(日本経済新聞 20109/07/09)

【香港=木原雄士】香港政府トップの林鄭月娥行政長官は9日に記者会見し、中国本土への容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」の改正手続きについて「社会の不安や怒りを引き起こし、完全に失敗した。改正案は死んだ」と述べた。条例改正を進めない考えをより明確に示したものの、民主派団体などが要求する「完全撤回」という言葉は使わなかった。

大規模デモから1カ月となる9日の記者会見では「改正作業を再開する予定はない」と強調した。政府と異なる意見を持つ市民や学生との対話も進めるとした。

一方で「デモ参加者のすべての要求には応えられない」とも語り、若者らが求めるデモを暴動とした政府見解の見直しや逮捕者の釈放は事実上、拒否した。自らの辞任も否定した。

若者らの要求は条例改正以外の選挙制度改革などにも広がっており、抗議活動が早期に収束するかは不透明だ。

条例改正をめぐっては6月9日以来、大規模な反対デモがたびたび起き、一部は立法会(議会)の建物を破壊するなど抗議活動が過激になっている。林鄭氏はデモを受けて一連の経緯を謝罪し、2020年7月に条例案が廃案になる事実を受け入れると表明した。ただ自ら取り下げる撤回は明言せず、市民の反発が続いていた。


(日本経済新聞 20109/07/09 04:00)

香港で拘束した容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案に反対する100万人規模のデモが起きて1カ月たった。一部の若者は立法会(議会)の建物に突入するなど抗議活動が過激になっている。背景には一国二制度のもとで保障された香港の自由が奪われ、中国にのみ込まれる不安がある。香港デモの経緯と背景をまとめた。

■「逃亡犯条例」改正案、なぜ市民が反発?

「逃亡犯条例」改正案は、香港から中国本土に容疑者を引き渡せるようにする内容だ。中国の司法制度は香港とは異質で、裁判所も中国共産党の指導を受ける。香港市民は共産党に批判的な民主活動家や、中国に目を付けられた企業経営者などが容疑をでっち上げられて、中国に送られるのではないかと懸念している。

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香港政府は大規模デモを受けて改正案が2020年7月に廃案になる事実を受け入れると表明した。ただ撤回とは言明せず、いつでも審議を再開できる。デモ参加者は政府自ら取り下げる「完全撤回」を求めている。

■中国化への不安、政治も経済も

一部の抗議活動が過激になっているのは、林鄭月娥行政長官への不信が高まっているためだ。林鄭氏は当初、大規模デモを受けても方針を変えず、多くの人は「香港市民よりも北京(中央政府)の顔色をうかがっている」と感じている。若者らは行政長官を親中派からしか選べない仕組みに問題があると主張し始めた。

底流には経済力を増す中国に取り込まれるとの不安もある。返還22年で中国からの移民や観光客が急増し、香港経済は中国頼みになった。一方、中国マネーで不動産価格が高騰し、住宅を買うのも難しくなっている。若者は自由が奪われ、生活がよくならないと感じている。

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■大規模デモ、過激化で岐路に

条例改正のデモは6月16日に200万人(主催者発表)に達した。1989年の天安門事件の際に起きた150万人規模のデモや、2003年の50万人規模の国家安全条例反対デモを上回り、過去最大になった。

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▲「逃亡犯条例」改正案に反対し、香港中心部をデモ行進する人たち(6月16日、香港)

一部の若者らは政府施設を占拠したり、立法会の建物を壊して議場を占拠したりして抗議活動をエスカレートさせている。香港政府は平和的なデモを認める一方で、過激派の刑事責任を追及し始めた。中国政府も「香港の法治を踏みにじる重大な違法行為だ」と批判し、過激化する若者と一般市民の引き離しを模索している。

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▲立法会の議場はデモ隊により一時占拠された(7月1日、香港)

ただ、政府はデモ参加者の要求にはほとんど応えておらず、民主派が求める対話も拒んでいる。デモが早期に収束するか不透明な面もある。(香港=木原雄士)


>香港政府は大規模デモを受けて改正案が2020年7月に廃案になる事実を受け入れると表明した。ただ撤回とは言明せず、いつでも審議を再開できる。

あと一年あるんですね。


2019年06月26日