(朝日新聞 2020/04/30)
新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクをめぐる日本の状況は一変した。大手小売店で続く品薄、国内メーカーの増産、中国の大量生産と原料不足……。販売の現場で、いま何が起きているのか。最前線に立つ、輸入卸業を営む40代の中国人男性は「この1カ月で500万枚を売りさばいた」と語り、業界の事情を明かした。

▲マスクはタピオカ店でも見かけた。あまり目立たないせいか、店の前で立ち止まる人は少なかった=2020年4月27日午後、東京都新宿区、江口英佑撮影
◇「誰も不当にもうけていない」
――ドラッグストアやコンビニ、スーパーではマスクは品薄が続いています。その一方でタピオカドリンクの店など、まったく関係のないところで取り扱っているのはなぜですか?
「簡単に言うと、在日中国人の間で(マスク販売が)はやっているんです。もともと他の商売をやっていた人もいるし、私のように以前から中国との間で輸入卸業をやっていた人もいます。例えば飲食業をやっていた人は、本業を休業しています。仕事はないが、時間はある状態です。3月末から4月初めごろに、『あいつはマスクの輸入を商売にして、うまくいっているらしい』といううわさが在日中国人の間で一気に広がりました。それでみんな始めたんです」
――どうやって仕入れているんですか?
「人それぞれですが、私の場合、仕入れは中国にいる知り合いに頼んだり、最近は現地の工場と直接やりとりしたりしています。中国のSNS『微信(ウィーチャット)』でのやりとりが多いです」
「既に報道されているとおり、中国ではいろんな企業がマスク生産に参入しました。沿岸部の企業が多いですが、内陸部にも広がっています。小規模の会社も合わせれば、全部で2万社という話もあります。生産量が急増したので、それだけ原料の不織布は奪い合いになっています。不織布の仕入れにお金が必要なこともあり、マスク取引は原則として前払いです」
――仕入れ値はどれぐらいですか?
「不織布の値段は急騰しています。マスクの売り先はあるのに、不織布を仕入れられず稼働を止めている工場もあるくらいです。1枚あたりだと、仕入れ値がだいたい25~35円。それを輸入して、卸値が40~50円。なので小売価格が60~80円になるのも仕方ないんです。誰かが不当にもうけているわけではありません。工場によっては2千~3千枚の発注から対応してくれるところもありますが、だいたい万単位、10万単位で仕入れます」
「今の問題は、輸送用の航空便の手配が難しいこと。順番待ちです。中国側の輸出時の品質チェックも厳しくなっています。発注から日本に到着するまで7日から10日かかります」
■さすがプロだと恐れ入った
――売り先はどうやって開拓を?
「もともと取引がある会社や病院、地方自治体に卸す場合が多いです。私はこの1カ月で500万枚ほど卸しました。既存の取引先を持たない人が飛び込みで繁華街の店に営業をかけることもあります。なので、タピオカ屋にマスクが並んでいるんです。こちらも在庫を抱えないよう真剣ですし、客の減った繁華街の店にとっても、貴重な収入源です」
「先日、ある病院に4種類のマスクを持ち込みました。品質や値段はバラバラです。見た目がいちばん良いのは品質がいま一つな安いものだったんですが、対応してくれた医師と臨床検査技師の方は、見事に品質の高いものを見分け、購入しました。さすがプロだなと恐れ入りました」
――スーパーやドラッグストアに並ばないのはなぜでしょう?
「いろんな理由があると思います。一つは品質、もう一つは値段です。初めて取引する相手だと、本当にちゃんとした品質か不安ですよね。なので、ブランド力のある大手の小売店はなかなか手を出しにくい。私も、輸入してみたらボロボロで売り物にならないものだった、という経験が複数回あります。『1箱50枚入りのはずなのに、数えたら48枚だった』という話も聞きました。クレームを入れても交渉に時間がかかるので、とりあえず気持ちを入れ替えて次の取引へいく、というのが現状です」
「もう一つの理由は、値段が高いことでしょう。日本の、特に大手の小売店は、消費者からの『この非常時に、こんな値段でマスクを売るなんて!』という批判をおそれている面があると思います。最近は少しずつ大手の小売店でも見かけるようにもなってきましたが、まだおそるおそるだと思います。だからこそ、繁華街の異業種の店が販売に乗り出しました」
■シャープの値段が基準になった
――とはいえ最近、値段は徐々に下がってきています。数週間前は50枚入りで4千円だったものが、いまや3500円とか。少し繁華街から離れると3千円ほどになっているのも見かけます。
「最近は、シャープのマスクの値段が基準になっています。50枚入りで、送料込みで4千円弱です。みんなこれを見ながら、シャープより少し安い価格で売ろうとしています。そうすれば消費者に受け入れられやすいので。もちろん、輸入業を始める人が増えて、業者間で競争が起きているのも値下がりの要因です」
――この先、さらに値段は下がりますか?
「ある程度は下がると思います。東京や大阪など大都市の繁華街でのマスク販売はそろそろ終わりが近づいています。売れ残ったマスクは、5月になれば地方都市にも広がっていくでしょう。でも、以前のように1枚10円ほどに下がることはないと思います。欧米やアジアの国もマスクを欲しがっていて、中国の業者も日本だけを相手に生産しているわけではありません。生産側が強いんです。ただ、日本では国内業者のマスクの増産が始まっていて、これから本格化します。そうなると、さらに値段は下がり、むしろ質の勝負になると思っています。日本製のマスクに匹敵する品質を確保しながら、日本製より少し安い、そんな中国製マスクが求められることになると思います」(聞き手・真海喬生、江口英佑)

また粗製検査キットや粗製マスクでボロもうけ、支援を餌に経済侵略を狙う。
まさに中国vs文明世界の冷戦構造が生まれつつあるな。
specificasia
が
しました