(朝日新聞 2023/08/01)
 ウィーンで7月31日から始まった核不拡散条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会で、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出計画をめぐり、「計画の強行をやめるべきだ」と主張する中国と、日本の代表が答弁権を行使して議論し合う一幕があった。

 中国の代表者は演説で、「原子力の平和利用は、自然環境や人間の健康を犠牲にして達成されるべきではない」と述べた上で、日本政府に対し、「『核汚染水』の海洋放出の決定に対する国際社会の懸念に応えるべきだ」などと求めた。

 これに対して日本は、放出するのは「汚染水」ではなく、多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)での「処理水」であると強調。国際原子力機関(IAEA)による審査で「関連する国際的な安全基準に合致し、人や環境への影響は無視できるもの」と結論付けられた、と反論した。また、審査には中国も含めた国々の専門家も参加しており、計画は「『強行』では全くない」と強調した。

 さらに中国は、IAEAの審査は、放出計画を承認するものではない、と主張。「汚染水データは検証されていない。真実か、正確かどうかもわからない」と疑問視した。

 これに対し日本は2度目の答弁権で、「科学的な根拠のない疑念を投げかけることは危険で、IAEAの権威と信頼性を損なうことになる」と懸念を示した。

 松野博一官房長官は1日午前の会見で、「放出を予定しているのは、汚染水ではなく、国際安全基準を満たすアルプス処理水であり、この取り扱いについては日本はこれまで、国際法を厳守し、また、国際慣行を十分に踏まえて、環境および人の健康と安全への影響を最大限に考慮した措置を取ってきている」と語った。(ロンドン=金成隆一)