(朝日新聞 2023/10/22)
 フィリピン政府は22日、中国と領有権を争う南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺で、自国の沿岸警備隊の船と補給船が立て続けに、中国の海警局などの船に衝突されたと発表した。この海域では二国間で一触即発の事態が続くが、実際に船舶同士が衝突するのは異例。双方の政府が強く批判しあう事態になっている。

 フィリピン政府によると、衝突は、フィリピンが実効支配する南沙諸島のアユンギン礁沖で発生。補給船は沿岸警備隊の船2隻に護衛されながら、アユンギン礁に駐屯する軍に食料や燃料を運んでいたという。

 フィリピン政府の説明では、22日午前、アユンギン礁から約25キロの海域で、中国海警局の船が補給船の進路をふさぐ形で航行し、衝突した。さらに、普段は漁業を営む中国の「海上民兵」の船も沿岸警備隊の巡視船に衝突してきた。別の補給船が中国の妨害をぎりぎりでかわし、補給活動は完了したという。

 国防省や軍などでつくる「西フィリピン海(南シナ海)タスクフォース」は声明で、「フィリピンの主権や管轄権を侵害し、国際法を露骨に無視した、危険で無責任な違法行為だ」と強く非難した。

■米国は同調、中国は反論

 海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)したい米国も、素早く歩調を合わせた。

 カールソン・駐フィリピン米国大使はX(旧ツイッター)に「米国は、フィリピンの合法的な補給任務に対する中国の妨害行為を非難する」と投稿。同盟国と共にフィリピンの主権と「自由で開かれたインド太平洋」を守ると表明した。

 中国海警局は22日に声明を出し、衝突・接触があったことを認めた上で、フィリピンの発表に反論。「フィリピンの船が中国の海域に無断で侵入したため阻止した」とし、フィリピン船が「警告を無視して危険な方法で接近してきた」と主張。「中国に難癖をつけ、事態をエスカレートさせるものだ。責任はすべてフィリピン側にある」とした。

 中国外務省も22日夜、報道官が声明を出し、「フィリピン側は絶えず仁愛礁(アユンギン礁の中国名)に船を侵入させて挑発し、偽りの情報を流布して地域の平和と安定を破壊している」として、フィリピン側の動きに「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。

 南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張する中国に対し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年、中国の主張には法的根拠がないと否定する判決を出している。アユンギン礁の管轄権についても否定されたが、中国は判決を受け入れず、フィリピン船への妨害活動を繰り返す。

 今年2月には、アユンギン礁近くでフィリピン船が中国海警局の船から「軍用級」とされるレーザーの照射を受け、乗組員が一時的に失明する事件もあった。 8月にも中国公船がフィリピンの補給船に放水銃を発射し、航行を妨害した。

 これまでも両国間では一触即発の事態が起きてきたが、船同士の衝突にまでは発展していなかった。今回、中国が妨害行為をさらに一段エスカレートさせた形で、対立がさらに深刻化する恐れがある。(バンコク=大部俊哉)


(読売新聞 2023/10/23)

 フィリピン政府は22日、南シナ海で実効支配するアユンギン礁(中国名・仁愛礁)付近で同日朝、補給活動中の比船に中国海警局の船が衝突したと発表した。この海域では今月上旬、比船の進路を妨害しようとした中国の海警船が衝突寸前の距離まで接近するなど緊張が高まっている。

 発表によると、別の中国船も近くにいた比沿岸警備隊の船に近づき、衝突した。補給活動は別の船が完了させた。比当局は「フィリピンの主権を侵害し、国連海洋法条約などを無視した違法行為」と強く非難した。

 ロイター通信によると、中国海警局は「軽い衝突」があったことを認め、比側の補給活動を「合法的に」阻止したと主張した。

 2016年の仲裁裁判所による判決はアユンギン礁を比側の排他的経済水域(EEZ)と認めている。(ハノイ支局 安田信介)

2023年08月09日