(毎日新聞 2020/01/04)
中国で図書館に対する統制が強化されている。2019年12月に中国紙「新京報」が、内陸部・甘粛省の図書館で、当局が不適切と判断した宗教関連書など65冊を焼却する「焚書(焚書)」が行われたと報道。
インターネット上で批判が高まると地元当局は「個別の職員が規定に従わずに処理した」と釈明した。ただ、背景には教育省が20年3月末までに全国の小中学校、高校の図書館から共産党の方針に反する書籍を一掃するよう指示しており、地方当局による書籍の選別、処分は今後も続きそうだ。【北京・河津啓介】
新京報によると、甘粛省鎮原県(町村に相当)政府の公式ホームページが19年10月23日、同県図書館が「社会主義主流イデオロギー」を発揚するため、担当幹部の立ち会いの下、違法な書籍や宗教関連書など「偏った内容」の本65冊を焼却したとして、女性職員2人が図書館正門前で書籍を焼却している写真を掲載した。

▲中国甘粛省の図書館で、書籍を焼却処分して「焚書」と批判された写真=中国版ツイッター「微博」から
その後、インターネット上で、秦の始皇帝が2000年以上前に行った「焚書」に例える声が上がり、新京報(電子版)が19年12月8日の論評で「出版物をどう取り扱うかは、社会の知識や文明に対する姿勢を試すものであり、野蛮化してはならない」と疑問を呈し、批判が一気に広がった。翌9日、地元当局は「不当行為」として当事者の責任を追及すると釈明し、ネット上での投稿が制限されるようになった。
一方、「焚書」が起きる約1週間前の19年10月15日、教育省が全国の教育当局に対し、小中高の図書館にある不適切な書籍を一掃する特別活動を指示する通知を出したばかりだった。
一掃対象となる違法・不適切な書籍は▽共産党の路線や方針に反し、党や指導者をおとしめる▽社会主義の核心的価値観にそぐわない▽宗教の教義や理念を宣伝する―などと細かく列挙されている。違法な書籍は廃棄処分、不適切な書籍は別の場所に保管され、児童や生徒の目に触れないようにする。鎮原県の職員は、こうした政府の方針に基づき「焚書」を実施したとみられる。
中国では、学問や出版界で現体制の政策や方針にそぐわない思想や歴史観を排除する動きがあるほか、宗教への締め付けも目に付く。習近平指導部は「宗教の中国化」を掲げ、公立、私立を問わず教育機関での宗教活動を法律で禁じ、未成年の宗教施設への立ち入りを禁止する措置が各地に広がる。新疆ウイグル自治区やチベット自治区など少数民族の独自文化と宗教が密接に関わる地域でも、青少年への宗教の影響を抑える政策を徹底している。


(NEWSポストセブン 2019/12/25) 中国西部・甘粛省慶陽市の公立図書館で「思想的に偏向しており、中国共産党の指導に反する内容」とされた書籍65冊が図書館の前で燃やされている写真が慶陽市政府のホームぺージ上に掲載された。この件について香港や台湾などのメディアは中国の思想教育の強化であり、「これぞ現代の焚書」などと強く批判している。 この写真は図書館前で職員とおぼしき女性2人が書籍を燃やしているものだが、あまりの強い反応に、のちに削除されたという。 香港紙の中立系紙「明報」によると、この図書館では10月下旬、地元政府の指導にもとづき、外部から寄贈された書籍に違法な内容や宗教関連の「偏った内容」が含まれていないかどうかを調査。そこで、この65冊がひっかかったという。 香港紙「りんご日報」は、この調査命令のもともとの出どころは中国国家教育省(日本の文部科学省に相当)基礎教育局で、今年10月初旬、「中国の全国各地の小中学校の図書館の書籍に党の指導に反している書籍がないかどうか、厳重に調べる必要がある。そのような書籍は破棄処分にすべきだ」などとの通達が地方政府に伝達されたという。 この通達の大きな狙いは「中国共産党の一党独裁を維持するため」だ。シンガポールの華字紙「聯合早報」によると、習近平国家主席が2019年1月、中国共産党規律審査委員会の重要会議で重要講話を発表。習氏はこの中で、新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導理念とし、「四つの意識」(政治意識、大局意識、核心意識、一致意識)を強め、「四つの自信」(中国の特色ある社会主義の道への自信、理論への自信、制度への自信、文化への自信)を固め、「二つの擁護」(習近平総書記の党中央と全党の核心としての地位、党中央の権威と集中統一指導の断固擁護)を強調したという。 同紙は「これが拡大解釈されて、現代の焚書につながった」と指摘している。 しかし、あまりの反響に、中国紙「新京報」は「一部メディアは『現代の焚書』などと間違った解釈をしているが、このような行為は中国の文明と法律に基づいており、処分された書籍は中国政府が定めた『宗教管理条例』などの法規に明らかに違反している」と弁明する記事を掲載している。 これに対して、香港の識者は「秦の始皇帝が大量の書物を焼き捨て、思想弾圧を行ったことは周知の事実。これを肯定している中国共産党政権の法律は思想弾圧を容認するもので、習近平の本質は始皇帝と変わらない」と習氏の重要講話を痛烈に批判している。
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