社説余滴 今、あえて「日中友好」
(朝日新聞 2012/07/05)



鵜飼 哲(うかいさとし) 国際社説担当

「日中友好」。古くさいかけ声だと思っていた。

だが、ぎすぎすした日中関係を見るにつけ、今はあえて「日中友好」と声を上げた方がいい、と思えてきた。

〈中国に良くない印象を持っている 84.3%〉

日本の「言論NPO」などによる日中世論調査で、こんな日本側の結果が出た。昨年は78.3%だった。

気になるのは、大きな反日デモや尖閣沖衝突事件のような深刻な軋轢(あつれき)があるわけでもないのに、悪化したことだ。

良くない印象の理由(複数回答可)は、「資源やエネルギーの確保で自己中心的」が54.4%、「尖閣諸島をめぐる対立」が48.4%だった。

大国意識を強めた中国が、東シナ海や南シナ海の領有権問題で強い態度を取る場面が増えた。不気味だし、不安だ。中国は自らの振る舞いを見つめなおすべきだ。

半面、なんでも、「中国はけしからん」という風潮も感じる。これは気がかりだ。

中国出身の日本僑報社編集長、段躍中さん(54)は、日中関係の本の出版や、草の根交流に力を入れてきた。

その段さんが、「すごく残念」と語る出来事がある。

中国大使館の書記官の「スパイ疑惑」報道だ。書記官は外国人登録証を不正に更新したとして書類送検された。軍とのつながりが指摘され、おかしな金の動きもあった。

だが、違法な情報収集は確認できず、果たして「スパイ」とまで言えるのか疑問も残った。それでも一部で大々的に報じられ、日本の政治家は中国の訪問団との面会に及び腰になったという。

東京都の尖閣諸島購入計画には、13億円超の寄付が集まった。中国から島を守ろうと共感した人が多いのだろうが、購入はかえって衝突を招き、国益を損ねかねない。静かに実効支配を強める方が、領土を守ることにつながる。

こう書くと、「朝日新聞は『親中』だ」と批判されそうだが、私たちは中国のおかしなところも遠慮無く報じている。「最近の朝日新聞は、産経新聞より中国に厳しい」と中国人の取材先から言われることもしばしばだ。

40年前の9月、日中は国交を正常化した。そのときの共同声明に、大略こうある。

「善隣友好関係の発展は、両国国民の利益に合致し、アジアの緊張緩和と世界の平和に貢献する」
隣人同士、じっくりつきあおう。先人たちのそんな思いが伝わる。


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