(朝日新聞 2024/01/28)
 群馬県立公園「群馬の森」(高崎市)にある「記憶 反省 そして友好」と刻んだ朝鮮人犠牲者の追悼碑が29日、県の代執行で撤去される。植民地時代の負の歴史を伝えるとともに、未来にむけて平和と友好を結ぶための碑だった。28日、撤去を惜しむ人々が集い、それぞれの思いを共有した。(高木智子、吉村駿)

9:00 追悼碑の周りはひっそり。「記憶 反省 そして友好」と刻まれた追悼碑の銘板前に、折り鶴や花束がおかれていた。ハート形の紙に「話し合い」などのメッセージも。

 イチゴ狩りに行くという20代の女性2人が立ち寄って、手をあわせていた。

10:00 「追悼碑を守る会」のメンバーの男性が碑に到着。「これから裁判と思っていた矢先。甘かったのかも」と話す。明日から碑を見られなくなるので、見納めに訪れたという。太陽が碑に反射して輝く様子をみて、「新たな運動を続けたい」。

10:05 法事に行く途中に立ち寄ったという玉村町の石川真男町長。「植民地支配をしていた加害者が、きちんと記憶していくことが大事。記憶と反省があって、その先に友好があるという、碑の言葉のとおり」「ヘイトの熱風のなかで碑が撤去されるのか。だとしても、歴史を変えることはできない」

10:30 報道で撤去されると知った近隣の男性(69)は碑に手をあわせた。碑の存在を知っていたが、実際に足を運んだのは初めて。「碑を残せるものなら、残した方がいい。友好の証しだし、結構、朝鮮の労働者の方が亡くなっていますよね」

10:50 碑を訪れた女性が「よく県も壊す気になるわね。誰にどれだけの迷惑をかけたのかねえ」と語る。

 近くにいた守る会のメンバー神垣ひろしさんは、病気で発声が難しいが、「悔しい。知事は何を考えているのか」と器具をつかって声を振り絞った。

11:00 追悼碑を守る会のメンバーが碑の前で記念撮影をしたり、碑への思いを静かに語りあったりした。

 代表委員の川口正昭さん(64)は「まだ実感はないけれど、本当に碑に申し訳ない。また記憶して反省することが増えたなあ」。宮川邦雄代表委員は「群馬の良心のシンボルでもある追悼碑が撤去されるのは断腸の思い。素晴らしい碑だったんだとつくづく思う」。

11:30 碑の前で、前橋市の代田清さん(83)が「アリラン」をハーモニカで演奏。碑を建てる会の時代から関わる1人だった。「悔しい。撤去されたとしても、気持ちまで撤去される訳じゃない」。その後、「ふるさと」を伴奏し、居合わせた人々と合唱した。

11:40 植民地支配を正当化する話を大声でする男性が現れる。守る会のメンバーが「植民地支配したからといって、何をしていいわけじゃない」と抗議。その後、警察官や公園管理の職員が男性に対し「離れましょう」と言う。

13:00 サイクリングに来た男性も碑の前に。近くに住んでいるため、「群馬の森」には何度も来たことがあるが、碑を見るのは初めて。報道で気になって訪れ、スマホで撮影した。「撤去には反対ですね」と言葉少なに語った。

13:10 高崎市内の女性(55)がモップなどを使って碑のまわりのほこりや落ち葉を片付けた。建てた人への敬意と犠牲者への追悼を込めたという。「本当に撤去されてしまうのだろうか」とまだ信じられないという。「碑は公園の片隅にあって、だれかの邪魔になるのかな。もともと県も一緒に建てたのに……」。

13:20 東京都世田谷区の会社員男性(55)が花束を持って碑の前に。撤去方針が伝えられる前後に、SNSで追悼碑の存在を知ったという。「歴史を知らなくて申し訳ない。碑がなくなったとしても、自分たちの責任で受け継がないといけないという気持ちを犠牲者に伝えました」

14:13 近くに住む40代の女性は、小学1年の長女(7)と一緒に碑の前で手を合わせた。「撤去されると知り、最後にこの目で見ようと思ってきた。これから大人になる娘にとって、近隣の国との歴史や関わり方を考える機会にしてほしいと思っている」

14:20 右翼とみられる男性が碑へ。同時に、多数の警察官が出動し、厳戒態勢に。

14:27 右翼と見られる男性が碑の近くへ。守る会のメンバーの名前を挙げて「恥を知れ」と叫び、警察と衝突。警察が「大きな声を出さないでください」「公園の事業者の迷惑になるのでお静かに」とアナウンス。

14:40 高崎市の会社員女性(52)はいつも遊びに来る群馬の森に追悼碑があることを最近SNSで知った。撤去されるので、子どもと来てみたら、警察がずらりといて物々しい雰囲気のうえ、怒鳴り声が聞こえて驚いたという。「ヘイトがこんなに身近にあるんだ」と驚いていた。

 「碑は、いまあるのだから、おいておけばいい。せっかく友好の碑なのに。わざわざ撤去するなんて話で、群馬が目立って本当に恥ずかしい。隣国とは仲良くしたらいい」

15:00 警察による厳戒態勢のなか、追悼碑の撤去に抗議する有志による集いが開かれ、約200人が碑のそばに。県内で生まれ育った松本浩美さんが「碑は植民地支配時代を追悼するもので、日本の良心だった。撤去はされても私たちの思いは消えません」。別の女性が「これで終わりじゃない。壊されたら、また碑を建てましょう」と力を込めると、拍手に包まれた。

15:00 高崎市の60代女性は、千羽鶴を碑に手向けていた。「最後まで撤去に反対だということを少しでも訴えたくて」。ニュースで29日に碑が撤去されると知り、いてもたってもいられなかった。「過去のこととしっかり向き合い続けることが大切なのに。碑をこの体でかばってでも守りたい気持ちです」

15:35 講談師の神田香織さんが碑の前でスピーチ。原爆の悲惨さを伝える漫画「はだしのゲン」が広島県の平和ノートから削除された件を引用し、「本当のことを伝える碑を撤去するのは、はだしのゲンと同じ。加害があったこと、被害があったこと、両方伝えるのが一番です」と話した。

15:45 ひとりひとりの追悼式として、碑に花を手向ける人々の列ができた。それぞれの思いをつづったメモを碑にはりつける人も。

15:45 高崎市に住むフリーライターの男性(24)は、「撤去反対」と書かれたA4の紙をリュックに貼り、近くのベンチに座っていた。「亡くなった人を弔うことに行政が関与するなんておかしい。県はもう1度考え直すべきだと思う」

 この日は朝からベンチに座り、時折本を読みながら、碑を訪れる人たちを眺めていた。しかし、午後2時半ごろから、右翼とみられる男性たちと警察官のもみ合いが断続的に発生。「ここは人を弔う静かな場所なのに。怒鳴り声が響いて、怖くなってきた」

16:43 伊勢崎市の男性(76)は、「朝鮮人追悼碑 撤去するな!」というプラカードを持ち、午前11時から碑の近くに立ち続けていた。「隣国との関係や歴史を大切にするための碑だ。決して公益に反するものではない。知事は撤去することが正解だと思っているのか」

17:15 追悼碑の前で記念撮影する人の列ができた。「本当に悲しい。見納めだね」と在日の男性。

17:30 「速やかに退園をしてください」とのアナウンスとともに、閉園に。


撤去を支持している人へのインタビューは一人もしていないんですね。