

米国は同盟国とともに抑止力や対処力を高める「統合抑止」を掲げる。日米韓の安保連携を強めるためにも、協力の妨げとなっていたレーダー照射問題の収拾が必要だとして日韓両政府に対応を望んでいた。(竹内悠介、ソウル=甲原潤之介)