(長崎新聞/YAHOO 2025/07/14)
長崎県対馬市豊玉町の観音寺から2012年に盗まれ韓国に渡り、今年5月、同寺に戻った県指定有形文化財「観世音菩薩(ぼさつ)坐像」のレプリカ作製が地元で検討されている。防犯上の理由から仏像が対馬博物館(厳原町)に寄託されたため、檀家(だんか)らが「信仰のよりどころ」として同寺に置くことを要望しているが、費用の問題などがネックとなり、具体化のめどは立っていない。
仏像は観音寺の建物の防犯性、地域の高齢化が進み巡回も難しいといった理由から同寺が寄託。5月中旬から1カ月間、特別展示された。今後も同館で展示するかは調整中だが、同館は地域から車で約1時間と足を運びにくく、檀家らが市にレプリカ作製の支援を要望した。
しかし市は憲法の政教分離の原則からレプリカの寄付は難しいと判断。公的支援の可能性を慎重に模索している。仏像は銅製で高さ約50センチだがレプリカの大きさや材質、精巧さなどは決まっていない段階。県外のある銅器メーカーは銅製の場合の予算について「品質によって上下するが、300万円ほどかかるのではないか」とする。
同寺総代長の村瀬辰馬さん(70)は金額次第で費用負担する意向を示しつつも「(多額ならば)檀家だけでは集めきれない」。クラウドファンディングなどの手法もあるが村瀬さんは「やり方が分からないので…」と苦笑いする。
対馬では12年、海神神社(峰町)でも盗難事件が発生。国指定重要文化財が盗まれたため、国などの補助金で境内の宝物館に防犯強化の改修が施された。ただ文化財保護法での管理や修理の補助対象は国の重要文化財。さらに同法や県、市の条例にレプリカ作製への補助は明記されていない。
一方、県外では博物館の機能強化の推進を目的とした文化庁の補助事業を使い、レプリカを作製する動きが展開されている。和歌山県立博物館(和歌山市)は同県内の仏像の実物を保管する一方、信仰環境を維持するため補助金を使い、地元に安置するレプリカを作製している。
補助事業では博物館単体ではなく他団体などとの連携が必要。和歌山の事例では高校などと連携し、生徒が3Dプリンターを使い、樹脂製のレプリカを作製。生徒が地区住民へ手渡すなど交流を図っている。同館によると1体の作製費用は数十万円ほど。同館は「レプリカ作製が目的ではない。さまざまな人が文化財の課題に向き合うための取り組み」と強調する。
長崎県教委と対馬市教委も和歌山の事例を参考に調べており、市教委の関係者は「選択肢の一つ。同じ事業を使うなら年内に方向性を決めないと」と話す。

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