(産経新聞 2025/03/15)
侵食~「移住」
昨年11月、司法書士法違反容疑で警察当局が捜索した京都市内の中国籍の30代の女の関係先などから、中国人富裕層が、いわゆる「経営管理ビザ」の日本での在留資格に群がる実態を示す資料が押収された。女らは中国人富裕層に日本への移住を斡旋(あっせん)するブローカーとみられる。
《空気がよい、治安がよい、食品が安全》
日本での生活の快適さを記す、中国語のパンフレットといった資料を同胞に示し、日本に呼び込むための経営管理ビザ取得を持ちかけていたとされる。
当然、経営管理ビザは誰でも取得できるものではなく、会社を立ち上げ従業員を雇い、運営する者でなければならない。女らは、日本語の会話もままならない同胞に代わり、無資格で、その法人登記を請け負っていたという。
《資本金500万円以上》《2人以上の従業員》…。法人の設立には、これらの「条件」を整える資力などが必要になるが、条件さえクリアできれば、3カ月~5年の在留許可が与えられることになる。


捜査関係者によると女らが手続きを行った中国籍の人物が経営する法人は9つに上る。産経新聞は、9法人の全ての所在地に取材を敢行した。
株式会社の表札を掲げる一軒家やマンション一室もあったが、インターフォンなどに直接の応答はなく、周辺への聞き込みからも、営業実態を伺い知ることはできなかった。ほとんどの法人が経営管理ビザの在留資格を得る目的だけで立ち上げられたペーパーカンパニーの疑いが強いとみられている。
そこまでして、なぜ中国人富裕層は日本を目指すのか。
《最新の日本の移住申請ガイド》
《日本に移住して最短1年でグリーンカードを取得する方法》
中国国内の交流サイト(SNS)「小紅書(レッド)」や「WeChat(ウィーチャット)」などには、こうしたタイトルで日本移住を推奨する動画であふれている。
「日本は世界一の長寿の国」「老後に快適に過ごすことができる」。その一つをのぞくと、中国人に人気の高い銀座や京都の街並みの映像を背景に女性が日本の生活の利点を力説していた。
そして、移住へと促す「殺し文句」で動画は締めくくられている。
「日本の医療制度では『経営・管理の在留資格』(経営管理ビザ)を取得した場合は、高額な支払いを免れられる」
これが中国人富裕層がこぞって経営管理ビザに群がる「理由」の一つだとみられている。
(産経新聞 2025/03/15)
侵食~「移住」
中国人富裕層が日本への「移住」を目指す背景には、日本の社会保障制度を享受したいとする狙いもあるとみられる。その「移住」の手段の一つに警察当局が悪用を確認したのが、いわゆる「経営管理ビザ」の日本の在留資格だ。条件に合う会社を「設立」し、ビザを取得できて自身や従業員らの保険料を納めさえすれば、手厚い日本の社会保障の「傘」に入ることができる。その保護範囲は、連れてきた家族にも及ぶ。
《国民健康保険を享受でき、医療費は、政府が7割負担》。中国人の顧客に経営管理ビザを取得させていたブローカーの「日本移住」を誘うパンフレットにも、医療費の負担免除などについて詳細な記述が確認された。
9法人のうちの経営者の1人とみられる50代の中国人男性が、取材に応じた。男性が来日したのは昨年9月。日本語は分からずブローカーに登記してもらった会社の10を超える事業にも着手していないとする。「これ(経営管理ビザ)で家族が安心した生活ができ、子供も日本の教育を受けられるんだよ」。本音が漏れた。
全国の医療機関に支払われた令和5年度の医療費は総額で47・3兆円に上り、3年連続で過去最高を更新した。超高齢化社会を迎え、高齢者の医療費が膨らんだ要因が大きいが、その中には、不正とも取れる手段で「移住」した中国人の医療費も少なからず含まれている。
捜査関係者によると、警察が摘発した女らが「手引き」した9法人の関係者5人に医療費請求を確認した。5人の直近1年間の通院は計43回。がんや糖尿病、胆石の治療のほか、眼科や歯科に受診した履歴があった。
しかし、女ら3人は不起訴処分になった。検察は理由を明らかにしていないが、明確な違法性の立証が難しく、9法人の会社登記にも外形上は問題はなかったとみられている。
外国人の国民健康保険加入を巡っては、平成24年に加入要件である日本滞在期間が「1年以上」から「3カ月以上」に引き下げられた。ハードルの低下で、留学や就労などを隠れみのに治療を目的とする外国人の来日や「医療制度タダ乗り」への懸念はくすぶり続けている。
ただ、同様の「立証の難しさ」が理由だとみられるが、厚生労働省は在留外国人による、こうした不正な保険利用の件数は30年以降、「ゼロ」だとしている。
「潤」。北京や上海の富裕層の間では、今、この言葉が流行する。中国語で「ルン」と発音するが、英語で逃げることを意味する「run」と似ていることからきている隠語だ。中国当局の管理・監視を嫌い、海外に移住する動きを指す。
その「潤(ルン)」のターゲットに間違いなく日本が挙がっている。経営管理ビザで日本に滞在する中国人は令和6年6月時点で、2万551人(香港、その他含む)に上る。経営管理ビザが設けられた平成27年から約2・8倍増加した。
国はペーパーカンパニーなど「資格に合う活動をしていないのならば帰国させる」(出入国在留管理庁関係者)とするが、全てを確認できないとも明かす。結果、中国人「移住者」は増え、彼らの社会保障費も膨らみ続けている。(大渡美咲、宮野佳幸、外崎晃彦、海野慎介)

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