(朝日新聞 2020/05/07)

 新型コロナウイルスの感染拡大とともに姿を消したマスクが、にわかに街角に並び始めた。各地の商店街で衣料品店や飲食店の軒先を陣取り、自動販売機や道路脇でも売られるまでに。中国などからの輸入品が多いとみられ、飽和状態にすらなりつつある。

マスクだらけの商店街

 雑貨店などが所狭しと軒をつらねる兵庫県尼崎市の三和本通商店街。4月末、20店ほどの店頭に箱や袋に入ったマスクが並んでいた。2枚で税込み500円の洗えるマスクもあれば、30枚3千円の使い捨て用もあった。一部の店主によると、同月中旬からマスクを扱う店が急増したという。

AS20200503001626_comm
▲商店街の空きスペースを間借りしてマスクの販売が行われていた=2020年4月30日午後4時19分、兵庫県尼崎市、柴田悠貴撮影

AS20200503001631_comm
▲婦人服に紛れて販売されているマスク=2020年4月30日午後5時4分、兵庫県尼崎市、柴田悠貴撮影

 その一角で洗えるマスクを売る小売業の男性(38)がいた。約1カ月前、取引したことのある中国メーカーから、衣料品などを扱う男性の会社にマスクを売らないか提案があったという。激減した売り上げを補おうと5万枚ほど仕入れ、これまでに店頭や知り合いを通じて9割をさばいた。布を切り抜いたもので、ウイルスの侵入を防ぐ効果はほとんどない。2枚1組500円の価格だが、「輸送費などのコストを考えれば妥当な価格」と説明した。

 男性は天ぷら店も営むが、3月の売り上げは開店当初の1月の半分ほどに。家賃などを払った後の手元のお金は3千円。金融支援も受けられず、マスク販売は「当座をしのぐためには必要な商売」になったという。

AS20200503001634_comm
▲芋天などとともにマスクを販売する店=2020年4月30日午後3時45分、兵庫県尼崎市、柴田悠貴撮影

 厚生労働省などによると、世界的な需要の高まりを背景に、マスクの輸入価格は高騰している。50枚入りの使い捨てマスクの仕入れ価格は従来は1枚5~7円ほどだったのが、4月には約7倍に高まった。原材料の価格も高騰しており、店頭に割高な品が並ぶ要因になっている。

 一方、商店街を進むと、使い捨てマスクの箱が積み上げられている手芸用品店があった。周辺にマスクを扱う店が増え、在庫が余っているという。店員によると、子会社が中国にある工場でマスクを製造して5万箱を仕入れた。4月21日の販売初日には350万円を売り上げたが、ここ数日はその7分の1前後に。そこで価格を1箱3800円から3千円に引き下げた。店員は「あちこちで売られ、あっという間に客が減った」と嘆いた。

AS20200503001627_comm
▲尼崎市の商店街には、大量のマスクを取り扱う店もあった=2020年4月30日午後2時47分、兵庫県尼崎市、柴田悠貴撮影

 マスクを景品に客を呼び込む店もあった。居酒屋「ビストロジャパン」は、中国製使い捨てマスク1枚を弁当とセットにして販売。3月の売上高はふだんの3割程度に減った。そこで弁当販売を始めたが売れ行きは伸び悩み、マスクを付けてから改善したという。店長の若田智大さん(38)は「利益にはならないけど、プレミアのような価値はある」と話す。

AS20200503001635_comm
▲弁当一つにつきマスク1枚を付けるサービスを行う飲食店=2020年4月30日午後1時40分、兵庫県尼崎市、柴田悠貴撮影

■韓流の街・新大久保でも

 場所は変わってアジア系の飲食店や雑貨店がひしめく東京・JR新大久保駅前。

 大手ドラッグストアに入ったが、見当たらない
。男性店員に聞いてみた。「マスクはないです」。入荷は3日ごとや1週間ごとなど不安定という。「入荷しても5枚入り。(50枚入りの)箱が入ることはほとんどありません」

 その数十メートル先、香辛料店には人だかりができていた。店頭には1箱50枚入りのマスクが3種類、山積みにされていた。価格は3500円前後。

 男性従業員によると、2月以降、中国やバングラデシュから仕入れているという。取引先の会社は明かさなかった。5箱を抱えていた千葉県の60代男性は、「地元じゃ買えないから、ネットで調べて買いに来た。なくなりそうなのでありがたい」と話した。

 近くの大通り沿いに出ると、さらに色々な業種の店が扱っていた。化粧品店やタピオカ店に加え、韓国料理店にもあった。男性従業員は「食事もできて、マスクも買えたら良いじゃないですか」。

 路地に入った韓国コスメや雑貨を扱う店は「期間限定」として、価格は周辺より安い1箱3千円。でも人だかりは見られなかった。競合が激しく、ここでも売れなくなったという。(加茂謙吾、江口英佑)

■こんなとこでもマスク販売

 路上で、自販機で 大阪府内では、車が行き交う府道脇でマスクを販売する姿もみられた。

 40代の男性経営者が4月30日午後、勤め先から車で出かけたところ、「残り 20箱」と書かれた紙を手にした男性を歩道で見かけた。

 「マスクをこんなところで売っているのか?」 男性の近くにはテーブルが置かれ、その上にマスクの箱が積まれていた。1箱3千円以上で売られていたという。その様子をスマートフォンで撮影した後に見ると、道路に車を止めてマスクを買う人もいた。

 周辺には物流会社の倉庫や工場が多く、トラックが多く通る。経営者は「路上駐車の影響で事故が起きかねない。普段よく使う道なので、こんなところで販売されるのはたまらない」と話した。

 大阪・ミナミの繁華街にある自動販売機にはマスクと栄養ドリンクのセット販売が登場し、近隣住民らの間で「商魂たくましい」「夜中でも買えるのはいい」などと話題になっているという。

 大阪・兵庫を中心に約330台の自販機を扱う兵庫県内の飲料販売会社が設置した。同社によると、中国製のマスク数千枚を仕入れて大阪市内のほか、兵庫県伊丹市、西宮市などにある約10台の自販機で売り始めたという。マスクの枚数と販売価格は変動するが、30日現在でマスク5枚と栄養ドリンクで480円。マスクだけだと商品回収口に落下しないため、飲料とセット販売にしたという。

 こうしたセット販売は必要なものと不必要なものの購入の強制になりかねず、独占禁止法に触れる可能性もある。飲料販売会社の男性社長(63)によると、公正取引委員会の相談窓口に問い合わせたうえで扱い始めたという。

 コロナ禍で人びとの外出が減り、駅近くや会社の屋内などの自販機を中心に売り上げは7~8割ほど落ち込んでいるという。社長は「マスクは仕入れ値も安くないし売り上げ的には少ししか足しにならないが、薬局などが営業していない時間帯の需要はあると考えた」と話した。今のところ1日20~30セット売れる自販機もあるという。(瀬戸口和秀、伊藤喜之)


ネットでは5/1に2,450円だったショップが1,800円↓(ショップ画面では「税・送料込」)に値下げするなど、2,000円以下のところもいくつか出てきているので、街中でもさらに値下げが行われるでしょうね。