(毎日新聞 2026/03/04)
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する文部科学省の解散命令請求を巡り、東京高裁は4日、解散を命じた東京地裁決定(2025年3月)を支持し、教団側の即時抗告を棄却した。宗教法人法に基づき解散命令は高裁決定で効力を持つため、清算手続きの開始が決まった。22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件からクローズアップされた教団を巡る宗教被害の問題は大きな節目を迎えた。

 教団は最高裁に不服を申し立てることができ、最高裁が判断を覆せば解散に向けた手続きは停止される。ただし、憲法違反が主な要件となるため教団は難しい立証を迫られる。

 今後は東京地裁が清算人を選任し、地裁が監督しながら教団の保有資産の清算手続きが進められる。財産は1000億円規模とされ、債権者と認められた献金被害者らが弁済を受けることになる。残った財産は教団が規則で決めた後継団体や国庫に引き継がれ、その後に宗教法人格を失い、解散となる。

 解散により宗教活動に関する収入が非課税になるなどの税制優遇が受けられなくなる▽信仰の拠点だった宗教施設が清算の対象となる――といった影響は出るものの、信者は信教や布教などの活動は継続できる。

 地裁決定は、信者らが1980年代から全国的に不法行為に該当する献金勧誘をし、類例のない膨大な規模の被害が生じていたと指摘。「献金被害は悪質で著しく公共の福祉を害することは明らか。解散は必要かつやむを得ない」と判断した。法令違反を根拠とした解散命令は3件目で、民法上の不法行為を理由とするのは初めてだった。

 即時抗告した教団側は高裁で、集団調停の成立や、被害に対応する補償委員会の設置を挙げ「問題解決のために努力している」と強調。違法な献金勧誘を防ぐ09年のコンプライアンス宣言後は再発防止を徹底しており、解散の必要はないと主張した。これに対して、国側はコンプラ宣言後も教団信者による違法な献金勧誘が続いているなどと反論していた。【安元久美子】

◇世界平和統一家庭連合(旧統一教会)

 文鮮明氏(2012年に死去)が1954年に韓国で創設した宗教法人。80年代から不安をあおって高額な商品を購入させる「霊感商法」が問題視され、90年代には教団が選んだ信者同士で結婚する「合同結婚式」に有名女優や元オリンピック選手が参加したことで注目を浴びた。15年に「世界基督教統一神霊教会」から現在の名称に変更した。日本の本部は東京都渋谷区の松濤地区にあり、22年3月時点の教団の総資産は約1136億円。全国で約8万人の信者が活動している。


(朝日新聞 2026/03/04)

 高額献金の勧誘などをめぐり、文部科学省が求めた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求について、東京高裁(三木素子裁判長)は4日、教団に解散を命じる決定を出した。

 教団に対しては昨年3月、東京地裁が「献金勧誘などにより甚大な被害が生じ、現在も看過できない程度に残存している」と認め、解散を命じていた。教団は高裁に不服を申し立てたが、高裁も地裁の結論を支持した。

 教団側は最高裁への不服申し立てをする方針だが、今回の高裁の判断によって解散命令の効力は生じるため、宗教法人法に基づいて教団の「清算手続き」が始まることになる。

 高裁の決定を受け、東京地裁は4日午前、清算手続きを担う「清算人」に伊藤尚(ひさし)弁護士(第一東京弁護士会)を選任したと明らかにした。教団の財産を管理し、高額献金などの被害者に対する弁済を進めていく。

 所属事務所のサイトによると、伊藤弁護士は1982年に中央大法学部を卒業し、85年に弁護士登録。企業法務や倒産・事業再生などに関する経験が豊富だという。

 旧統一教会は、韓国に教団本部を置くキリスト教系の宗教団体。韓国で1954年に創設され、日本では64年に宗教法人として認証された。

 80年代に、困りごとを抱える人に対して教団の信者らが「あなたが不幸なのは先祖の因縁のせいで、解消するにはつぼや印鑑を買う必要がある」などと不安をあおり、高額の献金をさせるといった「霊感商法」が社会問題になった。

 2022年7月、奈良市内で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相が銃撃されて殺害される事件が発生。銃撃した山上徹也被告(45)=無期懲役の判決、控訴中=は母親が旧統一教会の信者で、「高額献金により家庭が崩壊し、教団を恨んでいた」などとする犯行動機が報じられた。改めて教団による献金被害に注目が集まった。

 宗教法人を所管する文科省と文化庁は、教団に損害賠償を命じた民事裁判の判決や、170人を超す被害者へのヒアリングなどをもとに、実態の把握に動いた。高額献金などについて80年代以降に1500人以上、約204億円に上る被害があったことを確認した。

 宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」場合、裁判所が宗教法人に解散を命じられると定める。文科省はこの要件にあてはまると判断し、23年に解散命令を請求した。

 高裁の審理では、教団が組織体質の変革を図った09年の「コンプライアンス宣言」以降も被害が続いていたと言えるかが、主な争点になった。

 教団側は、裁判に至らなかった示談については裁判所が厳密な事実認定をしたわけではないのに、その件数も地裁決定が「被害」と認めた点を批判。現在は「補償委員会」の設置などで被害者への返金にも対応しているとして、解散命令の必要性はないと訴えていた。

 今回の高裁の決定に対し、教団は「安倍元首相銃撃事件の犯人・テロリストの『家庭連合を恨み、打撃を与える』という願望を国家ぐるみで叶(かな)えるものと言えます。今回の決定は、事実と証拠に裏付けられずに、証拠裁判主義に反して下された『結論ありき』の不当な判断です。我々は、この不当な司法判断を決して容認せず、(最高裁への)特別抗告を含め、信教の自由を守り抜くため闘い続けます」などとするコメントを発表した。

 決定文を受け取った後、教団側の福本修也弁護士は報道陣の取材に応じ「信じられない。法治国家でこんなことがあっていいのか」と怒りをあらわにした。今後、最高裁への不服申し立ての手続きを進めるという。

 一方、決定を受けて始まる清算手続きについては「協力する」と述べた。(黒田早織)