(朝日新聞 2026/02/19)
 2024年12月に非常戒厳を出し、内乱を首謀したとして死刑を求刑された韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領に対し、一審のソウル中央地裁が19日午後3時から、判決を言い渡す。韓国は死刑制度はあるが執行はしない「事実上の死刑廃止国」。仮に死刑判決が確定しても執行される可能性はきわめて低い。それでも死刑には罪の重さを示す意味があるという。裁判所の判断が注目される。

 尹氏が問われた内乱首謀罪について、韓国刑法は死刑か無期懲役、無期禁錮のいずれかを科すと定める。

 起訴状などによると、尹氏は戦時などの国家非常事態でないにもかかわらず、側近の閣僚らと共謀し、違憲、違法な非常戒厳を宣言。軍と警察を動員して国会を封鎖し、非常戒厳の解除要求決議案の採択を妨害して政治家らを拘束しようと試みたとされる。

 韓国では1997年12月を最後に死刑が執行されていない。軍事独裁政権に立ち向かい自らも死刑判決を受けた金大中(キムデジュン)氏は、98年に大統領に就任すると在任中に執行をしなかった。続く盧武鉉(ノムヒョン)政権も人権を重視する進歩(革新)系で、その姿勢を踏襲。以後、保守系を含む歴代政権が執行を見送り、韓国は国際人権団体から「事実上の死刑廃止国」に分類されている。

 尹氏を起訴した特別検察側は論告求刑で量刑を説明する際、韓国は事実上の死刑廃止国であると述べ、「韓国の刑事司法において死刑は執行して処刑するという意味ではない」と指摘。それでも死刑を求刑するのは、「重大な憲法秩序の破壊」をしたとして尹氏の罪の重さと責任を明確化し、「犯罪対応の意志を具現する」ためだと説明した。

 論告求刑公判の後に実施された世論調査では尹氏への死刑求刑に対し「適切」という意見が約58%で「不適切」の約39%を大きく上回った。韓国の死刑制度に詳しい韓国刑事・法務政策研究院の金大根(キムデグン)研究委員は「国民の反感がそれだけ大きいということ」として、尹氏への判決について「国会の機能を不能にさせようとしたとされる点などを考えると重刑は避けられないだろう」と話した。(清水大輔)